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地域性を活かした泡盛業界の譲渡事例3選
2022.02.14 | 事業承継

地域性を活かした泡盛業界の譲渡事例3選

沖縄県で地域コンサルタントとして活動するカナイ経営経営研究所代表の比嘉智明氏のコンサルタントとしての日常を切り取る連載第3回。今回は、特徴的な沖縄県内の企業事例を紹介します。

沖縄県で地域コンサルタントとして活動するカナイ経営経営研究所代表の比嘉智明氏のコンサルタントとしての日常を切り取る連載第3回。今回は、特徴的な沖縄県内の企業事例を紹介します。

沖縄県内に46カ所ほどの酒造メーカーがある泡盛業界の再編が近年起こりつつあります。泡盛業界の市場がこの十数年は苦境に立たされています。その根拠となるデータを2015年に沖縄県庁が調査し発表しました。2015年の時点における2025年までの泡盛の売上げや出荷量などの推計結果です。結果は、アルコール飲料離れもあり2015年で154億円ほどあったアルコール飲料の売上高が、10年後には半減するというショッキングな調査結果となっています。

泡盛業界は、半数近くの酒造所が営業利益で赤字になるという調査結果もあります。まだ先のことと時間があるとみるか、待ったなしで起こる未来と考えるのか、私は事業引き継ぎを推進する立場でもありますので先手を打って欲しいという想いも込めて下記に事例をあげたいと思います。

3つの株式譲渡事例

一つが、泡盛メーカーが観光業を主体とする県内事業者へ株式譲渡した事案になります。譲受をした企業は沖縄屈指の観光スポットを運営しており、そこの売店にある商品が売り手企業の商品をOEMで自社ブランドとして販売しておりました。観光産業が連動することで生産・出荷量を推計できることで垂直統合という譲渡モデルのキレイな形で実現することが出来ました。これは、沖縄県の観光産業における集客力と上手く嚙み合った事例でもあり、地域性のある成功した譲渡案件だったといえます。

もう一つが、泡盛メーカーと観光業の株式譲渡になります。前の事例との違いは酒造所の工場自体を移転した譲渡事案になります。こちらの買い手企業となった観光事業者は、琉球時代をテーマにした施設を運営しており、売り手となった泡盛メーカーも琉球王朝のころから泡盛づくりを行っている老舗企業になります。何故、酒造工場まで移転する必要があったのかは、ビジネスの側面が強く反映されています。歴史をテーマにした施設へ老舗泡盛メーカーを組み合わせることで、コト体験の中に酒造見学を組み込むことで大きなシナジーになるという狙いがあったからです。古い歴史ある酒造所に価値もありましたが、酒造所を移転することで新たに泡盛を知ってもらう機会が生まれ文化と伝統が継承される形となった意義のある譲渡案件だと思います。

3つ目の事案が、酒類卸売業者間による譲渡案件になります。県内大手の酒類卸会社が譲受をした一般的な同業買収となります。売り手企業は、比較的小さな地域密着型で事業を運営しており、地域の商店を中心に卸小売りをおこなっていました。営業スタイルも御用聞きをしながら地域に親しまれた事業者です。居酒屋から酒1本の注文が入ればお届けをしていました。譲受の理由は、後継者問題でもありました。同業者の話から、売り手企業は創業来から変わらぬスタイルで地域から愛される存在でもあり、県内大手の酒類卸売り事業者もそのきめ細かいサービスや規模は小さいながらに優れた販路があったこと、企業文化・風土といったものを引き継ぐ地域にとって意味のある譲渡事例でもありました。

泡盛業界は苦境に立たされており、1社・個店単位でみていくと様々な課題もありますが、事業承継やM&Aを進めることで魅力的なシナジーや効果を得られることもできます。

ツグナラに掲載している企業は、自社の生い立ちから自社の強み、従業員の教育や育成に至るまで書かれており、売り手先も安心して任せられ、細かなヒアリングをせずともマッチング速度を上げられる情報が記載されており、結果的に成約後の高い満足度に繋がるのではないかと思います。その様な意味でも、業界再編や苦しい業界においてもツグナラは事業存続を支援するプラットフォームとしての価値を提供できると考えています。

●連載:沖縄県と事業承継
第1回  泡盛業界における伝統文化の存在意義と承継すべき理由
第2回 沖縄県の事業承継に関する意識と廃業件数が多い理由
第3回 本記事

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