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M&A検討中なら知っておくべき「デューデリジェンス」とは?
2023.06.02 | M&A

M&A検討中なら知っておくべき「デューデリジェンス」とは?

M&Aの契約を円滑かつ円満に進めていく上で、きわめて重要なプロセスが「デューデリジェンス」です。本記事ではこれからM&Aを検討する場合、譲り手(売り手)も、引継ぎ手(買い手)も事前に理解しておくべき「デューデリジェンス」について基本から解説していきます。

M&Aの契約を円滑かつ円満に進めていく上で、きわめて重要なプロセスが「デューデリジェンス」です。本記事ではこれからM&Aを検討する場合、譲り手(売り手)も、引継ぎ手(買い手)も事前に理解しておくべき「デューデリジェンス」について基本から解説していきます。

「デューデリジェンス」という言葉を皆さんはご存知でしょうか。「デューデリ」や「DD」と略されることもあります。この「デューデリジェンス」は、M&Aの契約を円滑かつ円満に進めていく上で、きわめて重要なプロセスです。一方で、言葉自体は知っているものの、詳細までは分からないという方も多いのではないでしょうか。今回はこの「デューデリジェンス」について解説します。

「デューデリジェンス」とは?

「デューデリジェンス(Due Diligence)」とは、M&Aにおいて引継ぎ手(買い手)企業が、譲り手(売り手)企業の抱える問題点や、適正価値などを調査・分析・検討するプロセスのことをいいます。

デューデリジェンスを実施することで、譲り手企業が抱えるトラブルやリスクを事前に把握し、契約締結の可否の判断やM&A後の戦略立案、あるいは金額交渉の材料とすることができます。

ひと口に「デューデリジェンス」と言っても、目的や実施する内容によってさまざまな形態があり、依頼する専門家も異なります。

●主なデューデリジェンス(DD)の内容と依頼先

種類主な依頼先内容
法務デューデリジェンス弁護士取引関係や契約関係、株主総会の議事録などの重要書類を見て法務上のリスク検証する
財務デューデリジェンス公認会計士貸借対照表や損益計算書を見て財務上のリスクを検証する
税務デューデリジェンス税理士税務申告書や税務調査に関連した資料を見て追徴課税の可能性の有無、繰越欠損金の発生状況のリスクを検証する
ビジネスデューデリジェンス経営コンサルティング会社仕入れなどの取引関係などを見て事業継続性や将来性に関するリスクを検証する
ITデューデリジェンスITコンサルタントIT周りのシステムや運用状況を見て、システム統合後の運用リスクや情報漏えい等のリスクを検証する
環境デューデリジェンス専門のコンサルティング会社事業所周辺の土壌汚染や大気汚染、水質汚染などのリスクを検証する

デューデリジェンスの費用はスモールM&Aの場合は、50万円から100万円、期間は1〜2か月というのが一般的です(価格、期間ともに内容・依頼先により変動する)。

中小企業のM&Aの場合は、予算も時間も限られているため、目的に応じて実施するデューデリジェンスを絞り込む必要があります。中でも優先的に検討したいのが「財務」「税務」「法務」「人事・労務」「ビジネス」の5つのデューデリジェンスです。

押さえておきたい5つのデューデリジェンス

数あるデューデリジェンスの中でも「財務」「税務」「法務」「人事・労務」「ビジネス」の5つはなぜ重要なのでしょうか。この5つの領域に中小企業の抱える主要なリスクや強みが含まれているからです。

1.財務デューデリジェンス

「財務デューデリジェンス」は、決算書だけでは把握できない財務状況を知り、実態純資産や簿外債務の有無などを把握するために、公認会計士などの専門家に依頼して行います。中小企業の決算書では実際の財務状況と大きく乖離していることもあるため、中小企業同士のM&Aでは必ず実施することをおすすめします。

2.税務デューデリジェンス

「税務デューデリジェンス」は、主に税務申告書や税務調査に関連した資料を元に追徴課税の可能性の有無、繰越欠損金の発生状況を把握するために、税理士などの専門家に依頼して行います。中小企業の場合は顧問税理士がおらず自社で税務申告書を作成しているケースもあり、申告書の記載の誤りなども含めて確認が必要です。財務デューデリジェンスとセットで実施されることもあります。

3.法務デューデリジェンス

「法務デューデリジェンス」では、弁護士などの専門家に依頼して、取引関係や契約関係などで法律的なリスクがないかを把握するために行います。中でも「許認可と訴訟」の有無はとりわけ重要なチェックポイントです。先方企業の許認可を継承できなければ、事業継続が立ち行かないですし、訴訟を抱えている場合は、賠償金などが発生する可能性も出てきます。労働環境や賃金などの問題や、知的財産権の侵害の有無なども、この法務デューデリジェンスでクリアにすることもできます。

4.人事・労務デューデリジェンス

「人事・労務デューデリジェンス」は、社会保険労務士に依頼して、人事面における退職金制度や福利厚生制度の有無、労務面における残業手当の未払い、社会保険の未加入等のリスクを事前に把握するために行います。とりわけ労務面における残業手当の未払いは、中小企業の場合、経営に影響を及ぼすような大きなリスクにつながる可能性があります。

5.ビジネスデューデリジェンス

「ビジネスデューデリジェンス」は、譲り手企業の事業内容を精査して、正常収益力や事業継続性などを検証し、M&A後にシナジーを生み出したり、事業成長が可能かどうかを判断するために行われます。引継ぎ手企業が自ら行ったり、コンサルティング会社などに依頼して行われることが一般的です。

ここで挙げた4つ以外にも先方企業の業種によっては、行うべきデューデリジェンスもあります。例えば製造業であれば、所有する工場が公害問題などを抱えていないかを把握するために「環境デューデリジェンス」などを検討する必要が出てきます。また、業務がITシステムに依存している企業であれば、M&A後に自社のITシステムとうまく統合できるかを把握するための「ITデューデリジェンス」を実施する方が万全です。

より良いM&Aにしたいならデューデリジェンスは必須

デューデリジェンスを行うタイミングについては、一般的には、譲り手・引継ぎ手企業の間で、基本合意書を取り交わした後に行います。そして事前に取り交わした基本合意書には、譲り手企業がデューデリジェンスに協力する旨を盛り込んでおきます。もし協力を拒否する場合は、M&Aの相手先として検討し直すべきです。

●M&Aのプロセスにおけるデューデリジェンスのタイミング

デューデリジェンスの実施は、譲り手企業の話を信じていないようにも見えますが、信頼関係をより深めるためには不可欠のプロセスだと言えます。時にはデューデリジェンスの結果、譲り手企業の新たな強みが見つかり、M&A締結に向けて話が一気に進展したり、引継ぎ手企業から好条件が提示されることもあります。譲り手企業の経営者であれば、気持ちよくデューデリジェンスに協力したいところです。

円満で円滑なM&Aを実現したい場合には、デューデリジェンスは決して外せないプロセスです。予算と時間が限られる中では希望するすべてを実施することは難しいですが、本記事を参考にしていただければ幸いです。「ツグナラ」でも、各種デューデリジェンスに対応する専門家と数多く提携しています。M&Aの検討をはじめる際には、最寄りの専門家にご相談ください。

●譲りたい、引継ぎたい企業に寄り添う地域密着の専門家一覧

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