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借入金を引継がない?買い手のリスクを抑えられる事業譲渡を解説
2023.04.04 | M&A

借入金を引継がない?買い手のリスクを抑えられる事業譲渡を解説

M&Aや事業承継を進めていく上で、低リスクで進めていけるスキームが「事業譲渡」です。採算が取れている事業だけを選んで引継ぐことができ、さらに借入金も引継がなくていいというのがこのスキームの特徴になります。そんな「事業譲渡」のメリット・デメリットを改めて整理してみました。

M&Aや事業承継を進めていく上で、低リスクで進めていけるスキームが「事業譲渡」です。採算が取れている事業だけを選んで引継ぐことができ、さらに借入金も引継がなくていいというのがこのスキームの特徴になります。そんな「事業譲渡」のメリット・デメリットを改めて整理してみました。

リスクを最小限に抑えられる事業譲渡とは?

中小企業が自社の事業を拡大していく上でM&Aはとても有効な手段になります。中でも「事業譲渡」は、会社全体ではなく、特定の事業だけを引継ぐため、借入金や簿外債務を引継がずに事業承継できるのが特徴です。本記事では「事業譲渡」がどういうものか、そしてどんなメリット、デメリットがあるのかを解説していきます。

事業譲渡と株式譲渡の違い

「事業譲渡」についての話を進める前に、まずは比較対象となる「株式譲渡」についても理解しておく必要があります。「株式譲渡」と「事業譲渡」のポイントを整理しました。

●株式譲渡のポイント
・会社丸ごと引継ぐイメージ
・買い手側は株を引継ぐことで経営権を引継ぐ
・基本的に従業員や取引先との契約関係、企業が有する権利や特許なども引継ぐ
・スピーディーな引継ぎができる
・不採算部門や借入金などのマイナス部分を含めて引継ぐ必要がある

●事業譲渡のポイント
・会社の一部分だけを引継ぐイメージ
・どの事業、どの資産を引継ぐかを決め、それらの価値を算定した上で営業権を引継ぐ
・社内外の利害関係者との契約は新たに契約し直す必要がある
・事細かく調整できる代わりに引継ぎに時間がかかる
・本当に欲しいものを引継げないことがある

企業を丸々引継ぐ形態が「株式譲渡」、会社の一部分だけを引継ぐのが「事業譲渡」になります。全部か一部かという部分が、借入金を引き継ぐが否かを考える上での大きなポイントになってきます。

買い手が借入金を引継がない代わりのデメリットは時間と手間

最初に結論を伝えておくと、「事業譲渡」においては借入金を引き継ぐ必要ははりません。なぜなら借入金は、企業に紐づいているからです。企業全体、つまり経営権を引き継ぐ「株式譲渡」の場合は、借入金も含めて引継ぐことになりますが、企業の一部である事業の営業権を引き継ぐ「事業譲渡」には借入金が付いてこないからです。
借入金が付いてこない代わりに、「事業譲渡」には企業が有している権利や特許、社内外との契約もついてきません。もしそれらを引継ぐ場合には個別に取得し直したり、契約し直す必要が出てきます。
また、「事業譲渡」を行う場合には、引き継ぐ資産(移動資産)をリストアップし、それぞれを価値算定していかなければいけません。
この2つの作業が必要なため、「事業譲渡」は時間と手間がかかってきます。これが「事業譲渡」の最大のデメリットです。
例えば、小さなケーキ店を事業譲渡で引継ごうとした場合でも、オーブン、ショーケース、冷蔵庫などに始まり、ミキサーなどの小さめのものまで含めると50以上の資産をリストアップして、価値算定する必要が出てきます。また、お店の電気、ガス、水道代、インターネット、電話、物件の契約、従業員の雇用契約なども、引き継ぎのタイミングで一気に契約し直さなければいけません。小さなケーキ店でもこれだけの手間が発生するわけですから、規模が大きくなれば推して知るべしです。

事業譲渡は低リスクゆえに価格も高くなりがち

事業譲渡は時間と手間だけでなく、取引価格が高くなりがちです。ちなみに事業譲渡の価格の計算式は、「移動資産の時価+のれん代(営業権評価額)」になります。移動資産とは、買い手側が引き継ぐ資産のことで、前述のように1つひとつをリストアップし、減価償却を踏まえた上で価値算定を行います。そして営業権評価額と言い換えられる「のれん代」に関しては、一般的に用いられる中小企業の価値算定では、事業の正常利益2~3年分で計算されるケースが多くなっており、この計算式で出た金額が適正価格だといわれています。
ただ、何らかの困りごとがあって売り手企業は引継ぎを検討しているので、買い手側が算定した適正価格ですんなり決まるわけではありません。もし金額面で売り手と買い手にギャップがある場合は、お互いに交渉しながら落としどころを見つけていくのが一般的です。
ただ、何らかの困りごとがあって売り手企業は引継ぎを検討しているので、買い手側が算定した適正価格ですんなり決まるわけではありません。例えば、移動資産の中にローンなどで購入したものがあり、今現在、返済中というケースなら、その借入金の残額も買い手側が引継ぐというケースもあり得ます。

買い手と売り手が双方プラスになる「事業譲渡」のコツ

「借入金を引き継がなくていい」というと、買い手にとって都合がいいスキームのように感じますが、実際に買い手の都合を押し付けてばかりではうまくはいきません。そこは先方の事情を汲んで譲歩したり、引継ぎへの思いや考えをしっかりと聞いて進める必要があります。もし、それができたのならば、買い手はリスクを抑え、売り手は課題解決ができる、双方円満な「事業譲渡」にできる可能性がぐっと高まるでしょう。
なお、より円滑に取引を進めていく場合には、お近くのM&Aアドバイザーにご相談ください。リスクをどこまで許容できるのか、事業譲渡先にどんなことを求めているのかを踏まえた上で最適な形を提案してくれることと思います。

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Writer ツグナラ事務局
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