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中小企業の飛躍的成長を後押しする「100億宣言」とは
2025.09.30 | 中小企業経営

中小企業の飛躍的成長を後押しする「100億宣言」とは

「100億宣言」は、企業が売上高100億円の目標に向けた戦略や体制を開示し、その取り組みや成長意欲を国が補助金などにより後押しする施策です。中小企業が「100億宣言」に参画するメリットや申請方法、注意点について解説します。

「100億宣言」は、企業が売上高100億円の目標に向けた戦略や体制を開示し、その取り組みや成長意欲を国が補助金などにより後押しする施策です。中小企業が「100億宣言」に参画するメリットや申請方法、注意点について解説します。

中小企業の飛躍的成長を後押しする「100億宣言」とは

100億宣言とは

「100億宣言」は、売上高100億円と飛躍的成長を目指す中小企業を、成長加速化補助金やポータルサイトへの掲載などにより、さらに後押ししていく国のプロジェクトです。

プロジェクトに参画する企業は、売上高100億円を目指すことを宣言し、目標の実現に向けた具体的な行動計画などを国に提出することで、中小企業成長加速化補助金経営強化税制成長企業伴走支援などの対象となります。
提出した企業情報や「100億宣言」の内容は、中小企業庁の100億円企業成長ポータルにて公開されます。

掲載されるのは、売上高100億円の実現に向けた目標や課題、成長手段、実施体制、企業理念・経営者メッセージなどです。
目標や企業情報の開示により、事業に関心のある外部企業との連携やシナジーを促進し、経営力の向上や飛躍的成長を加速させていく仕組みとなっています。

※ 中小企業庁「100億宣言とは」より

なぜ「100億」を目標とするのか

ところで、国はなぜ「100億」を目標としているのでしょうか。
それは、中小企業が創出する付加価値とインパクトに、国が大きな期待を寄せているからです。

「100億宣言」ポータルサイトの「100億宣言」に込めた想いには、

  • 我が国の経済を、コストカット型経済から「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行できるかどうかが、正念場となっていること
  • 日本の雇用の7割、付加価値5割以上を有する中小企業・小規模事業者の挑戦と創意工夫が経済移行の鍵となること
  • 「稼ぐ力」を大きく伸ばし、構造的な底上げに加えて、良質な雇用や域内仕入れなどの地域経済にインパクトをもたらす一定規模の企業を創出し、売上高100億円を実現することが付加価値創出の一つの方策となること

が示され、中小企業・小規模事業者のボトムアップや、インパクトをもたらす事業の創出こそが、成長型経済への移行には不可欠であることがわかります。

また、中小企業庁「中小企業の飛躍的成長に向けた政策の方向性ー「100億企業」への成長に向けてー」によると、以下のグラフとともに

  • 中堅企業クラス(「100億企業」)に成長した企業は、売上高規模において、近隣・周辺地域からの仕入金額・仕入比率が大きく、内需要の創出を通じて域内経済の牽引にも貢献
  • 売上高の大きな企業への成長が、自社の豊かさのみならず地域に豊かさをもたらしている
  • 売上高の規模が大きくなるほど、域内仕入額・域内仕入率も増加傾向にあり、近隣・周辺地域の 取引先の売上高に好影響があると考えられる

との結果が提示されており、売上高100億円の目標は、ステークホルダーや地域への好影響と持続的な利益の創出を見据えた、国全体の飛躍的成長へのステップとして設けられていることが読み取れます。

中小企業庁の資料によると、売上高100億円以上の企業は2023年度末の時点で1.4万社あり、企業数全体のうち、わずか0.4%でした。一部の大手・中堅企業がようやく達成できるような額を、中小企業が実現するのは非常に困難な道のりではありますが、成長意欲のある企業の後押しと好循環の醸成こそが、「100億宣言」の目的と考えられます。

「100億宣言」に参画するメリット

メリット①
経営方針の可視化により気づきが得られる
経営計画書の策定と同様に、第三者への提出や公表を前提として事業や経営体制を振り返ることで、企業としてのあり方や方針を見直す機会が得られます。
理念や行動計画を全社的に再確認し、売上高100億円の実現という一つの目標に向けて協力し取り組んでいくことで、組織力向上の機会にもなります。

メリット②
「宣言」を行った企業限定の補助金や税制優遇、伴走支援が受けられる
「100億宣言」を行った企業(以下、宣言企業)は、施策に連動する補助金の申請や税制優遇、経営者ネットワークへの参加、中小機構の伴走支援チームによる成長戦略・課題解決へのアドバイスなどの支援が受けられるようになります。
2025年現在は、中小企業成長加速化補助金の第1次公募が終了し、2次公募は2025年秋を予定しています。詳細は次回のコラムにて紹介いたします。

メリット③
宣言企業限定の経営者ネットワーキングイベント、交流会(実施予定)に参加できる
2025年10月7日には、「100億宣言」企業プロジェクトのキックオフイベントとして、100億円企業創出シンポジウムが開催されることとなりました。
これまで接点のなかった全国の成長意欲ある多様な企業と対話し、関係性を築ける絶好の機会となっています。

第1部 シンポジウム…リアルおよび配信でのハイブリッド開催
対象者…「100億宣言」企業の経営者・経営幹部、「100億宣言」企業以外の経営者、支援機関・金融機関など
会場定員…450名程度(企業は1社につき2名まで、支援・金融機関は1名まで)
配信定員…制限なし

  • 基調講演
    • 成長に導く経営者の役割
      (株式会社日本共創プラットフォーム代表取締役会長 冨山 和彦氏)
  • 講演
    • 中小企業政策の方向性
      (中小企業庁 経営支援部長 山崎 琢矢氏)
  • パネルディスカッション
    • 成長に内在する課題へのアプローチ
      • 前田工繊株式会社(福井県)代表取締役社長 前田 尚宏氏
      • 株式会社日本政策投資銀行(DBJ)取締役常務執行役員 増田 真男氏

第2部 経営者ネットワーク及び交流会※「100億宣言」企業のみ参加可能
・会場定員:100社
・対象:「100億宣言」の企業経営者(1名まで幹部同行可)
・グループ企業として100億宣言をした企業はグループで1社とする

現在は、一般募集に先立って「100億宣言」登録企業の優先申込が始まっています。
キックオフイベント後にも、定期的な経営者ネットワークイベントの開催が予定
されており、宣言企業同士が事業の課題解決や戦略について研究する場も、順次設けられる見通しです。

メリット④
ポータルサイト掲載、公式ロゴマーク使用によるイメージ向上
提出した「100億宣言」の内容は「100億円企業成長ポータル」に掲載され、宣言企業として認められた企業は公式ロゴマークの使用が可能となります。ポータルサイトへの掲載と公式ロゴマークの使用により、成長意欲のある宣言企業としてイメージが向上することで、他社だけでなく求職者からの注目も集まり、採用につながる可能性も高まります。

※ 経済産業省「100億企業を創出するための経営者ネットワーク」より

申請・提出方法

100億宣言に必要な書類は以下の通りです。

  1. 100億宣言(様式1)
  2. 100億宣言申請書(様式2)
  3. 決算書等(前々期決算期分)
  4. 決算書等(前期決算期分)
  5. 決算書等(最新決算期分)

グループ企業として申請する場合、1、2はグループ共同で1枚、3~5は各企業の決算書類を準備することとなります。
海外子会社がある場合は、日本語に翻訳した決算書類の提出が必要です。

「100億宣言」への申請は、補助金申請システム「jGrants」にて申請できます。
なお、jGrantsの利用にはGビズIDまたは、個人事業主の場合はインボイス登録番号が必要です。
GビズIDの取得には2週間程度かかるので、注意が必要です。

「100億宣言」の内容は、申請要領に沿って以下の①~⑤をひな形に記載します。

  1. 企業概要(足下の売上高、従業員数等)
  2. 売上高100億円実現の目標と課題(売上高成長目標、期間、プロセス等)
  3. 売上高100億円実現に向けた具体的措置(生産体制増強、海外展開、M&A等)
  4. 実施体制
  5. 経営者のコミットメント(経営者自らのメッセージ)

100億宣言の記載例

※ 引用 100億宣言 申請要領

申請時の注意点

登録された宣言は、100億企業実行事務局において確認後、ポータルサイトにそのまま掲載されます。一部を非公開にするなどの対応はできないため、公開を前提とした記載が必要となります。

また、宣言企業が制度の趣旨にそぐわない不適切な行為を行った場合は、ポータルサイトへの掲載が取りやめとなることもあります。その場合は、掲載が取りやめとなった日から起算して1年は再申請ができなくなるため、注意が必要です。

おわりに

「100億宣言」への挑戦は、社内の士気を高め、業種や地域を超えて同じ志をもつ仲間と出会える絶好の機会となります。
仲間との交流や学びによって新たな知見を得ることで、経営者としての視野も広がるでしょう。
まずは社員との歩調を合わせ、目指すべき目標を掲げることで、成長への第一歩を踏み出しましょう。

次回は、「100億宣言」企業が申請できる、中小企業成長加速化補助金について解説いたします。


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