官民連携により社会課題の解決と地方創生を推進する「企業版ふるさと納税」は、今年度の税制改正の特別措置により2027(令和9)年度まで延長されました。企業版ふるさと納税は、2020(令和2)年度から税額控除が9割にまで拡充されたことで、寄附件数や寄付額とともに、プロジェクトに参画し活躍する企業も増え続けています。
一方で、2024年には企業と自治体間の「経済的な見返り」にあたる事案の発生により、今年度から寄附金の使途に関するチェックが厳格化されることとなりました。
官民連携により社会課題の解決と地方創生を推進する「企業版ふるさと納税」は、今年度の税制改正の特別措置により2027(令和9)年度まで延長されました。企業版ふるさと納税は、2020(令和2)年度から税額控除が9割にまで拡充されたことで、寄附件数や寄付額とともに、プロジェクトに参画し活躍する企業も増え続けています。
一方で、2024年には企業と自治体間の「経済的な見返り」にあたる事案の発生により、今年度から寄附金の使途に関するチェックが厳格化されることとなりました。
企業版ふるさと納税は、最大9割の法人税の軽減効果を得ながら、自治体との協業やプロジェクト参画によりパートナーシップを構築できる、地方創生のための制度です。自社の独自性や技術を発揮し、自治体との協業により実績を残すことができれば、自社の認知度も向上し地域やステークホルダーからの信頼性も向上するでしょう。
今回は企業版ふるさと納税の概要や実績とともに、税制改正による変更点を解説していきます。
●連載:企業版ふるさと納税
企業版ふるさと納税①
実質負担1割の寄付で地域に貢献できる「企業版ふるさと納税」
企業版ふるさと納税②
社員が派遣先の自治体で活躍する「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」
企業版ふるさと納税③
企業版ふるさと納税に寄付した企業が受給できる「地域雇用開発助成金」
企業版ふるさと納税④
【本記事】寄附とプロジェクト参画で地方創生!企業版ふるさと納税3年延長
企業版ふるさと納税への参画前に、企業側がまず把握しておくべきポイントは以下の通りです。
ポイントの詳細は過去記事にて解説しています。以下のページをご覧ください。
企業版ふるさと納税の適用期限が3年延長された理由としては、次の要因が挙げられます。
企業版ふるさと納税の制度は、地方への資金や人材の還流を促進する施策の一つとして一定の成果を上げ、地方と企業のつながりを生み出す効果的な取組として定着しつつあります。
企業側としても、節税効果を得ながら地方公共団体との連携の実績とパートナーシップを得られるため、継続の要望が多かったものと考えられます。
企業版ふるさと納税の制度は2016(平成28)年度に施行され、2020(令和2)年度に法人税の税額控除が最大9割にまで拡充されたことで活用が進みました。
施行初年度と現時点で公表されている2023年度のデータを比較すると、件数は約27倍、寄附総額は約63倍にまで増大しています。
寄附活用額としては、2024年度の事業分野別実績のうち「しごと創生」が214億900万円と最も多く、次いで「まちづくり」が181億5,870万円、「地方への人の流れ」が45億830万円、「働き方改革」が29億2,270万円となっています。
2023年度との比較では、事業分野自体の順序に変動はありませんが、2023年度の「まちづくり」での寄附活用額は約2倍となっていました。
寄附活用額を大幅に伸ばした「まちづくり」のモデルケースとしては、株式会社ニトリグループや株式会社ツムラによる北海道夕張市への寄附が挙げられます。
ニトリグループによる事業概要(事業期間:2016~2019年)
ツムラによる事業概要(事業期間:2017~2020年)
内閣官房・内閣府総合サイト「地方創生」特徴的な事例
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/portal/pdf/h30jirei_zentai.pdf
https://www.chisou.go.jp/sousei/meeting/tihousousei_setumeikai/h30-06-01-shiryou10.pdf
夕張市は2006年に財政破綻が明らかとなり、翌年には全国初の「財政再建団体」として国の指定を受けることとなりました。夕張市の市債は、地方債残高を除く総額約353億円にまで膨らんでおり、当時の市税収入の約65倍にあたることから再生は困難とされていましたが、国や企業、地縁団体などからの支援により再生が後押しされ、計画通りに改善が進めば、期日である2027年3月には市債の償還が完了するとの予測が立つまでに回復しています。
夕張市HP:https://www.city.yubari.lg.jp/soshiki/4/1266.html
企業版ふるさと納税「まちづくり」事業のモデルケースとして紹介した大手2社は、自社の拠点や縁が寄附のきっかけとなっていましたが、これまで関わりのなかった地域の輪に加わりたい企業にとっても有効な制度となっています。
他地域展開を検討している企業の場合は、寄附やプロジェクト参画によって自治体や地域の方とふれあうきっかけが得られるので、地域の特性や文化を身近に体感しながら、より現実的な事前調査により構想を練ることができます。
地域により課題は異なりますが、プロジェクトに取り組むうえで最も大切なのは、地域全体の利益を追求していく意志と姿勢です。
節税メリットを享受するだけでなく、プロジェクトや自社事業が地域にもたらす影響や、未来の姿にまで視野を広げておくことが肝要となります。
都道府県ごとの寄附総額のトップは「宮城県」の54億6,000万円、次いで「北海道」の39億10万円、「石川県」の37億8,710万円でした。
また、自治体ごとの寄付額のトップは「宮城県」の25億7,950万円、次いで「宮城県仙台市」24億400万円、「石川県」23億860万円、「静岡県裾野市」22億5,170万円となっています。
ふるさと納税の制度を活用し、企業の専門知識やノウハウをもつ人財を自治体に派遣する「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」は、2023年度には98の地方団体により活用されました。
内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 内閣府地方創生推進事務局「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の 令和5年度寄附実績について」より
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/pdf/R05_keinen_zisseki.pdf
企業や地方公共団体に定着しつつある企業版ふるさと納税ですが、2024年度には「経済的な利益の受け渡し」にあたるケースが確認され、国は当該企業と地方公共団体の計画認定を取り消しました。
問題視されたのは、企業グループ内での寄附金の還流や不適切な便宜などであり、再発や不正防止として、2025年度からチェック機能が厳格化されることとなりました。
制度の健全な活用と発展に重点を置き、制度が地方創生の本来の趣旨で活用されるように、透明化に向けてチェック機能が追加されています。
具体的な変更点は、以下の通りです。
不正防止のためにチェック機能が厳格化されましたが、自社情報を公に開示できる状態にまでブラッシュアップしておくことで、自治体や連携先からの印象も良くなり、企業としての信頼性も増します。
企業版ふるさと納税の寄附の方法は、以下のいずれかとなっています。
弊社サクシードでは、企業版ふるさと納税ポータルサイト「river」を運営する株式会社カルティブと連携し、地域活性化に向けた制度活用を推進しています。
寄附の申請や、寄附先の選び方などでお困りの場合は、ぜひご活用ください。
株式会社カルティブ https://cultive.co.jp/
ー 企業版ふるさと納税プラットフォーム「river」 https://cpriver.jp/
企業版ふるさと納税の最大の目的は、企業と自治体の連携による地域活性化と地方創生です。
人や産業が動き出し、街が活気づくためには、企業の独自性と技術、地域社会を思う心、広い視野が不可欠となります。
参画を検討している企業は、計画の内容や節税メリットを追うだけでなく、自治体や地域から愛され信頼される健全な企業を目指し続けましょう。
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