沖縄県で地域コンサルタントとして活動するカナイ経営経営研究所代表の比嘉智明氏のコンサルタントとしての日常を切り取る連載第2回。第2回は沖縄県の事業承継に対する意識や課題感について語ります。
沖縄県で地域コンサルタントとして活動するカナイ経営経営研究所代表の比嘉智明氏のコンサルタントとしての日常を切り取る連載第2回。第2回は沖縄県の事業承継に対する意識や課題感について語ります。
本コラムでもまた全国平均との対比から入りますが、例えば全国の廃業見込みは2017年の段階で127万社ほどあると試算しています(中小企業白書2016年より)。沖縄の企業数に照らし合わせると、沖縄県内の廃業見込みの企業は1万6千社ほどあると試算し、それに伴う失われる雇用者数は8万3千人(県内人口の約5%)ほどです(あくまで試算数値になります)。
ネガティブな話ばかりではありますが、帝国データバンクの2019年資料から後継者の不在率が全国平均65%と後継者不足が問題視されていますが、沖縄県はダントツの全国1位(82%)となっています。主な理由として、沖縄県では個人事業を中心にして小規模企業が多数を占めており、個人事業主の場合は従業員1~4人以内の割合が83.2%で、法人でも従業員数10人未満が62.8%となっています。一方で経営者の株式保有割合から見てみると従業員規模の大きな企業では、50%以上の株主保有をしている経営者が6割以上も存在し、規模の大きなところもファミリーで企業運営(保有)していることが分かります。一般的に従業員規模が大きくなるほど(同業他社と比べても)経営状況は良くなる傾向にあります。そこに所有と経営を一体化しているファミリー企業が多く潜んでいることも他県と比較しても異なっている点になります。
他の沖縄県の特徴としては、経営者年齢が相対的に高く、本土復帰(1972年)後に創業し、創業者が経営している企業の比率が高いため、事業承継に対する「意識」を向上させる施策が重要と考えられます。従業員規模が大きくなるにしたがって、廃業予定はその分減退するので事業承継を早い段階で考慮させる必要があります。従業員(もしくは家族従業員)が少ない小規模企業ほど、事業承継に対する「意識」が低くなる傾向があり、加えて、必然的ですが現在の経営状況が悪い時ほど、事業承継に対する「意識」が低くなります。
結論から事業承継未決定企業においては、事業承継支援機関、顧問税理士、金融機関を中心とした総合的な支援を整えておく必要があり、ツグナラの地域専門家ネットワークを活用することで少なからず解決がみえてくると感じています。
また、経営者の思考として、事業承継を考えない理由が「仕事が忙しく、じっくり考える時間がない」や「自分はまだ若いので、今決める必要はない」とする経営者が多くいます。その点においては、我々から継続した経営支援や中期経営計画を通じて意識を持てるようにコミュニケーションを持てる仕組みを構築したいと考えています。
そして最大の懸念事項が、沖縄県において M&A に対する認識が低く、M&Aはおこなわない・考えたことが無いという経営者の回答が8割弱の結果となっている点です(沖縄振興開発金融公庫2021年実態調査より)。沖縄県の将来を考えた時にも、この事業承継やM&Aに対する認識が低いことは日本全体の問題でもあるので、もう少し我々の方でも啓蒙活動やセミナー、情報発信を強めて地域の伝統文化のためにも、認知・周知をしていき健全な経営や経済環境を構築することに努めてまいりたいと思っています。
●連載:沖縄県と事業承継
第1回 泡盛業界における伝統文化の存在意義と承継すべき理由
第2回 本記事
第3回 地域性を活かした泡盛業界の譲渡事例3選
この著者によるコラム
ほかのコンサルタントコラム
© Copyright 2024 TGNR All rights reserved. "ツグナラ" and logomark / logotype is registered trademark.