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東京 ・ 台東区
引継ぎ実績あり
物流を
磐栄ホールディングス株式会社
「縁」の可能性を信じる懐深い経営で家族を迎えるように向き合う
経営理念
物流と環境の未来へ
代表者メッセージ

磐栄グループの母体となる磐栄運送株式会社は、1961年の設立以来、安全・確実・迅速な輸送の実現を基本理念とし、荷主企業の皆さまとの強固な信頼関係を構築するとともに、地域経済の発展を支える物流企業として地域貢献に尽力して参りました。
東日本大震災後は、関東地区の拠点網整備とM&Aを積極的に推進し、物流能力の更なるポテンシャルアップを目指した結果、震災前と比べて約10倍にもなる企業規模を実現致しました。
2016年3月には、総合物流企業としての更なる基盤強化と磐栄グループ全体のコーポレートガバナンスの確立、並びに、強靭でスピード感のある経営戦略を確立することを目指し、純粋持株会社 磐栄ホールディングス株式会社を設立致しました。
磐栄グループは更なる企業成長を目指し、グループ内のインフラ拡充や社員の教育研修を強化することで、皆さまの良きパートナーとして社会貢献の実現に向け精進して参ります。
お客様のニーズに合わせた最適な輸送サービスを提供するために、総合物流企業としての更なる対応力強化と確固たる経営基盤の確立をグループ全社が一体となって推進して参ります。
今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
代表取締役 村田 裕之

私たちのこだわり
物流にとどまらず地域と共に歩む企業へ
磐栄ホールディングス株式会社の歴史は、1961年に創業した磐栄運送株式会社から始まりました。戦後間もない時期に物資の輸送を担う運送業としてスタートし、EC市場の拡大や海外取引の発展とともに需要は増え、地域に根ざした物流サービスの提供により事業は順調に拡大していきました。
2014年からは、さらなる成長戦略として事業承継型M&Aを本格的にスタートし、後継者不在などでお困りの全国の企業をグループに迎え入れることで、拠点と業種の幅を広げていきました。2016年には、引き継いだ会社の組織再編により経営の効率化を図るために、磐栄ホールディングス株式会社を設立しています。
創業からの主軸である物流業の拠点は、現在は国内外70カ所を超えるまでになり、グループ会社は65社となりました。そのうち39社はM&Aによる承継先です。引き継いだ企業とともに業種も多様化し、プラスチックダンボールや産業用機械設備、木工品の製造、酒造、地ビール製造、オリーブ農園、ブルーベリー農園、野菜工場といった農業関連事業、ソフトウェア開発、薬局、観光業まで多岐にわたります。
公認会計士の資格取得により目をかけられ副社長に就任
私は大阪府生まれで、大学卒業後は生命保険会社で社会人としてのキャリアをスタートしました。そのうちに、もっと専門性の高い資格を取得し経験を積みたいという思いが強くなり、公認会計士を目指すことを決めました。簿記の知識も全くないところから猛勉強をして試験に合格し、その後、サンワ・等松青木監査法人(現在の有限責任監査法人トーマツ)に入社して、1992年に公認会計士として正式に登録されました。前職の監査法人では、多くの中小企業の経営実態を財務の面からうかがい知れたことが大きな財産となりました。
そして公認会計士に登録されてから間もなく、妻の父から「経営を手伝ってくれないか」という声がかかり、1993年に磐栄運送株式会社に入社することになりました。おそらく、会計士の資格を取得したことで頼りになると思ってもらえたのかもしれませんが、その頃は1カ所に留まらずさまざまな業種や職種に挑戦してみたいと思っていたので、長居をするつもりはなく、中小企業の経営は未経験ながらも興味があり、助っ人というくらいの気持ちで入社を決めました。
ところが、先代である義父はいずれ私に会社を任せたいと思っていたようで、入社当初から私は副社長の役職に就くこととなりました。運送業の経験は全くありませんでしたが、業務に必要な大型や牽引などの免許は大学時代に取得していたので、現場での仕事を通じて運送業への理解を深めていき、並行して先代の義父とともに経営に携わり、2002年には社長に就任しました。
リーマンショック、先代の死、震災が方針転換のきっかけに
私が社長に就任した当時の磐栄運送は、いわき市内に本社と営業所があり、社員数は180名ほどでした。経営は安定していましたが、2008年のリーマンショック以降は業績が落ち込み、翌年には経営の相談相手であった義父が亡くなるという不幸が重なりました。さらに事業の回復に向けて動きだした2011年には、追い打ちをかけるかのように東日本大震災が起こりました。
当時の磐栄運送の事業は運送業のみで、福島の流通のために震災後も業務を続けていましたが、原発事故の影響からか福島ナンバーの車両に向けられる目は厳しく、社員も大変な思いをしながら荷を運んでくれていました。
しかし、震災前と同じ運送業のみの体制ではいつか限界がくると予測していました。安定的な経営のためには福島県外への拠点展開と流通網の開拓が不可欠であり、震災の年から関東エリアへの拠点展開をスタートして、千葉県の営業拠点の開拓を皮切りに埼玉県、群馬県への展開を一気に進めていきました。地元での事業展開を望んでいた亡き先代の方針からは大幅な転換となりましたが、事業が続いてこそ先代に顔向けできるとの思いで拠点の拡大に努めていきました。
M&Aの情報ゼロの時代に縁をたぐり寄せる
弊社がM&Aを本格的に始めたのは、拠点拡大を始めた年の2年後からです。当初の目的は運送業の物流拠点の拡大でした。それまでは自前で営業所や拠点をゼロから立ち上げていましたが、新天地で流通網を開拓していくには時間もコストも手間もかかるため、M&Aは非常に有効な手法だと感じました。
福島県内では、当時から後継者不足の課題はありましたが、M&Aを第三者承継の手段として活用した事例は周りでは見かけず、またM&A自体も中小企業では一般的ではありませんでした。そのため譲渡側の情報を集めるのも一苦労で、銀行に「何かいい話があれば紹介してください」とお願いしていたものの、なかなか案件そのものに巡り会えず、情報が入ればなんとか成約につなげたいと必死でした。
そんな中、当グループの承継1社目となる福島県のエムケー物流との事業承継の話が金融機関から舞い込み「この貴重な機会を逃したくない」との思いで交渉を進め、2014年10月に成約しました。
エムケー物流の次に引き継いだ翌月には、2社目となる福島北桑運輸を承継しました。福島北桑運輸は、震災前からM&Aの交渉を進めていたものの、直前で破談になってしまった先でした。当時のオーナーが亡くなり、ご遺族の方から「もう一度話を聞いてほしい」と連絡を受けたのはエムケー物流との引き継ぎの最中で、もともと引き継ぐつもりだったのでその場で承継を決断し、1カ月という短期間で成約に至りました。
事業承継の際は、当初は磐栄運送を親会社として引き継いでいましたが、「親会社・子会社」という上下関係ではなく「同じ仲間」「家族」のような関係を築いていきたいと考え、2016年には純粋持株会社として磐栄ホールディングス株式会社を設立しました。
グループの中核事業である運送業は、エンドユーザーの消費行動と紐づいているのでどのような業種とも相性がよく、選り好みする必要がありません。エリア展開がむしろ物流網の強化になるのも利点であり、相談いただいたほとんどの会社を引き受けることができました。
こうしてM&Aを進めていく中で「信頼できる買い手」としてのポジションが確立されたのか、逆指名のような形でどんどん案件が舞い込むようになり、ストロングバイヤーと呼ばれる企業に案件が集まる理由がわかりました。相談を受ける業種もさまざまで、中には「運営が苦しい動物園を引き受けてほしい」という相談もありました。事業承継型M&Aがまだ浸透しておらず、ハゲタカという言葉を耳にしていたような時期に、譲渡側の企業や仲介業者の方からホワイトナイトのような立場で信頼いただけたことを大変ありがたく思っています。
M&Aの本質は数字を越えた余白に宿る
私の社長就任当時に約20億円だった売上は、2024年には330億円へと成長し、グループ企業は65社にまで拡大しました。そのうちM&Aでグループ入りした企業は49社、自社設立は16社であり、従業員数は2,400名を超えています。10年前に拠点拡大と事業承継を始めた時点ではここまで大所帯になるとは想像もしていませんでしたが、承継した先も着実に黒字化できるようになってきています。
弊社がM&Aに取り組むうえで大切にしているのは「お互いがWin-Winになれるかどうか」という点です。異業種であっても、アライアンスを組むことで強みを活かし、弱点を補いあっていけます。特に中小企業にとっては、同業だけでなく異業種との接点が、時には本業自体の課題解決や、新たなビジネスチャンスに繋がり大きな強みにもなりえるでしょう。M&Aのシナジーは、教科書通りではないところが面白い部分です。実際に、物流と非物流の異業種でも、顧客の紹介や取引による連携が生まれています。
さらに当グループの大きな特徴としましては、2020年にM&A専門会社のBHCパートナーズへ設立時に資本参画したことです。M&Aの専門人材が関連会社にいることで、今まで以上に相談に対してスピーディー且つ複雑な相談への対応が可能となりました。相談を受けた以上は、なるべく期待に応えられるようスムーズな承継を目指したいとの思いで資本参加を決めました。
ネットワークが整ってきた現在は、黒字化を進めつつ、引き継いだ各会社のPMIと連携強化に力を入れています。
リスク以上の価値をもつ事業と人財のシナジー
M&Aでは、想定外の事態がいくらでも起こりますが、私は「すべて希望通りの案件はない」と思っています。むしろ、負債を抱えた会社を引き継ぐことが多いのでリスクの方が高いかもしれません。財務面だけでなく、雇用面でのリスクもあります。当グループでは事業承継により人財が流出したことはほとんどありませんが、大幅に方針が変わり人事配置でポジションが変わると、変化に耐えきれない社員が離職していってしまうケースも中にはありました。
当グループに限らず、引き継いだ社員と、グループ化のため承継先に出向した社員とのコミュニケーションがうまくいかない場合があるのはM&Aでは常に課題となります。事業承継のためのグループ化には賛成であっても、業務が変わることは反対というケースもあり得ます。
例えば、総務や経理を一本化するシェアードサービス導入の際に、新システムを覚えることが負担に感じたり、仕事がなくなる不安を抱えたりする担当者から反対が出ることは容易に想像ができます。体制を変えるときには、現場との対話を重ね、互いに歩み寄ることが最も大事だと実感しています。特に運送業は労働集約型産業なので、管理者やさらに上のポジションには現場の雰囲気をよく理解している方を配置することが大事だと感じています。
事業承継後のケアと改善はなかなか大変ではありますが、リスクを負う以上に、人財と事業が秘めるシナジーには価値があると感じています。たとえ話が違うと思う部分があっても、そのギャップを今いる社員でどう乗り越えていくかの方が大事であり、人財不足が深刻な現在だからこそ、すでに基盤のある会社の力を活かして展開していけるM&Aという手法は非常にありがたいです。
新たな仲間を受け入れ、役職関係なく連携できる柔軟な社風
弊社が最も大切にしているのは、社員の幸せ、ステークホルダーの満足、そして地域・社会への貢献という三つの価値観です。これはM&Aを進める際にも必ずお伝えしているグループ全体の理念であり、それぞれの会社で掲げられている理念とともに大事にしてもらいたいと思っています。
M&Aの際に譲渡側の経営者が最も気にかけるのは、「自分が会社を離れた後、社員たちはどうなるのか」ということです。そのためトップ面談では私の考えを率直に伝え、引き継いだ社員が安心して働き続けられるように、人の可能性を活かす教育や採用を何より大事にしています。弊社ではM&Aを通じて仲間入りする企業が多く、引き継いだ社員の方が安心して活躍できる職場づくりが重要となります。
弊社が承継するのはほとんどが中小企業で、社員は中途採用の方が多いため、型通りの研修や制度よりも、埋もれた才能や経験をいかに発見し活かすかが大事になると思っています。幸い、当グループには多様な業種が揃っているので、別の業種や職種に挑戦をしてみたいという社員がいる場合は、グループ内の別会社への転属も柔軟に対応できるようにしたい考えです。
当グループでは、事業承継により新たな仲間が加わることが日常的になっているので、新しい事業が加わると、役員や幹部社員も一丸となって現場に入り手伝うのも特有の文化になってきています。ブルーベリーやオリーブの収穫に取締役が参加したり、キッチンカーで販売を行うのが常務だったりと役職関係なく、手が空いている人が率先して動いてくれるので助かっています。
社内ではよく「次はどんな会社が入るんですか」と聞かれるほどのペースで承継を進めているので、社員も会社としても絶えずチャレンジできる環境となってきています。このチャレンジが、それぞれの人財の中に眠っていたスキルや経験を掘り起こすきっかけにもなります。「何か面白そうなことをしている会社だ」だと感じて入社する社員も増えており、多角化と社員一人ひとりの働きがいにもつながっていると実感しています。
誠実な目で良縁を見極め新たな価値を創出
弊社は事業承継M&Aを通じて着実に成長を遂げてきました。グループ内では、異業種の拠点同士の連携も進み、非常にいい効果が出てきています。
グループ全体の成長とともに、M&A戦略も次のステージへと移行しています。現在は、事業承継によって業種や規模などの横軸が充分広がったので、今後は売上や利益などの縦軸を伸ばすために、シナジーや将来性を見据えた拠点の拡充と組織の質的向上を両立させていきます。
今後、承継の対象としていきたい企業の規模としては、物流業の場合は概ね10億以上の企業を目安にしています。拠点展開も「広く」から「深く」へと軸足を移し、シナジーが見込める地域に集中投資する方針です。
M&Aは、企業同士が協力し合いながら成長していく手段であり、事業を受け入れる側の会社が承継先と同じ目線になり、懐深く付き合っていくことが大事だと思っています。異業種とのアライアンスを強化することで、新たなビジネスモデルの創出にも挑みます。これからも「家族」のような企業文化を大切にしながら、社員、取引先、地域社会にとって価値のある企業を目指していきます。
物流にとどまらず地域と共に歩む企業へ
磐栄ホールディングス株式会社の歴史は、1961年に創業した磐栄運送株式会社から始まりました。戦後間もない時期に物資の輸送を担う運送業としてスタートし、EC市場の拡大や海外取引の発展とともに需要は増え、地域に根ざした物流サービスの提供により事業は順調に拡大していきました。
2014年からは、さらなる成長戦略として事業承継型M&Aを本格的にスタートし、後継者不在などでお困りの全国の企業をグループに迎え入れることで、拠点と業種の幅を広げていきました。2016年には、引き継いだ会社の組織再編により経営の効率化を図るために、磐栄ホールディングス株式会社を設立しています。
創業からの主軸である物流業の拠点は、現在は国内外70カ所を超えるまでになり、グループ会社は65社となりました。そのうち39社はM&Aによる承継先です。引き継いだ企業とともに業種も多様化し、プラスチックダンボールや産業用機械設備、木工品の製造、酒造、地ビール製造、オリーブ農園、ブルーベリー農園、野菜工場といった農業関連事業、ソフトウェア開発、薬局、観光業まで多岐にわたります。
公認会計士の資格取得により目をかけられ副社長に就任
私は大阪府生まれで、大学卒業後は生命保険会社で社会人としてのキャリアをスタートしました。そのうちに、もっと専門性の高い資格を取得し経験を積みたいという思いが強くなり、公認会計士を目指すことを決めました。簿記の知識も全くないところから猛勉強をして試験に合格し、その後、サンワ・等松青木監査法人(現在の有限責任監査法人トーマツ)に入社して、1992年に公認会計士として正式に登録されました。前職の監査法人では、多くの中小企業の経営実態を財務の面からうかがい知れたことが大きな財産となりました。
そして公認会計士に登録されてから間もなく、妻の父から「経営を手伝ってくれないか」という声がかかり、1993年に磐栄運送株式会社に入社することになりました。おそらく、会計士の資格を取得したことで頼りになると思ってもらえたのかもしれませんが、その頃は1カ所に留まらずさまざまな業種や職種に挑戦してみたいと思っていたので、長居をするつもりはなく、中小企業の経営は未経験ながらも興味があり、助っ人というくらいの気持ちで入社を決めました。
ところが、先代である義父はいずれ私に会社を任せたいと思っていたようで、入社当初から私は副社長の役職に就くこととなりました。運送業の経験は全くありませんでしたが、業務に必要な大型や牽引などの免許は大学時代に取得していたので、現場での仕事を通じて運送業への理解を深めていき、並行して先代の義父とともに経営に携わり、2002年には社長に就任しました。
リーマンショック、先代の死、震災が方針転換のきっかけに
私が社長に就任した当時の磐栄運送は、いわき市内に本社と営業所があり、社員数は180名ほどでした。経営は安定していましたが、2008年のリーマンショック以降は業績が落ち込み、翌年には経営の相談相手であった義父が亡くなるという不幸が重なりました。さらに事業の回復に向けて動きだした2011年には、追い打ちをかけるかのように東日本大震災が起こりました。
当時の磐栄運送の事業は運送業のみで、福島の流通のために震災後も業務を続けていましたが、原発事故の影響からか福島ナンバーの車両に向けられる目は厳しく、社員も大変な思いをしながら荷を運んでくれていました。
しかし、震災前と同じ運送業のみの体制ではいつか限界がくると予測していました。安定的な経営のためには福島県外への拠点展開と流通網の開拓が不可欠であり、震災の年から関東エリアへの拠点展開をスタートして、千葉県の営業拠点の開拓を皮切りに埼玉県、群馬県への展開を一気に進めていきました。地元での事業展開を望んでいた亡き先代の方針からは大幅な転換となりましたが、事業が続いてこそ先代に顔向けできるとの思いで拠点の拡大に努めていきました。
M&Aの情報ゼロの時代に縁をたぐり寄せる
弊社がM&Aを本格的に始めたのは、拠点拡大を始めた年の2年後からです。当初の目的は運送業の物流拠点の拡大でした。それまでは自前で営業所や拠点をゼロから立ち上げていましたが、新天地で流通網を開拓していくには時間もコストも手間もかかるため、M&Aは非常に有効な手法だと感じました。
福島県内では、当時から後継者不足の課題はありましたが、M&Aを第三者承継の手段として活用した事例は周りでは見かけず、またM&A自体も中小企業では一般的ではありませんでした。そのため譲渡側の情報を集めるのも一苦労で、銀行に「何かいい話があれば紹介してください」とお願いしていたものの、なかなか案件そのものに巡り会えず、情報が入ればなんとか成約につなげたいと必死でした。
そんな中、当グループの承継1社目となる福島県のエムケー物流との事業承継の話が金融機関から舞い込み「この貴重な機会を逃したくない」との思いで交渉を進め、2014年10月に成約しました。
エムケー物流の次に引き継いだ翌月には、2社目となる福島北桑運輸を承継しました。福島北桑運輸は、震災前からM&Aの交渉を進めていたものの、直前で破談になってしまった先でした。当時のオーナーが亡くなり、ご遺族の方から「もう一度話を聞いてほしい」と連絡を受けたのはエムケー物流との引き継ぎの最中で、もともと引き継ぐつもりだったのでその場で承継を決断し、1カ月という短期間で成約に至りました。
事業承継の際は、当初は磐栄運送を親会社として引き継いでいましたが、「親会社・子会社」という上下関係ではなく「同じ仲間」「家族」のような関係を築いていきたいと考え、2016年には純粋持株会社として磐栄ホールディングス株式会社を設立しました。
グループの中核事業である運送業は、エンドユーザーの消費行動と紐づいているのでどのような業種とも相性がよく、選り好みする必要がありません。エリア展開がむしろ物流網の強化になるのも利点であり、相談いただいたほとんどの会社を引き受けることができました。
こうしてM&Aを進めていく中で「信頼できる買い手」としてのポジションが確立されたのか、逆指名のような形でどんどん案件が舞い込むようになり、ストロングバイヤーと呼ばれる企業に案件が集まる理由がわかりました。相談を受ける業種もさまざまで、中には「運営が苦しい動物園を引き受けてほしい」という相談もありました。事業承継型M&Aがまだ浸透しておらず、ハゲタカという言葉を耳にしていたような時期に、譲渡側の企業や仲介業者の方からホワイトナイトのような立場で信頼いただけたことを大変ありがたく思っています。
M&Aの本質は数字を越えた余白に宿る
私の社長就任当時に約20億円だった売上は、2024年には330億円へと成長し、グループ企業は65社にまで拡大しました。そのうちM&Aでグループ入りした企業は49社、自社設立は16社であり、従業員数は2,400名を超えています。10年前に拠点拡大と事業承継を始めた時点ではここまで大所帯になるとは想像もしていませんでしたが、承継した先も着実に黒字化できるようになってきています。
弊社がM&Aに取り組むうえで大切にしているのは「お互いがWin-Winになれるかどうか」という点です。異業種であっても、アライアンスを組むことで強みを活かし、弱点を補いあっていけます。特に中小企業にとっては、同業だけでなく異業種との接点が、時には本業自体の課題解決や、新たなビジネスチャンスに繋がり大きな強みにもなりえるでしょう。M&Aのシナジーは、教科書通りではないところが面白い部分です。実際に、物流と非物流の異業種でも、顧客の紹介や取引による連携が生まれています。
さらに当グループの大きな特徴としましては、2020年にM&A専門会社のBHCパートナーズへ設立時に資本参画したことです。M&Aの専門人材が関連会社にいることで、今まで以上に相談に対してスピーディー且つ複雑な相談への対応が可能となりました。相談を受けた以上は、なるべく期待に応えられるようスムーズな承継を目指したいとの思いで資本参加を決めました。
ネットワークが整ってきた現在は、黒字化を進めつつ、引き継いだ各会社のPMIと連携強化に力を入れています。
リスク以上の価値をもつ事業と人財のシナジー
M&Aでは、想定外の事態がいくらでも起こりますが、私は「すべて希望通りの案件はない」と思っています。むしろ、負債を抱えた会社を引き継ぐことが多いのでリスクの方が高いかもしれません。財務面だけでなく、雇用面でのリスクもあります。当グループでは事業承継により人財が流出したことはほとんどありませんが、大幅に方針が変わり人事配置でポジションが変わると、変化に耐えきれない社員が離職していってしまうケースも中にはありました。
当グループに限らず、引き継いだ社員と、グループ化のため承継先に出向した社員とのコミュニケーションがうまくいかない場合があるのはM&Aでは常に課題となります。事業承継のためのグループ化には賛成であっても、業務が変わることは反対というケースもあり得ます。
例えば、総務や経理を一本化するシェアードサービス導入の際に、新システムを覚えることが負担に感じたり、仕事がなくなる不安を抱えたりする担当者から反対が出ることは容易に想像ができます。体制を変えるときには、現場との対話を重ね、互いに歩み寄ることが最も大事だと実感しています。特に運送業は労働集約型産業なので、管理者やさらに上のポジションには現場の雰囲気をよく理解している方を配置することが大事だと感じています。
事業承継後のケアと改善はなかなか大変ではありますが、リスクを負う以上に、人財と事業が秘めるシナジーには価値があると感じています。たとえ話が違うと思う部分があっても、そのギャップを今いる社員でどう乗り越えていくかの方が大事であり、人財不足が深刻な現在だからこそ、すでに基盤のある会社の力を活かして展開していけるM&Aという手法は非常にありがたいです。
新たな仲間を受け入れ、役職関係なく連携できる柔軟な社風
弊社が最も大切にしているのは、社員の幸せ、ステークホルダーの満足、そして地域・社会への貢献という三つの価値観です。これはM&Aを進める際にも必ずお伝えしているグループ全体の理念であり、それぞれの会社で掲げられている理念とともに大事にしてもらいたいと思っています。
M&Aの際に譲渡側の経営者が最も気にかけるのは、「自分が会社を離れた後、社員たちはどうなるのか」ということです。そのためトップ面談では私の考えを率直に伝え、引き継いだ社員が安心して働き続けられるように、人の可能性を活かす教育や採用を何より大事にしています。弊社ではM&Aを通じて仲間入りする企業が多く、引き継いだ社員の方が安心して活躍できる職場づくりが重要となります。
弊社が承継するのはほとんどが中小企業で、社員は中途採用の方が多いため、型通りの研修や制度よりも、埋もれた才能や経験をいかに発見し活かすかが大事になると思っています。幸い、当グループには多様な業種が揃っているので、別の業種や職種に挑戦をしてみたいという社員がいる場合は、グループ内の別会社への転属も柔軟に対応できるようにしたい考えです。
当グループでは、事業承継により新たな仲間が加わることが日常的になっているので、新しい事業が加わると、役員や幹部社員も一丸となって現場に入り手伝うのも特有の文化になってきています。ブルーベリーやオリーブの収穫に取締役が参加したり、キッチンカーで販売を行うのが常務だったりと役職関係なく、手が空いている人が率先して動いてくれるので助かっています。
社内ではよく「次はどんな会社が入るんですか」と聞かれるほどのペースで承継を進めているので、社員も会社としても絶えずチャレンジできる環境となってきています。このチャレンジが、それぞれの人財の中に眠っていたスキルや経験を掘り起こすきっかけにもなります。「何か面白そうなことをしている会社だ」だと感じて入社する社員も増えており、多角化と社員一人ひとりの働きがいにもつながっていると実感しています。
誠実な目で良縁を見極め新たな価値を創出
弊社は事業承継M&Aを通じて着実に成長を遂げてきました。グループ内では、異業種の拠点同士の連携も進み、非常にいい効果が出てきています。
グループ全体の成長とともに、M&A戦略も次のステージへと移行しています。現在は、事業承継によって業種や規模などの横軸が充分広がったので、今後は売上や利益などの縦軸を伸ばすために、シナジーや将来性を見据えた拠点の拡充と組織の質的向上を両立させていきます。
今後、承継の対象としていきたい企業の規模としては、物流業の場合は概ね10億以上の企業を目安にしています。拠点展開も「広く」から「深く」へと軸足を移し、シナジーが見込める地域に集中投資する方針です。
M&Aは、企業同士が協力し合いながら成長していく手段であり、事業を受け入れる側の会社が承継先と同じ目線になり、懐深く付き合っていくことが大事だと思っています。異業種とのアライアンスを強化することで、新たなビジネスモデルの創出にも挑みます。これからも「家族」のような企業文化を大切にしながら、社員、取引先、地域社会にとって価値のある企業を目指していきます。
会社概要
社名 | 磐栄ホールディングス株式会社 |
創立年 | 1961年 |
代表者名 | 代表取締役 村田 裕之 |
URL |
https://www.ban-ei.co.jp/
|
本社住所 |
〒971-8183 |
事業内容 | 一般貨物自動車運送事業/農業/倉庫業/植物工場事業/通関業/酒造業/国際複合一貫輸送業/林業/産業廃棄物中間処理業/木製品製造業/産業廃棄物収集運搬業/薬局事業/石油製品卸売業/医療コーディネーター業/石油製品小売業/茶・茶原料の輸出入業/太陽光発電事業/人材派遣業/風力発電事業/観光遊覧船事業 |
事業エリア |
東京本部 〒110-0005 |
関連会社 |

会社沿革
1961年 | 磐栄運送株式会社設立 |
2011年 | 東日本大震災後、関東地区の拠点網整備に取り掛かる |
2013年 | 太陽光発電事業開始 |
2014年 | 磐栄グループとして『M&A』第一号となる「エムケー物流株式会社」を買収 磐林実業株式会社を設立 |
2016年 | 総合物流企業として、純粋持株会社 磐栄ホールディングス株式会社を設立 共同事業_ビーイーロジ協同組合を設立 「農業法人_磐栄アグリカルチャー」を設立して工場内野菜の生産事業を開始 |
2017年 | 風力発電事業大手開発株式会社との共同事業開始 |
2018年 | 風力発電開発事業会社として「ふくねっと合同会社」を設立 東京都台東区へ磐栄ホールディングス株式会社の「東京本部」を設置 清酒製造免許を取得_磐栄運送株式会社諏訪御湖鶴酒造場を開始 M&Aによるガソリンスタンド事業「ウタガワ」を開始 「いわきオリーブ」の運営を開始 |
2020年 | M&A専門会社としてBHCパートナーズを設立 磐栄ホールディングス株式会社が中国天津に合弁会社を設立 M&Aによる通関事業を開始 日本最大級の卵子提供・代理出産のエージェンシーである「株式会社メディブリッジ」をM&A 薬局事業として「KMT㈱コロ薬局」を開業 |
2021年 | 諏訪御湖鶴酒造場の「御湖鶴」IWCで世界一の<純米吟醸トロフィー<SAKE部門>最高賞<チャンピオン・サケ>受賞 いわきFC、磐栄ホールディングス株式会社とトップパートナー契約を締結 小名浜ディクルーズの運営を開始 |
2022年 | M&Aによるブルーベリー農園いわき市開始 M&Aによる木工製品作成会社いわき市開始 M&Aによる日本で一番古い江戸時代茶の輸出業者「ヘリヤ商会」を静岡で開始 海外取引の拡大を目的として「BHCグローバル」を設立 株式会社猪苗代観光船の一部株式取得 |
2023年 | 「株式会社ヤマコー」M&Aによるプラダン事業を開始 「株式会社ホップジャパン」一部株式取得、クラフトビール醸造販売業を開始 物流事業会社を束ねる中間法人会社「BHCロジ株式会社」を設立 |
2024年 | 「 株式会社小島製作所」をM&Aにより産業用機械設備製造業を開始 「共栄運輸グループ」をM&A、東北エリアの拡大を図る 「株式会社モリビューティーコーポレーション」を M&A、美容業、美容商品販売業に参入 「BHCフードサービス株式会社」を設立 |
公開日:2025/04/21
※本記事の内容および所属名称は2025年4月現在のものです。現在の情報とは異なる場合があります。
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