神奈川・藤沢市
神奈川 ・ 藤沢市
経営再建に成功した
株式会社さんこうどう
印刷業から生まれ変わり湘南地域の総合商社を目指す湘南の発信基地
経営理念
さんこうどうは全従業員の物心両面の幸福を追求するとともに
湘南地域の発展と未来を創造する
夢と責任ある社会の実現を目指します
■ミッション
湘南の地域経済を活性化し 地域の魅力を高めることに貢献します
■ビジョン
湘南の魅力を発信・共有する かけがえのないツールにさんこうどうはなります
■スタイル
- 利益を追求する
公明正大な利益を追求し、売上を極大に、経費を極小にすることで、会社が発展します。 - 基本にたちかえる
複雑に考えるのではなく、シンプルに考えることで、より本質・真理が見えてきます。 - 利他の心をもつ
自己中心でいるのではなく、他者を尊重し考えることで、関係を良好にし、良い方向へ進めます。 - 先を見据える
今ばかりに目をむけることなく、長期的視点をもつことで、自己成長することができます - 「なぜ」を意識する
何事にも疑問を持ち、改善・改良を重ねることで、より良いものを創ることができます。 - 努力し続ける
現状に満足せず、成長し続けようとすることで、できないをできるにすることができます。 - 謙虚でいる
過信することなく、周りの意見や話に学ぶ姿勢をもつことで、信頼につながります。 - 前向きに行動する
逆境に立たせれても悲観的に捉えることなく、明るく・プラスに捉えることで、より人生が豊かになります。 - ベクトルを合わせる
自分軸で物事を考えるのではなく、全員が一丸となることで、大きな成果につながります。
代表者メッセージ
さんこうどうは、湘南地域に根ざし、地域社会の発展に貢献することを経営理念として掲げています。
自然豊かで文化やスポーツの魅力にあふれた素晴らしいまち「湘南」を皆さまにもっと知っていただきたいと考えています。
さんこうどうは、地域のイベントに協賛したり魅力を発信することで、この湘南地域がより発展するように日々努力しております。印刷物を通じて地域社会に貢献するだけでなく、最新の技術を積極的に取り入れることで、メタバースやVR などを活用し、『印刷会社』という定義から『湘南地域の総合商社』として事業を再定義し、さらなる地域社会の発展に貢献していく考えです。
たくさんの方に湘南の魅力を伝え、まちへの訪問を促したり、湘南地域で暮らす人々により豊かな生活を支援することで地域社会に貢献してまいります。
『さんこうどう』を支えてくださるお客様や湘南地域のみなさまに深く感謝申し上げます。今後も地域の未来を創造し、夢と責任ある社会の実現を目指してまいります。
代表取締役 石川 純平
私たちのこだわり
木版印刷を始めた初代、戦争経て業績を伸ばした2代目、3代目
弊社は、1885年に初代の川上久兵衛が創業した、旧藤沢町川岸通りの三光堂印刷所が原点です。現会長である川上彰久の曾祖父にあたる初代は、個人事業として木版印刷を行っており、大八車(だいはちぐるま)に印刷物を載せて納品に回っていました。初代が初めて請け負った仕事は近隣の神社のお札の印刷だったそうです。
初代の川上久兵衛は、印刷業だけではなく、銀行の創設や海岸線の別荘地開発にも乗り出し、藤沢郵便局の2代目郵便局長を務めるなど、幅広い分野で商才を発揮しました。教科書や文房具の卸商をしていた時もあり、印刷の質の高さが評価され受注が増え始めたため、事業を一本化して「三光堂印刷所」の屋号を掲げることにしたそうです。屋号の由来は伝わっていませんが、4代目は「三光」は太陽、月、星を表していると解釈しています。自分の名前を屋号にすることが多かった時代に、あえて恒久的なシンボルを社名に取り入れた初代は、とてもセンスの良い方だったのだろうと思います。
明治から大正になり、1923年に2代目の川上久次が代表となった頃には、藤沢、茅ヶ崎、寒川、大和といった旧高座郡の役所の広報誌などを一手に請け負うようになりました。会社組織も個人経営から株式会社三光堂印刷所へと改組し、順調に業績を伸ばしていきました。
戦中・戦後の紙不足を乗り越え、1949年に2代目川上久次を襲名した3代目の時代には、印刷業が最盛期を迎え、経営も安定するようになりました。3代目は婿養子であり、印刷業のことは何もわからない状態から入ったそうです。当時は番頭さんが2、3人いて、3代目は初めのうちは何も仕事をさせてもらえず、歴史ある弊社の中でベテランの先輩にもまれながら、家業の中で少しずつ後継者としての立ち位置を確立していきました。
修行先で最先端の印刷技術を学び、改革を進めた4代目
現会長であり4代目の川上彰久は、1950年に3代目のもとに生まれました。親子間の性格や考え方にすれ違いはあったものの、4代目は家業を継ぐことに抵抗はなく、大学卒業後は東京にある印刷会社で3年間の修行を積み、最新の印刷機を使ったオフセット印刷の技術を学びました。修行先の社長は、最新の機械があればすぐ導入し、全国の印刷所の後継者を預かり育てるなど、常に業界の最先端を走り続けているような方でした。4代目は他社の後継者とともに修行先の現場で3年間鍛えられたそうです。
しかし4代目が修行を終えて戻ってみると、昔ながらの活版印刷を続けている家業がとても時代遅れのように感じられたそうです。3代目は4代目のためにオフセット印刷機を導入し、印刷の作業効率は上がりましたが、職人の方々にしてみれば機械に仕事を奪われる形になってしまい冷たく当たられるなど、後継者として間に挟まれ苦労することも多かったそうです。また広告の媒体が紙からインターネットに移り変わる中で、弊社の経営状態も厳しくなっていきました。ある日の朝礼で突然4代目を社長に指名し、1988年に4代目が家業を引き継ぎました。その1か月後に3代目は病に倒れ、3か月入院しました。
1997年には、新社屋の建設と移転を行いました。2008年には社名を「株式会社さんこうどう」と改名して会社としての変化を可視化し、「印刷」の文字も外すことで印刷業に留まらず挑戦し続ける意志を表現するなど、会社全体で新体制への移行を推し進めていきました。
事業としては、約4,500の企業・団体の印刷業務を請け負い、印刷業務をはじめ原稿作成や写真撮影、キャラクターデザイン、インターネット事業など、広告・宣伝の事業領域へと幅を広げ、多角化を進めていきました。しかし、紙からデジタルへの移行が進む中で、業界全体での原材料の高騰から製造コストも増加するようになりました。2020年からはコロナ禍による外出の自粛が続き、イベントがすべて中止になり、イベント関連の受注が全く無くなったことから業績が急激に悪化し、2年間で4,000万円の赤字を負うことになってしまいました。借金の返済も難しくなってきていたことから、もう会社を続けることはできないだろうと思っていたところ、地元の横浜銀行を通じて、M&Aの打診の声がかかったそうです。
老舗封筒総合メーカー「ツバメ工業」が引き継ぎを決断
M&Aでさんこうどうの引き継ぎを指名したのは、香川県の老舗封筒総合メーカー「ツバメ工業株式会社」で東京支店長を務め、さんこうどうの現社長でもある私です。ツバメ工業は2019年からM&Aに力を入れており、事業領域が近い企業を探していました。初めてのM&Aは他の印刷業者でしたが、社長が亡くなり、その方の葬儀の席で4代目と会いました。故人は4代目にとっての先輩であり、4代目と私は互いに面識はなかったため、その時は名刺交換と挨拶を済ませた程度でした。
その後、M&Aの譲り手企業を探していくうちに、さんこうどうが候補に挙がりました。人を通じて遠方の会社とご縁が生まれたことは不思議でしたが、4代目の地域に根差した経営、信頼ある取引関係などを知るにつれ、何とかして積み上げてきたを地域に残していきたいと思うようになっていきました。さんこうどうは財務的には赤字でしたが、ツバメ工業の社長である父は、印刷とWebを連動させた新たなサービスが展開できれば確実に立て直しはできると考え、さんこうどうを引き継ぐ決断をしました。会社の歴史と社員の未来を引き継ぐ覚悟をもって、さんこうどうの5代目となり、次の世代により成長した会社を繋いでいきたいと強く思いました。
5代目社長・石川純平が経営の抜本的な改革に着手
事業譲渡は2021年12月24日に決まり、そのタイミングで5代目社長に就任しました。倒産の不安を抱え続けていた4代目としては肩の荷が下りたようで「正直なところほっとした。私にとっては最高のクリスマスプレゼントだった」と話しています。一方、さんこうどうの社員にとっては、長い歴史の中で創業家以外の人間が代表となるのは初めてのことです。せっかくの年末休暇を会社のことで台無しにしたくないと考え、事業引継ぎの公表は年始に行うことにしました。
年明け以降は、不安を抱える社員の疑問に答え、安心してもらえるようにと、一人ひとりと個別に話をする時間を持つことにしました。社員の中には戸惑いを隠せない方もいましたが、各社員の仕事内容や思いを聞き出し、同じ方向に向かって頑張っていけるように丁寧な声かけに努めました。併せて、経営の抜本的な改革に乗り出しました。経営の健全化のため、非効率だった工場部分を整理して、営業とデザインに特化するなど、一気に変革を推し進めていきました。急な方針転換についていけず、当時30人いた社員のうち20人が退職してしまい、営業職は4人全員が辞めてしまったため私が補欠として営業に入るなど、心身が削られるような苦しい時期もありました。社内が落ち着かず、一時期は親会社の父に頭を下げに行かなければならないと覚悟をしましたが、統合から半年を超えた頃には業績が徐々に安定するようになり、人も少しずつ集まり始め、1年程で黒字化することができました。
私にとって最も幸運だったのは、4代目が統合前から私の考えや方針に理解を示し、快く相談に乗っていただけたことです。私は4代目が構想していたことを実現しただけだと思っていますが、4代目からは「長い歴史がある同族経営の会社には多くのしがらみがあり、外部の人だったからこそ成し得たのだと思う」というお話をいただいています。
多くの退職者を出してしまったことはとても残念でしたが、残ってくれた社員のためにも、歴代社長の功績を残していくためにも、会社を成長させていきたいと思っています。
企画デザインから印刷までカバーするユーザー目線の総合印刷へ
弊社の特長は、売上のほぼ100%が地域の企業や個人からの直請けであること、小規模ながら企画デザインから印刷までをワンストップで提供できるところです。小さな印刷所は、大手印刷業者の下請として送られてきたデータをただ印刷するだけという会社も少なくありません。弊社では、長年の歴史により築かれたネットワークに加えて新規開拓を進め、企画や提案の領域を強化し、印刷業での経験を活かしながらお客様と創り上げる体制にしています。印刷は視覚的な表現やデザインが重要であり、社員がお客様に近い領域でお客様の意図を理解し、表現に落とし込むことができれば、より充実した商品になるだろうと考えました。
集客に繋がるチラシのや、読み手に伝わるパンフレットのデザイン提案などはもちろん、Webサイトや動画の制作、それらの導入サポートまで、広告・宣伝に関する幅広いご要望に寄り添える点が強みです。一つひとつの仕事に誠心誠意で取り組むうちに、ホームページ制作を請け負ったお客様から「今度は動画を作りたい」「お店の看板をリニューアルしたい」と新たなご相談もいただけるようになり、右肩上がりの成長を続けることができています。デザイン領域に力を入れ始めたのは4代目であり、素地があったからこそ事業として展開できたのだろうと思っています。
社員間の交流を促進する職場環境と「湘南グルメサーフィン」
現在の社員は21人で、うち10人はデザイナーです。20代から70代まで年齢幅が広く、女性は7、8割となっています。新しい方針に馴染めず反発する社員もいて、厳しい意見を言わざるを得ない場面もありましたが、それでも働きたいと思ってくれた意欲ある社員が残ってくれています。
社員との1対1のミーティングは、弊社を引き継いだ月から現在まで、2か月に1回ほどのペースで続けることができています。私がM&Aで引き継いだ会社は他にも3社あり、全ての社員の意見を受けとめるには気力と体力が必要であり、とても大変ですが、社員の声を聞くことは社長である私の義務です。話し合いにより、上司と部下の価値観の違いや業務上の問題点などが明らかになることもある良い機会でもあるので、可能な限り続けていきたいと思っています。
2023年4月には本社を移転し、社員間の交流を促進するためオフィスをワンフロアにしました。以前は部署ごとに部屋が分かれており、社員間にも溝があるように感じましたが、コミュニケーションがとりやすくなったことで社員の雰囲気も良くなってきていると実感しています。
現在は、さらに社員間の交流を促進するため、湘南と藤沢の魅力を発信する情報発信プロジェクト「湘南グルメサーフィン」を始めたところです。これまでは対外的に発信できる情報がなかったので、まずは全員の足を使って地域の情報を集めようという趣旨で始まりました。くじ引きで選ばれた社員2人に取材とランチに行ってもらい、記事化をして週1回更新しています。現在の社員数であれば2カ月に1回は当たる可能性があり、社員は次にどこを紹介をするかを社員が意識するようになるはずです。何となく通り過ぎていた店や湘南のいいところにも目を向けられるようになることで、メディアとしての目線を養うことができればと思っています。情報の充実と更新100回達成を目標に、2年間は続けていきたいところです。
湘南は、海や山の自然が豊かで、東京まで電車一本で通える利便性もいい地域です。弊社のある藤沢市はのんびりしていて地域の人柄が好く、地元で経済を回していこうという熱意を感じます。しかし地元の人は意外と地域の魅力には気付いておらず、4代目によると、湘南の人は地元愛を自ら発信し表現することがあまり得意ではないからだそうです。私たちが発信することで、湘南の良さを県外の方だけではなく、地元の方が胸を張って自慢できるようになってほしいと思っています。
社員が話し合い決めた理念へと刷新
これまでの理念は「迅速・丁寧・親切のさんこうどう」でしたが、社員にはあまり浸透しておらず、2023年の本社移転を機に経営理念を刷新することにしました。弊社で働く社員たちが話し合って決めた方が、より適した言葉になり、愛着も湧くだろうと考え、若手を中心とした社員10人に1か月を期限として元となる文章の案出しを任せることにしました。私が考えた草案を元に何度も打合せを重ね、方針がずれそうなときは方向修正を行い、意見がまとまってからは他の社員にも共有して改善案をもらい、完成しました。HPにもアップし、毎日全員で読むことで、理念が浸透し、社員として個人としての意見を発信できるようにしていきたいと思っています。
意見出しでは、若手社員が自発的に動き、形にしてくれたことが嬉しく、任せてよかったと思っています。若手が頑張っているとベテラン社員も前向きになり、雰囲気も活気づくようになったように感じます。
150周年を見据え湘南地域の総合商社を目指す
弊社では、初代が創業した明治時代から、大正、昭和、平成、令和と5つの元号を経て地域とともに歩み、地域に深く根ざしてきました。印刷業界に広く貢献した功績が認められ、3代目は1992年に勲五等瑞宝章、4代目は2020年に旭日双光章を受章し、二代続けての受章となっています。4代目は、会長となった現在も藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町を牽引する藤沢法人会の相談役(前会長)を務めており、経営者が社会活動に前向きに取り組んでからこそ、弊社もここまで継続できたのだろうと思っています。
弊社は、12年後には150周年という大きな節目を迎えます。30年後、50年後まで見据え、印刷業にとどまらない「湘南地域の総合商社」を目指しています。地域にとってかけがえのない会社になることが弊社の最大の目標です。歴史も大事にしながら、より価値ある表現を求め、最新の技術も取り入れていきたいと考えています。
近年、大手では、印刷で培った視覚的な表現技術をデジタル領域に応用し、VR映像やデジタルアーカイブの制作、電子機器の開発・製造にまで乗り出す企業も出てきています。弊社でも社員が先端技術に触れる機会をつくるため、私が個人で購入したVRを体験し、コメントを書いてもらうといった取り組みを行っています。今後はVRやメタバースなどの表現の手法を学び取り入れながら事業領域を広げ、湘南の魅力を発信して藤沢の定住者を増やし、地域経済を豊かにしたいと思っています。目標に向かいチャレンジし続ける新体制を対外的にも打ち出すため、HPの刷新も行いました。
また、微力ながら湘南近隣の地域ブランディングに繋がるお手伝いをしたいと考え、事業を活かした取り組みを始めました。4代目によると、湘南の人は地元の良さを自ら発信し表現することがあまり得意ではないそうで、手の届かない部分を弊社で補うことができたらと考えています。
最近では、鎌倉市が舞台の中心となったNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の観光パンフレット等に、弊社のデザイナーが制作したイメージキャラクターが採用されています。看板やのぼりなど、印刷業の周辺領域の相談も多くなってきているので、印刷する素材や物の形でもお客様の想いを表現できるように、総合商社としてカバーできるようにしていきたい考えです。
木版印刷を始めた初代、戦争経て業績を伸ばした2代目、3代目
弊社は、1885年に初代の川上久兵衛が創業した、旧藤沢町川岸通りの三光堂印刷所が原点です。現会長である川上彰久の曾祖父にあたる初代は、個人事業として木版印刷を行っており、大八車(だいはちぐるま)に印刷物を載せて納品に回っていました。初代が初めて請け負った仕事は近隣の神社のお札の印刷だったそうです。
初代の川上久兵衛は、印刷業だけではなく、銀行の創設や海岸線の別荘地開発にも乗り出し、藤沢郵便局の2代目郵便局長を務めるなど、幅広い分野で商才を発揮しました。教科書や文房具の卸商をしていた時もあり、印刷の質の高さが評価され受注が増え始めたため、事業を一本化して「三光堂印刷所」の屋号を掲げることにしたそうです。屋号の由来は伝わっていませんが、4代目は「三光」は太陽、月、星を表していると解釈しています。自分の名前を屋号にすることが多かった時代に、あえて恒久的なシンボルを社名に取り入れた初代は、とてもセンスの良い方だったのだろうと思います。
明治から大正になり、1923年に2代目の川上久次が代表となった頃には、藤沢、茅ヶ崎、寒川、大和といった旧高座郡の役所の広報誌などを一手に請け負うようになりました。会社組織も個人経営から株式会社三光堂印刷所へと改組し、順調に業績を伸ばしていきました。
戦中・戦後の紙不足を乗り越え、1949年に2代目川上久次を襲名した3代目の時代には、印刷業が最盛期を迎え、経営も安定するようになりました。3代目は婿養子であり、印刷業のことは何もわからない状態から入ったそうです。当時は番頭さんが2、3人いて、3代目は初めのうちは何も仕事をさせてもらえず、歴史ある弊社の中でベテランの先輩にもまれながら、家業の中で少しずつ後継者としての立ち位置を確立していきました。
修行先で最先端の印刷技術を学び、改革を進めた4代目
現会長であり4代目の川上彰久は、1950年に3代目のもとに生まれました。親子間の性格や考え方にすれ違いはあったものの、4代目は家業を継ぐことに抵抗はなく、大学卒業後は東京にある印刷会社で3年間の修行を積み、最新の印刷機を使ったオフセット印刷の技術を学びました。修行先の社長は、最新の機械があればすぐ導入し、全国の印刷所の後継者を預かり育てるなど、常に業界の最先端を走り続けているような方でした。4代目は他社の後継者とともに修行先の現場で3年間鍛えられたそうです。
しかし4代目が修行を終えて戻ってみると、昔ながらの活版印刷を続けている家業がとても時代遅れのように感じられたそうです。3代目は4代目のためにオフセット印刷機を導入し、印刷の作業効率は上がりましたが、職人の方々にしてみれば機械に仕事を奪われる形になってしまい冷たく当たられるなど、後継者として間に挟まれ苦労することも多かったそうです。また広告の媒体が紙からインターネットに移り変わる中で、弊社の経営状態も厳しくなっていきました。ある日の朝礼で突然4代目を社長に指名し、1988年に4代目が家業を引き継ぎました。その1か月後に3代目は病に倒れ、3か月入院しました。
1997年には、新社屋の建設と移転を行いました。2008年には社名を「株式会社さんこうどう」と改名して会社としての変化を可視化し、「印刷」の文字も外すことで印刷業に留まらず挑戦し続ける意志を表現するなど、会社全体で新体制への移行を推し進めていきました。
事業としては、約4,500の企業・団体の印刷業務を請け負い、印刷業務をはじめ原稿作成や写真撮影、キャラクターデザイン、インターネット事業など、広告・宣伝の事業領域へと幅を広げ、多角化を進めていきました。しかし、紙からデジタルへの移行が進む中で、業界全体での原材料の高騰から製造コストも増加するようになりました。2020年からはコロナ禍による外出の自粛が続き、イベントがすべて中止になり、イベント関連の受注が全く無くなったことから業績が急激に悪化し、2年間で4,000万円の赤字を負うことになってしまいました。借金の返済も難しくなってきていたことから、もう会社を続けることはできないだろうと思っていたところ、地元の横浜銀行を通じて、M&Aの打診の声がかかったそうです。
老舗封筒総合メーカー「ツバメ工業」が引き継ぎを決断
M&Aでさんこうどうの引き継ぎを指名したのは、香川県の老舗封筒総合メーカー「ツバメ工業株式会社」で東京支店長を務め、さんこうどうの現社長でもある私です。ツバメ工業は2019年からM&Aに力を入れており、事業領域が近い企業を探していました。初めてのM&Aは他の印刷業者でしたが、社長が亡くなり、その方の葬儀の席で4代目と会いました。故人は4代目にとっての先輩であり、4代目と私は互いに面識はなかったため、その時は名刺交換と挨拶を済ませた程度でした。
その後、M&Aの譲り手企業を探していくうちに、さんこうどうが候補に挙がりました。人を通じて遠方の会社とご縁が生まれたことは不思議でしたが、4代目の地域に根差した経営、信頼ある取引関係などを知るにつれ、何とかして積み上げてきたを地域に残していきたいと思うようになっていきました。さんこうどうは財務的には赤字でしたが、ツバメ工業の社長である父は、印刷とWebを連動させた新たなサービスが展開できれば確実に立て直しはできると考え、さんこうどうを引き継ぐ決断をしました。会社の歴史と社員の未来を引き継ぐ覚悟をもって、さんこうどうの5代目となり、次の世代により成長した会社を繋いでいきたいと強く思いました。
5代目社長・石川純平が経営の抜本的な改革に着手
事業譲渡は2021年12月24日に決まり、そのタイミングで5代目社長に就任しました。倒産の不安を抱え続けていた4代目としては肩の荷が下りたようで「正直なところほっとした。私にとっては最高のクリスマスプレゼントだった」と話しています。一方、さんこうどうの社員にとっては、長い歴史の中で創業家以外の人間が代表となるのは初めてのことです。せっかくの年末休暇を会社のことで台無しにしたくないと考え、事業引継ぎの公表は年始に行うことにしました。
年明け以降は、不安を抱える社員の疑問に答え、安心してもらえるようにと、一人ひとりと個別に話をする時間を持つことにしました。社員の中には戸惑いを隠せない方もいましたが、各社員の仕事内容や思いを聞き出し、同じ方向に向かって頑張っていけるように丁寧な声かけに努めました。併せて、経営の抜本的な改革に乗り出しました。経営の健全化のため、非効率だった工場部分を整理して、営業とデザインに特化するなど、一気に変革を推し進めていきました。急な方針転換についていけず、当時30人いた社員のうち20人が退職してしまい、営業職は4人全員が辞めてしまったため私が補欠として営業に入るなど、心身が削られるような苦しい時期もありました。社内が落ち着かず、一時期は親会社の父に頭を下げに行かなければならないと覚悟をしましたが、統合から半年を超えた頃には業績が徐々に安定するようになり、人も少しずつ集まり始め、1年程で黒字化することができました。
私にとって最も幸運だったのは、4代目が統合前から私の考えや方針に理解を示し、快く相談に乗っていただけたことです。私は4代目が構想していたことを実現しただけだと思っていますが、4代目からは「長い歴史がある同族経営の会社には多くのしがらみがあり、外部の人だったからこそ成し得たのだと思う」というお話をいただいています。
多くの退職者を出してしまったことはとても残念でしたが、残ってくれた社員のためにも、歴代社長の功績を残していくためにも、会社を成長させていきたいと思っています。
企画デザインから印刷までカバーするユーザー目線の総合印刷へ
弊社の特長は、売上のほぼ100%が地域の企業や個人からの直請けであること、小規模ながら企画デザインから印刷までをワンストップで提供できるところです。小さな印刷所は、大手印刷業者の下請として送られてきたデータをただ印刷するだけという会社も少なくありません。弊社では、長年の歴史により築かれたネットワークに加えて新規開拓を進め、企画や提案の領域を強化し、印刷業での経験を活かしながらお客様と創り上げる体制にしています。印刷は視覚的な表現やデザインが重要であり、社員がお客様に近い領域でお客様の意図を理解し、表現に落とし込むことができれば、より充実した商品になるだろうと考えました。
集客に繋がるチラシのや、読み手に伝わるパンフレットのデザイン提案などはもちろん、Webサイトや動画の制作、それらの導入サポートまで、広告・宣伝に関する幅広いご要望に寄り添える点が強みです。一つひとつの仕事に誠心誠意で取り組むうちに、ホームページ制作を請け負ったお客様から「今度は動画を作りたい」「お店の看板をリニューアルしたい」と新たなご相談もいただけるようになり、右肩上がりの成長を続けることができています。デザイン領域に力を入れ始めたのは4代目であり、素地があったからこそ事業として展開できたのだろうと思っています。
社員間の交流を促進する職場環境と「湘南グルメサーフィン」
現在の社員は21人で、うち10人はデザイナーです。20代から70代まで年齢幅が広く、女性は7、8割となっています。新しい方針に馴染めず反発する社員もいて、厳しい意見を言わざるを得ない場面もありましたが、それでも働きたいと思ってくれた意欲ある社員が残ってくれています。
社員との1対1のミーティングは、弊社を引き継いだ月から現在まで、2か月に1回ほどのペースで続けることができています。私がM&Aで引き継いだ会社は他にも3社あり、全ての社員の意見を受けとめるには気力と体力が必要であり、とても大変ですが、社員の声を聞くことは社長である私の義務です。話し合いにより、上司と部下の価値観の違いや業務上の問題点などが明らかになることもある良い機会でもあるので、可能な限り続けていきたいと思っています。
2023年4月には本社を移転し、社員間の交流を促進するためオフィスをワンフロアにしました。以前は部署ごとに部屋が分かれており、社員間にも溝があるように感じましたが、コミュニケーションがとりやすくなったことで社員の雰囲気も良くなってきていると実感しています。
現在は、さらに社員間の交流を促進するため、湘南と藤沢の魅力を発信する情報発信プロジェクト「湘南グルメサーフィン」を始めたところです。これまでは対外的に発信できる情報がなかったので、まずは全員の足を使って地域の情報を集めようという趣旨で始まりました。くじ引きで選ばれた社員2人に取材とランチに行ってもらい、記事化をして週1回更新しています。現在の社員数であれば2カ月に1回は当たる可能性があり、社員は次にどこを紹介をするかを社員が意識するようになるはずです。何となく通り過ぎていた店や湘南のいいところにも目を向けられるようになることで、メディアとしての目線を養うことができればと思っています。情報の充実と更新100回達成を目標に、2年間は続けていきたいところです。
湘南は、海や山の自然が豊かで、東京まで電車一本で通える利便性もいい地域です。弊社のある藤沢市はのんびりしていて地域の人柄が好く、地元で経済を回していこうという熱意を感じます。しかし地元の人は意外と地域の魅力には気付いておらず、4代目によると、湘南の人は地元愛を自ら発信し表現することがあまり得意ではないからだそうです。私たちが発信することで、湘南の良さを県外の方だけではなく、地元の方が胸を張って自慢できるようになってほしいと思っています。
社員が話し合い決めた理念へと刷新
これまでの理念は「迅速・丁寧・親切のさんこうどう」でしたが、社員にはあまり浸透しておらず、2023年の本社移転を機に経営理念を刷新することにしました。弊社で働く社員たちが話し合って決めた方が、より適した言葉になり、愛着も湧くだろうと考え、若手を中心とした社員10人に1か月を期限として元となる文章の案出しを任せることにしました。私が考えた草案を元に何度も打合せを重ね、方針がずれそうなときは方向修正を行い、意見がまとまってからは他の社員にも共有して改善案をもらい、完成しました。HPにもアップし、毎日全員で読むことで、理念が浸透し、社員として個人としての意見を発信できるようにしていきたいと思っています。
意見出しでは、若手社員が自発的に動き、形にしてくれたことが嬉しく、任せてよかったと思っています。若手が頑張っているとベテラン社員も前向きになり、雰囲気も活気づくようになったように感じます。
150周年を見据え湘南地域の総合商社を目指す
弊社では、初代が創業した明治時代から、大正、昭和、平成、令和と5つの元号を経て地域とともに歩み、地域に深く根ざしてきました。印刷業界に広く貢献した功績が認められ、3代目は1992年に勲五等瑞宝章、4代目は2020年に旭日双光章を受章し、二代続けての受章となっています。4代目は、会長となった現在も藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町を牽引する藤沢法人会の相談役(前会長)を務めており、経営者が社会活動に前向きに取り組んでからこそ、弊社もここまで継続できたのだろうと思っています。
弊社は、12年後には150周年という大きな節目を迎えます。30年後、50年後まで見据え、印刷業にとどまらない「湘南地域の総合商社」を目指しています。地域にとってかけがえのない会社になることが弊社の最大の目標です。歴史も大事にしながら、より価値ある表現を求め、最新の技術も取り入れていきたいと考えています。
近年、大手では、印刷で培った視覚的な表現技術をデジタル領域に応用し、VR映像やデジタルアーカイブの制作、電子機器の開発・製造にまで乗り出す企業も出てきています。弊社でも社員が先端技術に触れる機会をつくるため、私が個人で購入したVRを体験し、コメントを書いてもらうといった取り組みを行っています。今後はVRやメタバースなどの表現の手法を学び取り入れながら事業領域を広げ、湘南の魅力を発信して藤沢の定住者を増やし、地域経済を豊かにしたいと思っています。目標に向かいチャレンジし続ける新体制を対外的にも打ち出すため、HPの刷新も行いました。
また、微力ながら湘南近隣の地域ブランディングに繋がるお手伝いをしたいと考え、事業を活かした取り組みを始めました。4代目によると、湘南の人は地元の良さを自ら発信し表現することがあまり得意ではないそうで、手の届かない部分を弊社で補うことができたらと考えています。
最近では、鎌倉市が舞台の中心となったNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の観光パンフレット等に、弊社のデザイナーが制作したイメージキャラクターが採用されています。看板やのぼりなど、印刷業の周辺領域の相談も多くなってきているので、印刷する素材や物の形でもお客様の想いを表現できるように、総合商社としてカバーできるようにしていきたい考えです。
ツグナラ専門家による紹介
担当専門家:株式会社サクシード 株式会社サクシードの詳細
湘南地区を代表する地域に根差した印刷業を営む会社です。歴史ある会社の基盤と新たな取り組みが調和したサービスを実践しております。社員がそれぞれ主体となり、会社のことを考えて行動することができるチームを構築しております。
会社概要
社名 | 株式会社さんこうどう |
創立年 | 1885年 |
代表者名 | 代表取締役 石川 純平 |
資本金 | 2,000万円 |
URL |
http://www.sankodo.net/
|
本社住所 |
〒251-0052 |
事業内容 | オフセット印刷全般 デザイン 企画 |
関連会社 |
会社沿革
1885年 | 川上九兵衛が藤沢町川岸通りに個人経営として創業 |
1946年 | 合資会社に改組 |
1981年 | 資本金を300万円に増資 |
1988年 | 株式会社三光堂印刷所を、株式会社三光堂印刷と改名 川上彰久が社長に就任。川上久次は会長となる |
1996年 | 資本金1,000万円に増資 |
1997年 | 新社屋建設 |
2000年 | 資本金2,000万円に増資 |
2008年 | 株式会社三光堂印刷を、株式会社さんこうどうと改名 |
2022年 | 石川純平が社長に就任。前代表取締役社長の川上彰久は会長となる |
2023年 | 本社を現住所に移転 |
株式会社さんこうどうの経営資源引継ぎ募集情報
事業引継ぎ
神奈川県
人と会社の歴史を地域と次世代に残します
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公開日:2023/09/28 (2023/10/17修正)
※本記事の内容および所属名称は2023年10月現在のものです。現在の情報とは異なる場合があります。
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