ツグナラ
なぜ企業は人材育成に注力すべきなのか?/人財教育と事業承継(1)
2022.05.25 | 人財育成

なぜ企業は人材育成に注力すべきなのか?/人財教育と事業承継(1)

「企業が存続するためには、人財の教育が最も重要である」言葉にしてみると一見、当然のことと思えるように、企業経営において人財教育は最重要課題です。しかし実際は、業務多忙により時間や人員を割けず、なかなか教育に時間を充てられない、と感じている企業経営者・人事総務担当者様は多いのではないでしょうか。
本記事では、事業承継において、なぜ人財教育は重要なのか?というテーマを解説いたします。

「企業が存続するためには、人財の教育が最も重要である」言葉にしてみると一見、当然のことと思えるように、企業経営において人財教育は最重要課題です。しかし実際は、業務多忙により時間や人員を割けず、なかなか教育に時間を充てられない、と感じている企業経営者・人事総務担当者様は多いのではないでしょうか。
本記事では、事業承継において、なぜ人財教育は重要なのか?というテーマを解説いたします。

●連載「人財教育と事業承継」
※本記事は全5回の連載記事となります。

第1回 【本記事】

第2回 事業承継を見据えた企業の後継者育成事例

第3回 社内教育(OJT)の進め方とポイント

第4回 社外教育(Off-JT)の効果的な活用法

第5回 経営者が意識すべき人材育成における3つのポイント

企業が人財教育を行うのは、「自社の経営戦略を達成し、組織・事業を存続する」ため

企業における人財教育の目的は、下記の通りです。

「自社が目的(=経営戦略)を達成するため、あるいは自社・事業を存続させるために持っていてほしい従業員のスキル、能力を獲得させることであり、そのための学習を促進すること」

言い換えれば、企業における人財育成とは、「企業の経営活動に資する行為」であり、「組織の戦略達成」「組織・事業の存続」に寄与するためのものでなければならない、ということです。

自社が目的(=経営戦略)を達成するために、そこに見合ったスキル、能力を身につけるために行われることが人財教育ですが、同時に自社・事業を次世代に引継ぐためには、これらを若い世代に伝えていくことが必要です。

人財教育の目的を達成することができれば、次世代に自社・事業を引継ぐことが可能になる、ということです。

事業承継とは、「単なる業務の引き継ぎ」ではない

事業承継とは、自社の経営を後継者に引継ぐことです。ここでは、経営を引継ぐことになる後継者が、「経営者として」適格な人財であるかどうかが重要となります。

特に中小企業の場合、経営者の交代が行われるのは平均して25~30年に1度と言われています。すなわち、事業承継が企業に与える影響は計り知れないほど大きいものになります。

中小企業の事業承継によくあるパターンとして、先代社長が強いリーダーシップやカリスマ性をもって、企業を成長させてきたケースでは、社長が経営経験のあまりない後継者へと変わることで、組織としての求心力が失われたり、その結果として企業が向かうべき方向性を見失ったりする恐れがあります。

事業承継を行った後も継続的に自社を維持・発展させられる後継者の育成は、中小企業にとっては最重要であるといえます。

経営に必要な人財教育は、経営課題の表れ

企業における人財教育が必要となるケースは、下記の2つのパターンが考えられます。
ここでは、イメージを具体的に持っていただくために、事例を基に説明します。

パターン1)新店舗の店長を育成する
A社は栃木県を中心に小売店を多店舗展開している会社です。3ヶ月後に、群馬県でこれまでの業態に倣った新店舗を展開することを計画しています。
栃木県で培った商売のノウハウを群馬県でも展開するために、現地で店舗の経営を担う店長人財が必要となりました。
この店長人財には、周辺地域の商慣習や現地ならではのなまり(=言葉遣い)を教育する必要があります。加えて、現地で採用するスタッフの教育も必要となります。
このパターンの場合、3ヶ月後に新店舗を展開することが決まっているため、短期的かつ緊急的に人財教育を行わなければなりません。

パターン2)自社の経営幹部を育成する
B社は自社で築き上げた独自の研磨技術を有し、新商品開発力に特徴をもつメーカーです。社長は現在57歳で、10年後の自社を見据え後継者を育成したいと考えています。

当社が有する研磨技術は、自社の中核的な価値であるため、習熟に時間は必要ですが、技術力を継承するためには教育が必要です。
また、新商品開発を可能にする優秀な人財を社内に維持し続けるための教育も必要です。

このパターンの場合、10年後の自社の状況が良いものだと思えるように、中長期的に人財教育を行わなければなりません。自社の中核的な価値である技術力を維持・発展することに加え、優秀な人財を育て続けることが必要です。

このように、経営課題が明確であれば、解決策として必要な人財教育の内容も非常に明確になります。裏を返せば、経営の役に立つ人財教育というものは、自社の経営課題の表れであると捉えられるということです。

以上、3つの観点から「事業承継において、なぜ人財教育は重要なのか?」について解説させていただきました。自社を戦略的に維持・発展し、後世に託していくためには、自社の経営戦略を明確にした上で、目の前にある経営課題を解決しながら後継者を育成していくことが必要です。

今後のコラムでは、事例紹介を交えつつ、いかに社内の人財教育を行っていくのかについて紹介させていただきます。ぜひ今後もご覧いただければ幸いです。

ツグナラコンサルタントは、地域の事業承継の課題解決に向けた取り組みに加え、社外研修や社内研修計画の立案・実施もご支援しています。

社内の人材育成にお困りの際はお気軽にご相談ください。

千葉 和輝
Writer 千葉 和輝
千葉 和輝
Writer 千葉 和輝
人財育成チーム ディレクター
公認心理師 小・中学校教諭 社会教育主事有資格者 人を大切にする経営学会 団体会員
1977年岩手県盛岡市生まれ。宇都宮大学教育学部卒業後、小学校教諭、及びコンサルティング会社にて人づくりの営業及び研修講師、組織の仕組みづくりを中心に経験を積み、2021年独立。100社以上の人づくり、組織づくりのディレクション及び実務に係る。2022年4月より株式会社サクシード 人財育成チームディレクターに就任。

この著者によるコラム

© Copyright 2024 TGNR tochigi All rights reserved. "ツグナラ" and logomark / logotype is registered trademark.