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金融機関&事業承・継引継ぎ支援センターのM&A機能とは?
2022.07.22 | M&A

金融機関&事業承・継引継ぎ支援センターのM&A機能とは?

中小企業にとって身近な地域の「金融機関」と、全国に拠点のある公的機関「事業承継・引継ぎ支援センター」のM&A機能の特徴を紹介します。

中小企業にとって身近な地域の「金融機関」と、全国に拠点のある公的機関「事業承継・引継ぎ支援センター」のM&A機能の特徴を紹介します。

前回のコラムでは、地域の中小企業がM&Aの際に利用しやすい4つの窓口のうち「M&A仲介業者」について解説しました。第2回となる今回は「金融機関」「事業承継・引継ぎセンター」について解説いたします。

●連載:中小企業向けのM&A相談先はどこ?―4つの窓口を紹介―
第1回 国内M&Aの傾向と「M&A仲介会社」の特徴
第2回 本記事
第3回 地域の中小企業の可能性を広げる「M&Aプラットフォーム」のすすめ

「金融機関」「事業承継・引継ぎ支援センター」のM&A機能を活用

地域企業にとって身近な「金融機関」のM&Aアドバイザリー

地方銀行をはじめとした地域の金融機関でも、M&Aアドバイザリー業務を担当する部署が新設されるなど、M&A機能の拡充に向けた動きが活発になってきています。これまで金融機関では、M&Aは利益相反取引(複数の当事者がいる取引において一方が有利になり他方が不利益を被ること)となるため消極的な姿勢のところも多く、預金を受け入れる機関としての健全性を保つため、金融業務以外の事業開拓をすることは許されていませんでした。

しかし、融資先であり顧客でもある中小企業の後継者問題が深刻化し、さらにコロナ禍による経済停滞もあって金融機関側の変革が推し進められることとなり、金融庁は地域の経済活動を支える金融機関の収益機会を増やし経営基盤を整える目的で2021年5月に「改正銀行法」を制定しました。これにより金融機関の業務範囲の規制が緩和され、各機関の工夫次第で多様な事業拡大が可能となっています。現時点ではITシステム販売、マーケティング、登録型人材派遣の業務が可能であり、今後も事業領域は拡大されると推測されます。

こういった経緯により、各金融機関では事業領域を模索するとともに既存のネットワークにM&Aの専門性を加えた相談窓口としての機能が拡充されつつあり、地域企業の皆様が日頃お世話になっている銀行などでもこの動きは始まっています。M&Aを検討しているのであれば、取引のある銀行に相談するのも一つの手段です。情報交換する機会を多く設けるほか取引や関係性を継続する姿勢を大切にすることで、親身に相談に乗ってくれるはずです。

ただし、以下3点について注意が必要です。

①債務免除が前提となっている再生型M&Aは利益相反になる

会社の売却代金だけでは返済しきれないほど多額の借入をしている状態での買い手探しは、金融機関にとっては利益相反となり、通常は引き受けてくれません。あくまで銀行の本業は「融資」にあることを意識する必要があります。

②M&A情報管理は本部担当者が行っている

金融機関は支店毎にテリトリーがあり、それを統括する本部担当者が情報管理を行っているケースがほとんどです。M&Aに関する情報は機密性が高いため、支店担当者ですら開示されていない場合があり、本部担当者に繋いでもらえるように支店担当者、支店長と関係性を築いていくことが重要となります。

③融資取引の継続する姿勢

金融機関の本業は融資業務であり、M&Aの実施により取引先が無くなってしまうことや、金利が安いからといって大手金融機関からM&Aの資金調達をすることは地域の金融機関にとって損失に繋がるため好まれません。金融機関にM&Aの相談をする際は、自社都合で取引をやめないという姿勢が大事です。

全国に設置されている公的相談窓口「事業承継・引継ぎ支援センター」

国が設置する公的相談窓口「事業承継・引継ぎ支援センター」は、事業承継をワンストップで支援する目的で設立された機関です。第三者承継を支援してきた「事業引継ぎセンター」と、主に親族内承継を支援してきた「事業承継ネットワーク」の機能が統合され、2021年にオープンされました。同センターには、起業を志望する人材と後継者を求める事業主とのマッチングや、後継者の育成を支援する「後継者人材バンク」事業も展開しており、中小企業や小規模事業者の事業承継を多角的に支援しています。

登録や情報収集は基本的に無料のため利用しやすく、全国47都道府県に設置されていることから、各エリア内だけではなく遠隔地間のマッチングにも対応しています。寄せられる案件も多く、M&A成約件数が金融機関や専門家よりも多いセンターもあります。

また、各センターには中小企業診断士や税理士、公認会計士や金融機関のOBが在籍し、企業に合ったアドバイスや支援を受けられるほか、公的機関として中立性が徹底されていることからセカンドオピニオンとしても活用できるなど、信頼性が高いことが最大のメリットとなっています。

全国から多くの案件が寄せられる同センターで情報収集する際のポイントは、下記の通りです。自社の将来像が定まっていない場合も相談は可能ですが、膨大な案件の中から自社に合う企業を見つけ出すためには、やはり明確な展望を持ち得た方が円滑なマッチングに繋がります。

①定期的に訪れ、案件化されたばかりの意欲的な企業をチェックする

②他地域進出を検討している場合は、自社商圏だけではなく希望地域でも登録する

一方、事業承継・引継ぎセンターを利用する際の注意点としては、下記事項が挙げられます。

①取り扱う案件は売り手側の小規模企業がほとんど

②事業承継・引継ぎ支援センターは、各地域の機関や団体の連携により成り立っているため、エリアによっては支援内容が異なる場合がある

③公的機関のため案件の取捨選択がない

④限られた人員で多くの事業承継の相談を受けていることから、民間アドバイザリーのような手厚いサービスは得られにくい

事業承継・引継ぎセンターでも今後さらにM&A案件の増加が見込まれ、それに伴いサービスの拡充が必要となることから、民間アドバイザリーとの連携が強化されていく見通しです。

次回は、地域の中小企業がM&Aの際に利用しやすい4つの窓口のうち「M&Aプラットフォーム」について解説いたします。

水沼 啓幸
Writer 水沼 啓幸
水沼 啓幸
Writer 水沼 啓幸 ()
代表取締役 
中小企業診断士  MBA(経営学修士)  JMAA認定M&Aアドバイザー
2000年3月に高崎経済大学経済学部経営学科を卒業し、同年4月株式会社栃木銀行へ入行。主に、融資、法人営業を経験し、事業承継、中小企業金融に精通している。また、大学院では中小企業において今後問題化すると予想される『後継者の育成方法の研究やその支援の在り方』について深く研究する。2010年4月に財務・金融、事業承継支援を専門とするコンサルティング会社 株式会社 サクシードを設立し代表取締役に就任。2014年より日本で一番の経営人財の養成機関を目指して「とちぎ経営人財塾」を開講、次世代経営者の育成をテーマに活動し、年間80社以上の経営計画策定支援業務を行っている。2020年1月より地域の成長意欲の高い企業を地域資源としての中小企業の引き継ぎ手として登録、PRする地域特化型M&Aプラットフォームサービス「ツグナラ」をローンチ、事業承継をテーマに地域課題の解決を図るべく活動を行っている。
現在、作新学院大学 客員教授、人を大切にする経営学会 事務局次長として全国のいい会社を訪問し次世代の企業経営の在り方について研究活動を行っている。
著書に「地域一番コンサルタントになる方法」出版(同文館出版)、「キャリアを活かす!地域一番コンサルタントの成長戦略」(同文館出版)「後継者の仕事」(PHP研究所)「さらば価格競争」(商業界)共著、「日本のいい会社」地域に生きる会社力(ミネルヴァ書房)共著、「いい経営理念が会社を変える」(ラグーナ出版)「ニッポン子育てしやすい会社~人を大切にする会社は社員の子どもの数が多い~(商業界)共著、「実践ポストコロナを生き抜く術!強い会社の人を大切にする経営」(PHP研究所) 、「事業承継 買い手も売り手もうまくいくリアルノウハウ」(ビジネス社)共著、その他帝国ニュース(帝国データバンク)近代セールス(近代セールス社)等連載執筆多数。

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