2024.12.09 |
中小企業経営
「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」は、自治体への寄付に加えて企業側の社員を派遣することで、税額軽減を受けながら社員の人材育成や自治体とのパートナーシップにもつなげられる制度です。社会貢献やCSRを目標とする企業様や、協働により新たな取り組みを推進したい地方公共団体の双方にとって有益なシステムとなっています。
●連載:企業版ふるさと納税
企業版ふるさと納税①
実質負担1割の寄付で地域に貢献できる「企業版ふるさと納税」
企業版ふるさと納税②
【本記事】社員が派遣先の自治体で活躍する「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」
企業版ふるさと納税③
企業版ふるさと納税に寄付した企業が受給できる「地域雇用開発助成金」
社員が派遣先の自治体で活躍する「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」
企業版ふるさと納税(人材派遣型)とは
企業版ふるさと納税(人材派遣型)は、自治体が策定したプロジェクトへの寄付に加えて、寄付企業側の社員を自治体に派遣する制度です。この人材派遣型の制度は、税制改正後の2020年10月に創設されました。
専門的知識やノウハウをもつ企業の社員が、自治体の内部からプロジェクトを支援することで、より実践的なプロジェクトの推進が期待されています。
企業社員の派遣期間は、各プロジェクトや自治体との契約内容によって異なり、社員の待遇は派遣先の任用職員となります。
社員の受け入れ先 | 自治体、地域活性化事業を行う団体等 |
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派遣する社員の特徴 | 専門知識、ノウハウをもった人財 |
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契約期間 | 各地方公共団体との契約内容による |
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待遇 | 各地方公共団体の会計年度任用職員 |
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所轄官庁 | 内閣府 |
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寄付企業のメリット
寄付や人材派遣による企業側のメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- ①人件費を抑えつつ地域に貢献できる
- 人材派遣型の最大の特徴は、派遣した社員の給与が寄付金から拠出される点です。
寄付金は、令和6年度(2025年3月末)まで最大9割の税額控除を受けることができるので、企業側としては人件費を抑えつつ、自治体の事業に参画することができます。
自治体に派遣される社員も、従来通りの待遇でプロジェクトに携わることができます。
- ②人財育成、社会的企業としてできる
- 企業の社員は、地方公共団体の職員として地域の課題解決やまちづくりのプロジェクトに直接携わることで、市町村や県、国といった、より俯瞰的な視野を得ることができます。
産官連携による課題解決の経験を、会社側が事業に役立てていくことで”社会的企業”としての活躍も期待できます。
企業側が、社会課題の解決と収益確保の両立を継続し、ステークホルダーへの好影響を与えることで、持続可能な地域づくりにもつながります。
- ③パートナーシップの深化と新たなアイデアを得る機会を得られる
- 企業版ふるさと納税での金銭的な支援に留まらず、プロジェクトの企画・実施に企業側の社員が参画することで、産官の交流やパートナーシップ構築が期待できます。
新たな視点で取り組むことで、アイデアや新規事業が生まれる可能性があります。
プロジェクトの取り組みは、自治体のホームページなどで掲載される場合も多く、社員の活躍とプロジェクトへの挑戦が企業の認知度向上にもつながります。
活用にあたっての留意事項
企業版ふるさと納税(人材派遣型)の留意点は、寄付のみのケースと同様です。
- ①青色申告書を提出している法人であること
- 企業版ふるさと納税(人材派遣型)の税額控除が認められる企業は、青色申告を提出している法人に限られます。外国法人も対象に含まれています。
- ②寄付先からの返礼品や経済的な利益の受け渡しは禁止
- 企業版ふるさと納税は、公平性や透明性の確保のため、経済的な利益の受け渡しが禁じられています。
経済的な利益の解釈はさまざまですが、「付加価値の提供」「シナジー創出」に重きが置かれており、教育プログラムでの協働や寄付企業同士の交流会といった場の提供は許容されているようです。
- ✖️ 寄付の見返りとして補助金を受け取る
- ✖️ 換金性の高い商品を受け取る
- ◯ ホームページや広報誌で寄付企業名を公開
- ◯ 寄付企業名入りの銘板の設置
- ◯ 公正なプロセスを経た上での地方公共団体との契約
- ※物納による寄付も可能ですが、支出時に価値を換算できるものでなければならないため、内閣府からは推奨されていません。
- ③対象外の自治体がある
- 企業の本社がある自治体への寄付は対象外となっています。
地方交付税の不交付団体となっている都道府県では、受けることができません。
また、首都圏整備法で定める、既成市街地・近郊整備地帯などの市区町村への寄付は対象外となります。
- ↓企業版ふるさと納税の対象地域はこちら(内閣官房長・内閣府総合サイト「地方創生」)
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/portal/tiiki_index.html
企業版ふるさと納税(人材派遣型)の事例
- ①岡山県真庭市のケース
- 全国で初めて企業版ふるさと納税(人材派遣型)の仕組みを活用した、岡山県の両備ホールディングス株式会社は、観光分野の専門ノウハウをもつ社員の知見や発想、ネットワークを活用し、観光業の活性化を図りました。
派遣された社員の民間の視点やネットワーク、地域の観光資源を活かした取り組みが、自治体と企業のPRにつながっています。
- 真庭市 https://www.bosaitech-pf.go.jp/doc/seminar8_pdf_04.pdf
- ①島根県海士町のケース
- 企業版ふるさと納税ポータルサイト「river」に掲載されている、島根県海士町の「『活力あるしごと』を生み出すプロジェクト」では、人材派遣型の出向プログラムが紹介されています。
魅力的な仕事創出の仕組みや持続可能な経済循環を目指し、企業交流センターでの活動支援を「島留学」として、企業の社員の受け入れと活性化に向けた事業を推進しています。
企業版ふるさと納税(人材派遣型)の申請フロー
- ①寄付先の自治体を選ぶ
- 企業版ふるさと納税の対象は、国が認定した「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」のみです。
寄付先は、内閣府地方創生推進事務局のホームページやポータルサイトからも確認できます。
- 弊社サクシードが連携している、企業版ふるさと納税活用支援サービス「river」(株式会社カルティブ運営)では、寄付を受付している自治体やプロジェクトを一括検索できます。
- 寄付したい自治体を探したい場合:https://cpriver.jp/lg_search/
プロジェクトから探したい場合:https://cpriver.jp/project/
- 事業や目的、関心に合うプロジェクトを探してみましょう。
- ②地方創生事業に寄付を申し込む
- 直接寄付を申し込みたい場合は、寄付したい自治体の窓口に問い合わせて、企業版ふるさと納税の寄付申出書や事前確認書等を提出します。
必要書類を提出し、寄付金を支払うと、受領証明書が発行されます。
受領証明書に記載されている寄付金の受領日や金額は、税額控除の申告の際に必要となります。
- ③法人税・地方税を申告
- 税額の控除を受けるには、確定申告期限内に税務署に書類を提出する必要があります。
税金を申告する際は、法人税等申告書別表(地方創生応援税制)に寄付先や寄付金額などを別表に記入し、法人税等申告書や領収書、寄附証明書などの必要書類とあわせて提出します。
提出書類に問題がなければ、手続きは完了です。寄付金額に応じて、最大9割の税額控除が受けられます。
企業版ふるさと納税の疑問は、ぜひ「river」へ
自社のノウハウや社員の専門性を活かして地域貢献を目指したい企業様は、企業版ふるさと納税(人材派遣型)への参画をぜひご検討ください。
弊社サクシードが連携している、企業版ふるさと納税活用支援サービス「river」(株式会社カルティブ運営)では、企業版ふるさと納税の寄付先の検索や、セミナー情報などのお役立ち情報が掲載されております。
企業版ふるさと納税活用支援サービス「river」
https://cpriver.jp/
どのような地域支援のニーズがあるか確認したい、寄付予定の地方公共団体が企業版ふるさと納税をどのように活用しているか調べてほしい、同時に複数の自治体に寄付したいので調整してほしいなどのご要望も、併せてご相談いただけます。
ぜひご活用ください。