これからの中小企業の事業承継のあり方を読み解く連載コラムを、全4回でお届けいたします。第2回は、必要とされる地域中小企業のM&Aの条件について、事例を交えてお伝えします。
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地域中小企業のM&Aを活用した経営資源の引き継ぎが注目され始めましたが、実際お客様とお話しするとどんな内容のM&Aが理想なのかイメージできないという声を聞くことがあります。M&Aは秘密裏に行なわれますので、地域の皆さまには、案件が成約しその情報が公になった時に初めて結果として知ることになります。さらに譲受企業はそのあと成長し続けるのかどうかもクローズアップされることは少なく、何を手本にしたら良いのかイメージがつかめません。そこで、今回は理想とされる中小企業M&Aの一つの実例をご紹介します。
群馬県にある株式会社アドバンティク・レヒュース(以下、アドバンティク・レヒュース)の実例です。この会社は産業廃棄物収集運搬などの環境に係るコンサルティングビジネスを事業内容としています。
約6、7年前の売上は30億、それが今70億を超えている会社です。この急成長の理由はまさにM&Aの活用によるものですが、驚くべきことはこの会社は「意図して買収していない」というのです。
アドバンティク・レヒュースの経営理念は"全社員の幸せを通して世の中に貢献(ありがとう)の輪を広げ幸福総和No.1企業を創る"とされており、創業以来社員を大切する経営をしています。
M&Aでは買い手は一円でも安く買いたい、売り手は一円でも高く売りたいがセオリーですが、時として金額以上に重きを置いているケースがあります。売り手にとって事業売却をする上で一番の不安として多いことが社員の受け入れ体制です。アドバンティク・レヒュースの社員を大切にする経営の素晴らしさに惹かれた売り事業主は、人生をかけて育ててきた会社とその社員を"ぜひ任せたい"と相談するのです。
まさに譲渡金額には表れていない「心のM&A」が地域内同士の実例には存在します。
買い手企業はM&Aを金儲けの手段と考えてはいけません。地域に必要とされるM&Aとは、「買収」ではなく「資源を引き継ぐ」との認識を買い手企業が持つことが重要です。
アドバンティク・レヒュースの堀切社長にM&A直後に大切にしていることを尋ねると、新しく入社したメンバーの社員に対してきれいごとは言わず、自身の言葉と行動に乖離がでることがないよう言動に責任を持つとのことでした。堀切社長にとって社員は材料ではなく財産なのです。一人一人の社員の幸せへの追及は、買い手だから、売り手だからという固定概念を払拭し取り組むべきことであり、またM&A時には「地域性」や「組織文化」に配慮し、地域資源への尊重を忘れることがないよう心がけているそうです。
人口が減り続ける日本にとって人は貴重であり、それは当然ながら中小企業も同じです。つまり中小企業の事業承継やM&Aについても最後に行きつく先は"どれだけ人について考えられてその案件が動いているか"ではないでしょうか。
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