-本事例の経緯を教えてください
先方の社長とは面識が1度しかなく、その時は保有されている土地についてのお話で終わりました。しばらくして会社を閉じようと思っていて、相談に乗ってくれませんかと言われたんです。数年前に事業譲受を行なった実績もありましたし、こうしてツグナラ企業として掲載していただいていますので、そういうところから弊社について知っていただいたのかなと思っています。実はある程度話が進んだ時に先方に聞いたんです。どうして弊社だったのかと。そしたら"八下田さんはちゃんとしてるし、丁寧に引き継いでくれそうだったので"と言っていただけました。弊社は創業者が私の父ですが、創業から現在まで大切にしてきた八下田という名前を褒めていただいたことを大変嬉しく思っています。
-先方の社長はまだお若いと聞きました。なぜ引受先をさがしていたのでしょうか
そうなんです。先方は私よりも若く、ご年齢的にはまだまだこれからという印象がありました。ただ、これは経営者の年齢がきっかけではなく根本的な理由が業界にあったんです。運送業界はどんどんコンプライアンスが厳しくなっていて、昔から堅実に商売をすると損をする業界とも言われています。ちゃんと経営しているのに業界の悪しき特性により価格競争にさらされてしまうんです。もちろん弊社も先方も堅実に経営をしてきた者同士ですが、先方は今後の事を考えた時に今の規模で商売をしていくことに限界を感じたようでした。先方は他の事業もされておりましたので選択と集中の結果、今回の相談に至ったようでした。
-いわゆる逆指名ですね。面識が薄い中でのM&Aは苦労しましたか
はじめ会社を引き継いでほしいという要望をいただきましたが、それが事業のみを、いややはり会社をと二転三転していたんです。先方は弊社に相談する前に別の会社にオファーし破談になったことから様々な角度で検討されていたのだと思います。
先方は税理士の先生がアドバイザーをされていました。弊社は(株)サクシードの市川さんにアドバイザーをお願いし、具体的にどんなスキームが良いのか話し合っていきました。気になったところとしては、先方の保有資産を拝見した時に設備、主にトラックが古いことでした。事業譲受後にさらに再投資するとなると、売上から考えてもなかなか厳しいものがありました。ただ先方の事業は大変魅力的で弊社としても強みであるネットワークを活かし自社のリソースを今まで以上に活用できると考えていました。
-アドバイザーを活用した利点とはなんでしょうか
今までアドバイザーに力を借りることなく成約した事例もありますが、今回は双方の合点がいくところを探ることに難を要しました。結果、初めて相談いただいたのが2021年5月なのでクロージングまで1年かからずでしたが、アドバイザーの市川さんには様々な視点からスキームを考えていただきましたね。最終的に双方の合点がいったスキームを初めて先方の税理士の方に見ていただいたとき、なぜそうなるのかと疑問に思われていましたが、丁寧に説明を差し上げると納得されました。
具体的にはお伝えできませんが、資産と現金を弊社がもらうのか先方に残すのかといったところが論点でした。双方にアドバイザーが立つ場合、なんだか試合のような構図になってしまい、敵の悪いところを見て見方に有益な情報を得、攻撃するイメージがあります。ただ、今回アドバイザーを市川さんにお願いして改めて思ったことは、スキームを考える立場の市川さんは目の前の利益だけではなく、双方の会社と強みやより効果的なシナジー効果、そして売り手の社長のその後までを考えて提案しており成約がゴールではなくその後を見据えたスキームが重要であるということです。そこまで考え、成約に至れたことはアドバイザーを活用したおかげだと感じています。
-ここ数年で2度の経営資源引受けをされました。どのように感じていますか
人の集団が会社ですが、周りから見たら会社は会社。八下田陸運という会社が地域の中でどう見えているかを考え、地域で経営させていただいていることに感謝と責任を持ち続けることが重要だと考えています。ここ数年の事業譲受の事例はありがたいことに全て先方からのご指名です。ご指名いただいたからにはしっかり検討しなくては失礼だし、だからと言ってむやみにお引き受けするのも違います。弊社が長年築き上げてきた理念を全うできるお相手様をお引き受けすることで、結果地域の資源をお守りすることにつながればよいのかなと思っています。
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