2023年1月に沖縄県を拠点とする株式会社アイティーオージャパンが、株式会社Noteが運営してきた学校や企業向けチームビルディング研修事業を引継ぎました。アロマの製造販売事業を主業とする株式会社アイティーオージャパンは、なぜ異業種である研修事業を引継いだのでしょうか。同地域を拠点にする企業同士の事業承継を決断された、株式会社アイティーオージャパン 伊藤社長にその思いを伺いました。
株式会社Noteが、沖縄県内で運営していたチームビルディング研修事業のノウハウと顧客を、株式会社アイティーオージャパンが引継いだ形の事業承継になります。2022年6月に社長同士が初対面してからはスムーズに話が進み、2022年9月に契約締結となりました。その後、約4か月の引継ぎ期間を経て、2023年1月には晴れて株式会社アイティーオージャパンへと事業譲渡されました。
株式会社アイティーオージャパン
株式会社Note
-引継ぎのきっかけを教えてください。
今回、事業譲渡という形で引継いだのは、株式会社Noteが学校や企業向けに行ってきたチームビルディングの研修事業になります。沖縄県外から来る学校や企業向けに自然体験、人とのふれあい、観光など、沖縄ならではの体験を通してチームビルディングが行えるというのが大きな特色です。今回譲り手となった株式会社Noteのチームビルディング研修は、沖縄県内外で一定の知名度があり、私自身も存じていました。2018年頃の事業スタート以来、一時は5名の社員を抱えるほど、事業として順調に成長していましたが、2020年から突入したコロナ禍で状況が一変します。学校、企業の研修が軒並みストップしてしまい、雇用の継続が難しくなったそうです。2022年6月になる頃には、前代表が1人で運営する事業になっていました。そうしたタイミングで、株式会社Noteがチームビルディングの研修事業の引継ぎ先を探していることをM&Aのマッチングサイトで知ります。そして共通の知人を通じて、対面での面談をお願いしたのがスタートです。なお、最初から引継ぎ手としての立候補ではなく、「まずは詳しく話を聞かせてください」というスタンスでした。
-面談を行った時の先方の反応はいかがでしたか?
お声がけした時点では、既に沖縄県外の複数の企業が名乗りを挙げているというお話でした。ただ、弊社が沖縄県内の事業者であること、そして直接顔を合わせてお話しできたことで、先方は弊社なら「思いを引継いでくれる」と感じてくれたようで、引継ぎ手に選んでいただきました。
-御社が引継ごうと考えたのはどういう理由があるのでしょうか?
このお話に出会う少し前から、沖縄県内で新たな新規事業を立ち上げたいとずっと考えていました。そして事業再構築補助金の採択をきっかけにスタートさせていたのが、キャンピングカー & アウトドアアイテムレンタル事業です。その新事業を含めて弊社の既存事業といいシナジーを生み出せると考えたのがチームビルディング研修事業になります。それが最大の理由です。例えば、アロマの製造・販売事業ではワークショップを行っており、そのノウハウを研修事業にも活かせると考えました。また、キャンピングカー & アウトドアアイテムのレンタル事業では、沖縄の自然体験やアクティビティ、観光とも近い位置にあるビジネスのため、親和性が高いと判断したのも大きな理由です。
-面談後、どういう流れで引継ぎに至ったのでしょうか?
最初の面談から約4か月、2022年9月に契約締結となりました。M&A仲介業者にお願いすることなく、当事者同士で進めることができました。その後、約4か月は引継ぎ期間として前代表に協力してもらいながら、実際に5、6校の修学旅行の研修を受け入れました。そして2023年1月に正式に事業を引継ぎ、現在に至ります。
-苦労された点はございますか?
今回引継いだものが、ノウハウと顧客という目に見えないものだったのが、非常に苦労した部分です。もちろん過去の研修で使った資料の共有はいただきましたが、いわゆる感性や価値観といった部分が肝になっている部分なので難しいものがありました。前代表がどういう思いで創業したのか、どのように研修を行っていたのかなど、前代表の研修を実際に体験させてもらったり、コミュニケーションを取るなかで慎重に引継ぎを進めました。ただ、理解を深める中で全く同じものを再現していくことは難しいという結論に至り、今後は軸となるエッセンスを引継いだ上で、弊社らしさを加えていくことが最良なのではないかと感じています。前代表も弊社の経営理念を理解し、共感してくれているので、「自由に任せる」と言ってくれているのはありがたい限りです。前代表には、向こう1年間は顧問としてお付き合いいただくことになっているので、その間に新たな形を作り上げていこうと考えているところです。
-反対に引継ぎをして良かったことはどのような部分でしょうか?
もっとも大きかったのは時間の短縮です。ゼロからチームビルディング研修を立ち上げたり、お客様が集まってくるには最低でも2年程度はかかると思っていた中で、ノウハウやお客様を引継ぐことでスムーズに新事業をはじめることができました。実際、株式会社Noteが築いてきた信頼や実績のおかげで、修学旅行などで沖縄に来る学校などから継続的に研修依頼をいただける状態で引継げたことはありがたかったです。
-今後の展望は?
2023年度中はNoteのブランドを活かし、安定的に研修を受け入れながら弊社の運営スタイルを確立していきたいと考えています。現在は、基本的にリピーターとなっている学校の受け入れがメインですが、今後は、企業向けの受け入れにも積極的に力を入れていく予定です。沖縄では現在、企業の研修先として選ばれることが増えており、今後はコロナ禍前よりも増えていくのではないかという予測も出ています。そうした追い風といえる状況のなかで、海、山、川と自然がすべて揃った沖縄ならではの研修を提供していきたいと考えています。沖縄の北部にいけば、携帯電話の電波が届かないようなエリアもあるのでデジタルデトックスを兼ねた研修も面白いかもしれません。
沖縄は企業版のふるさと納税で選んでもらえることも多いので、その返礼として弊社の自然体験とチームビルディング研修をしてもらうといったことも今後は視野にいれています。さらにコロナ禍が落ち着いてきたことから海外の企業からの問い合わせも増えています。昨年はオーストラリアに本社を構える企業の研修を受け入れました。私自身、海外生活も長かったこともあり、今後は海外からのニーズを見越して英語対応のプログラムを増やしていきたいとも考えています。
-今回の引継ぎのご感想をお願いします
とてもいいご縁になりました。引継いでからも順調に売上を伸ばすこともできています。今後は組織体制を整えていくことで、さらに売上を伸ばすことができると考えています。将来的には弊社の主業であるアロマの製造販売に比肩するような弊社の大きな柱に育てていきたいと考えています。
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