会社の引継ぎを検討し始めた企業経営者にとって、大きな心配事の1つが引継ぎ後の社員の雇用や待遇がどうなるかです。リストラにあったり、冷遇されるのではないかという不安はどうしてもつきまといます。本記事では、中小企業においてM&A(事業承継)が行われた場合の社員の雇用や待遇について解説していきます。
会社の引継ぎを検討し始めた企業経営者にとって、大きな心配事の1つが引継ぎ後の社員の雇用や待遇がどうなるかです。リストラにあったり、冷遇されるのではないかという不安はどうしてもつきまといます。本記事では、中小企業においてM&A(事業承継)が行われた場合の社員の雇用や待遇について解説していきます。
何らかの理由で会社を第三者に引継ぐ検討し始めた企業経営者にとって、引継ぎ後の社員の行く末は最大の心配事だと思います。リストラされたりしないか、待遇や役職、仕事内容で冷遇されないかなど、さまざまな不安がよぎるからです。本記事では譲り手企業の経営者の視点から、円満な事業承継を行うためのポイントをまとめていきます。
M&Aによる事業承継を検討し始めた企業経営者にとって、一番大きな心配事だといえるのが、引き継ぎ後の社員の雇用や待遇に関してです。M&Aと聞くと、かつてのドラマや小説などの影響もあり、買われた(譲り手)側の企業の社員がリストラをはじめとした冷遇を受けるイメージが根強く残っているからでしょう。
実際には譲り手企業の経営者が、買い手企業に対して明確な意思表示をすることで、社員全員の雇用継続と待遇維持を前提にした事業承継の交渉は可能です。
とりわけ中小企業同士の事業承継を目的としたM&Aの場合は、買い手企業も社員の雇用継続、待遇維持を前提に考えていることも少なくありません。
中小企業において人財は直接的に会社の価値につながりますし、今の時代では新たな人財の確保も容易ではありません。事業継続を考えれば、社員にそのまま残ってもらう方が円滑な引継ぎになるからです。
では、譲り手企業の経営者はどのような点に注意してM&Aを進めていくのがいいでしょうか。社員を不安にさせることなく、引継ぎ後も安心して働き続けてもらうためにも、譲り手企業の経営者がすべきことは幾つかあります。
●譲り手企業の経営者がM&Aで気を付けるべき5つのポイント
・引継ぎの第一条件に社員の雇用継続と待遇維持を掲げる
・買い手のM&A後の経営方針をよく理解する
・買い手企業の組織文化を理解して自社との相性を検討する
・引継ぎ後、一定期間は社長自ら会社にとどまり社員をケアする
・納得できる買い手が見つかるまで探しつづける
最初にすべきことは引継ぎの第一条件に「社員の雇用継続と待遇維持」を掲げることです。譲り手側にいろいろな事情があるように、買い手側にも事情はありますが、そこに遠慮は無用です。明確な意思表示をすることで、引継ぎに向けた議論を深められます。最終的に契約書に「社員の雇用継続と待遇維持」を盛り込めば、簡単には反故にできないので安心です。
M&A後に買い手企業が引継いだ会社をどのようにしていくのかという経営方針については、契約前にしっかりと理解しておく必要があります。もう少しかみ砕くと、どういう目的でM&Aをしようとしているのか、M&Aという投資にかけた費用をどう回収していくのかという部分です。「お互いの強みを活かして新事業を立ち上げる」「一緒になることでスケールメリットや効率化が期待できる」など、納得できる合理的な理由であるかがチェックポイントになります。買い手企業とは、先方の買収希望表明後に質疑応答できたり、トップ面談を行うことになるので、そのタイミングで見極めていくことになります。
円満な事業承継にするためには、買い手企業の組織文化や社風を理解し、自社との相性を考える必要があります。例えば、譲り手企業は社員を大切にする会社であるのに対して、買い手企業が社員の健康よりも利益優先だと考えている会社だとしたら、うまくいかないことは明らかです。ここまで極端な例は少ないですが、Webサイトで経営理念を確認したり、経営者のインタビュー記事やブログなどから事前のリサーチは必須です。そしてトップ面談では、しっかりとお互いの価値観が合うかどうかを確認しましょう。
円満な事業承継を目指すなら引継ぎ後に一定期間、前経営者が会社にとどまるという選択肢もあります。買い手企業側も、社内のキーマンの引き止めや円満な引継ぎを行うために、前経営者が残ることを望むケースは珍しくありません。経営の第一線から退いていたとしても、残った社員の相談相手となり、新たな経営者との橋渡し役になるなど果たせる役割は多くあります。ただし、最終的に円満な事業承継とは次の体制に移行することなので、前経営者は、役割を終えたら速やかに対応する身を引くことも忘れてはいけません。
最後に譲り手企業の経営者にお伝えしたいのは、最終的に買い手企業を選ぶのは自分自身だということです。M&Aの現場では、幸いにも買い手9割、譲り手1割といわれるほどの「超譲り手市場」です。譲り手企業の経営者はしっかりと要望と伝え、買い手企業が引継ぎ先としてふさわしいかを検討した上で、相手をじっくりと選べることを覚えておきましょう。
ここまで円満な事業承継にしていくためには、譲り手企業の経営者がすべきことをまとめてきましたが、共通するポイントは、買い手企業および自社の社員とのコミュニケーションになります。
買い手企業に対しては、遠慮することなく要望をはっきりと伝えることが大切です。さらに双方の会社の経営理念や企業風土、企業文化などにも触れることも忘れてはいけません。
自社の社員に対しては、買い手企業について「なぜ選んだのか」は必ず伝えたいところです。経営理念に共通項がある、大切にしている価値観が近いなど、決断に至る決め手を前経営者の口から説明することで、納得してもらえることは往々にしてあります。
よくM&Aは、結婚に例えられますが、実際多くの共通点があります。価値観や目指している方向性が近い、お互いを尊重し、協力し合える、社員(家族)の理解を得られるなどが、円満なM&Aとなるかどうかのカギになるからです。
M&Aによる事業承継を検討することになった際には、その点を心にとどめておいていただければ幸いです。
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