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M&Aで成功できる社長の考え方/円満な事業承継の秘訣(3)
2023.08.07 | 事業承継

M&Aで成功できる社長の考え方/円満な事業承継の秘訣(3)

M&Aの現場では、引継ぎ手(買手)企業の社長が意思決定時に決断しきれずに破談になるケースが珍しくありません。反対に次々とM&Aを成功させている引継ぎ手企業の社長に共通するのは、意思決定時での「即断即決」です。なぜ重大な意思決定にもかかわらず「即断即決」でき、M&Aの成功に繋がっていくのか、M&Aアドバイザーとして数多くの案件に係わってき筆者が解説していきます。

M&Aの現場では、引継ぎ手(買手)企業の社長が意思決定時に決断しきれずに破談になるケースが珍しくありません。反対に次々とM&Aを成功させている引継ぎ手企業の社長に共通するのは、意思決定時での「即断即決」です。なぜ重大な意思決定にもかかわらず「即断即決」でき、M&Aの成功に繋がっていくのか、M&Aアドバイザーとして数多くの案件に係わってき筆者が解説していきます。

「このM&A案件、どうしてもリスクが気になるんだよ」。M&Aの意思決定が目前に迫ると、引継ぎ手(買手)企業の社長は、リスクや失敗を強く意識し始めて迷い出します。M&Aは経営上の重大な意思決定になるので、当然のことだと思います。意思決定には正解がなく、人財の育成状況、投資のタイミング、市場状況など、さまざまな判断材料と連動しているのでなおさらです。
しかし、M&Aで成功している社長は異なります。土壇場で迷うことはなく、「即断即決」しています。その「即断即決」ぶりに譲り手(売手)企業の社長から高い評価を得て、有利な条件でM&Aを成立させていることも珍しくありません。おまけに次々と引継ぎ相談が持ち込まれるようになり、より一層成功実績を積み上げていくという好循環を生み出しています。

●連載:円満な事業承継の秘訣 全3回
第1回 事業譲渡した社長の本音
第2回 異業種から参入した若手経営者
第3回 【本記事】

決断できない社長を生み出すM&Aの誤った認識とは?

そもそもなぜ多くの社長が土壇場で決断できなくなるのでしょうか。社長たちのお話をうかがっていると、「M&Aなら手っ取り早く儲かるのが当たり前」という認識を持っているケースが多いことに気付きます。

決断できない社長が抱きがちなM&Aの誤った認識
・M&Aはお金さえ払えばうまくいくと思っている
・譲り受けた瞬間からうまくいくと思っている
・譲り手の企業の優秀な社員が勝手にうまくやってくれると思っている

実際にM&Aを検討し始めた社長に希望条件を聞くと、「安定的に収益が上がっている案件」「事業や会社を回せる優秀な幹部がいる案件」「一定の収益がすぐに得られる案件」という要望を頂くことが多々あります。M&Aの経験がある社長ならご理解いただけると思いますが、これらの条件を満たすような理想的な案件は、滅多に出会えません。理想を掲げるのは決して悪いことではありませんが、この理想的な条件を最低限のラインだと考えてしまうと、なかなか決断できない状態に陥りやすくなると感じています。

即断即決できる社長は主体的にM&Aに臨んでいる

反対に「即断即決」できる社長の考え方はもっと主体的です。

即断即決できる社長のアプローチ
「自走していて安定的に収益が上がっている案件」
⇒自走して収益があがる事業にするにはどうすればいいだろうか
「優秀な幹部がいる案件」
⇒優秀な幹部を育成するにはどうすればいいだろうか
「一定の収益が間違いない案件」
⇒一定の収益が得られる事業にしていくには、どのような事業計画を建てるべきか

M&Aに求める理想は同じでも、どこの企業と一緒になり、自分たちは何をすべきなのか、そしてどれくらいの期間がかかるのかという視点からよく考えた上で、意思決定に臨んでいます。求めている案件を待つ受け身の姿勢ではなく、どうしたら求めている案件になるのかというスタンスで考えているのが特徴です。

即断即決できる社長の基本スタンス
・手間をかけることをいとわない
・リスクやトラブルはあって当然だと思っている
・時間がかかることを受け入れている
・譲り手企業と共に進めていく意識を持っている

また、M&A後も、いきなり利益を求めるようなことはせずに、譲り手企業とのコミュニケーションを積極的に行い、前社長や社員と協力しながら、適切な時間をかけて一緒に進めています。その結果、譲り手企業からより信頼されて、良縁になりやすくなります。

M&Aといえどもアプローチは新規事業と同じ

「M&Aなら手っ取り早く儲かるのが当たり前」という認識の社長も、自社で新規事業に取り組む場合には、そのような他力本願な考えは持たずに別のアプローチを取っていると思います。

新規事業では、どれほど入念に準備や計画をしても上手くいくかどうかは未知数ですし、トラブルやリスクは付きものです。さらに成功するまでにどれくらいの時間がかかるのかも分かりません。それでも新規事業に取り組むのは、会社が成長するために必要なアクションだと決断したからだと思います。意思決定時にいろいろと悩んでしまう社長は、ぜひM&Aも、新規事業の1つとして臨んでみてください。

はじめるだけで儲かる新規事業がないように、お金を出すだけで儲かるM&Aもありません。ただ、主体的に取り組み、譲り手企業と連携して進めた場合には、ゼロから新規事業を立ち上げるよりも短い時間と投資コストで軌道にのせられる可能性を秘めているのがM&Aの魅力です。

M&Aに対する誤った認識は早々に改め、新規事業に臨む姿勢でM&Aに取り組めば、「ぜひあなたに引継いでもらいたい」という話が増え、好循環を生み出せるはずです。

市川 優
Writer 市川 優
市川 優
Writer 市川 優
専務取締役 東京・埼玉エリア統括  
MBA(経営学修士)  JMAA認定M&Aアドバイザー 
1984年千葉県柏市生まれ。専修大学法学部卒、グロービス経営大学院卒。
地元金融機関にて、融資係、融資渉外係として勤務。融資渉外係時は、中小企業支援を中心に尽力し、4年連続で優秀渉外賞、特別賞を受賞。中小企業が持つ様々な経営課題に対しては、金融面のみの支援だけではなく総合的なコンサルティング支援が必要であると考え、現職に転職。同社のM&A事業立ち上げを経験し、2020年1月には「地域特化型M&Aプラットフォームツグナラ」を事業責任者としてサービスローンチした。2018年より執行役員、2021年に取締役に就任し、現在に至る。著書に「事業承継 買い手も売り手もうまくいくリアルノウハウ」(ビジネス社)共著。

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