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事業承継の第一歩にもなりうる「業務提携」とは?
2023.05.24 | 事業承継

事業承継の第一歩にもなりうる「業務提携」とは?

M&Aによる事業承継は、譲り手(売り手)と引継ぎ手(買い手)の双方にとって大きな決断を伴います。「この相手先で良かったのか?」という不安からは、なかなか逃れられません。人間で例えるならお見合い後に即結婚を決断するようなものです。しかし、結婚の前に「交際期間」があれば、多くのの不安は解消されるでしょう。将来的にM&Aによる事業承継を見据えている場合に、「交際期間」といえるのが「業務提携」です。本記事では、「業務提携」についてのメリット・デメリットを解説していきます。

M&Aによる事業承継は、譲り手(売り手)と引継ぎ手(買い手)の双方にとって大きな決断を伴います。「この相手先で良かったのか?」という不安からは、なかなか逃れられません。人間で例えるならお見合い後に即結婚を決断するようなものです。しかし、結婚の前に「交際期間」があれば、多くのの不安は解消されるでしょう。将来的にM&Aによる事業承継を見据えている場合に、「交際期間」といえるのが「業務提携」です。本記事では、「業務提携」についてのメリット・デメリットを解説していきます。

後継者問題を抱える中小企業にとってM&Aによる事業承継は、有効な解決手段です。ただ、譲り手(売り手)としては、「社員を大切にしてくれるのか」「会社の文化・価値観を大切にしてくれるのか」「会社を継続・成長させてくれるのか」などの不安がつきまといます。これは引継ぎ手(買い手)も同様で、「譲り手企業の社員から受け入れてもらえるのか」「両社の価値観や文化を融合していけるのか」「両社でシナジーを生み出せていけるのか」といった不安からは逃れられません。
こうした当事者企業間の不安を緩和できる取り組みが「業務提携」です。

そもそも業務提携とは何か?

「業務提携」とは、独立している2つの企業が資本関係を築くことなく、協力して事業を進めていくことを意味します。双方の強みを活かしあったり、弱みを補うことで1社では成し得なかったことを実現できるようにするのが、業務提携の目的です。

この業務提携には提携する分野によってさまざまな形態があり、一般的には「技術提携」「生産提携」「販売提携」「その他の提携」の4つに大別できます。

技術提携:提携先の技術や特許を使い新技術や新製品などを共同で開発するための提携
生産提携:提携先の設備を活用して自社の製造能力を高めるための提携
販売提携:提携先の販路やブランド、人的リソースなどを活用することで販売能力を高めるための提携
その他の提携:自治体など組んで行う包括提携、仕入れを共同で行う調達提携、配送・輸送ルートを共有する物流提携など、ニーズや業種に応じてさまざまな形がある

業務提携を事業承継を見据えたアクションと考えれば、提携先企業の強みが見い出しやすい分野で提携することや、多くの接点を持てるような形態を選ぶと良いでしょう。

業務提携のメリットとデメリット

業務提携のメリットは、まずリスクを抑えられることが挙げられます。資本関係を結ぶM&Aと比べた場合、業務提携は手間や資金を抑えることができ、取り組みやすいからです。

M&Aの一般的な手法である株式譲渡では、実施時に株式を取得するためのまとまった資金が必要になります。資金調達には相応の準備が必要になるため、どうしてもスピード感は出ません。その点、業務提携であればM&Aよりも柔軟に進められます。
さらに資本関係を結び運命共同体となるM&Aの場合は、譲り手にも引継ぎ手にも慎重な判断が求められ、業務提携以上に事前の取り決めや準備が必要です。業務提携であれば、提携分野・事業における取り決めと準備だけで済みます。
反対にデメリットは、比較的リスクが低いがゆえに、十分な検討がされないまま話が進んでしまうことがある点です。提携時に先々を見据えた契約をしておかないと、大きな判断を伴う際に責任の所在が曖昧になったり、関係が空中分解になることもあり得ます。また、技術やノウハウの流出、提携の結果生み出された技術や製品の帰属や売上、費用を巡る権利面のトラブルなども懸念されます。

始めやすい業務提携といえども、良好な関係を維持して、その後のM&Aに繋げていくには、契約面はお互い納得できる形になるように丁寧に進めていくことが肝要です。

業務提携の流れと注意点

では、どうしたら円滑な業務提携ができるのでしょうか。改めて業務提携を進める場合の注意点や流れを整理していきましょう。

業務提携の流れ
1.なぜ業務提携をするのかの目的を明確にする
2.どの企業と提携するのかを選定する
3.相手先企業に提携の打診・交渉を行う
4.費用や利益の配分および役割の分担などを決める
—————-
注意点:
・契約書で権利と責任の範囲を明確にする
-成果物の権利はどちらに帰属するのか
-各社が負担する費用の内容や金額
-業務提携による取り組みで生じた利益配分割合
-各社が行う業務の内容と量
・秘密保持契約を締結
-万が一の情報漏えいに備えて損害賠償の支払いに関して明記しておく
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5.契約書を取り交わす

M&Aと比べればに取り組みやすい業務提携ですが、目的を明確にする、契約書で権利と責任の範囲を明確にしておく、秘密保持契約を結ぶという3つのポイントは、契約前にしっかりと詰めておく必要があります。それを踏まえた上で業務提携を進めていくことで、意義のある業務提携にできます。

業務提携からもう一歩進んだ「資本提携・資本業務提携」

なお、業務提携よりも、もう1段階結び付きを深める手法が「資本提携」と「資本業務提携」です。先方の独立性を損なわない範囲で株式を取得したり、共同出資で新たな会社を設立するなどして資本関係を結ぶことを「資本提携」といい、資本提携と同時に業務提携を行うことを「資本業務提携」といいます。

資本関係を結ぶという一定のリスクを負うことで、業務提携以上に明確な目的が必要になるため、必然的に両社の関係も密になります。そのため、M&Aに向けて、関係を深めていきたい、あるいは戦略的な取り組みをしていきたい場合には有効な選択肢です。

ただ、独立性を残しているとはいえ、資金を出している側の発言権が高まるため、業務提携の関係性とは変わってきます。業務提携以上、M&A未満というのが、資本提携や資本業務提携の立ち位置です。

事業承継を見据えた業務提携のポイント

業務提携や資本提携、資本業務提携を事業承継の観点で見ると譲り手、引継ぎ手の双方にメリットがあります。

共通のメリット
・相手先の仕事の進め方が分かる
・相手先の社風やカルチャーが分かる
・相手先の経営者の人柄が分かる
・少ないリスクで始められる
・納得した上でM&Aにつなげられる

譲り手のメリット
・独立性を維持できる
・社員との先方企業との相性が分かる

引継ぎ手のメリット
・M&Aよりも少ない資金で始められる
・PMI策定に必要な情報が得られる

譲り手側の立場で考えれば、事業再生目的でM&Aを検討しているのであれば、業務提携や資本提携でも目的を達することは可能です。また、後継者不在で今後の事業継続と雇用の維持を目的にM&Aを検討している場合は、まず前段階として業務提携を行い、事業やプロジェクトを進めることで、先方の理解が深まり、M&Aで会社や社員を託すことへの不安を軽減できます。

反対に引継ぎ手側の立場で考えれば、M&Aとまではいかなくても地域の困っている企業を自社のノウハウや技術を活かしてサポートするという目的であれば、業務提携だけでも先方の助けになります。また、後継者不在で困っている企業の救済を目的としたM&Aの場合なら、シナジーを生み出せるか、先方の社員に受け入れてもらえるかといった不安を事前に業務提携や資本提携を行うことで緩和できます。

「M&A」だけが事業承継課題を解決できる手段ではありませんので、「資本業務提携」「資本提携」「業務提携」等の形態も含めて柔軟に選択していくことも重要です。とりわけじっくりと信頼関係を育みながら事業承継を進めていきたい企業には、最初の一歩として「業務提携」をはじめることをお勧めします。

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