最終回となる第4回は、「事業承継・引継ぎ補助金」の概要や3つの補助金を申請する際の重要なポイントを解説するとともに、弊社が実践する経営支援サービスについて紹介します。
最終回となる第4回は、「事業承継・引継ぎ補助金」の概要や3つの補助金を申請する際の重要なポイントを解説するとともに、弊社が実践する経営支援サービスについて紹介します。
「事業承継・引継ぎ補助金」は、事業承継やM&Aを契機とした経営革新等への挑戦、廃業・再チャレンジを計画している中小企業を対象とした支援策です。中小企業では少子高齢化を背景に経営者の高齢化が進み、後継者不在等の理由から60歳以上の経営者のうち約50%が廃業予定という統計が出ています。
全国の企業のうち99.7%は小規模・中小企業であり、この層が廃業等により減少すると国の経済に大きな影響を与えると言われています。廃業を考えている企業の引継ぎを補助し、事業承継等を契機に新しい取り組みを行おうと考えている企業を結び合わせる事で、経営資源や技術の消失を防ぐとともに企業同士のシナジーを生み出すきっかけになると期待されています。
事業引継ぎ補助金は3つの型に分類されます。
1つ目の「経営革新枠」は、事業承継・引継ぎを契機とする経営革新等(事業再構築、設備投資、販路開拓)への挑戦にかかる費用を補助するもので、支援類型としては「創業支援型」「経営者交代型」「M&A型」があり補助率は2/3(補助額のうち400~600の補助率は1/2)、補助上限額は600万円で、補助対象経費は設備投資費用、人件費、店舗・事務所の改築工事費用等が適用されるほかM&A実施後の経営統合作業(PMI)の費用も助成に含まれます。
2つ目の「専門家活用枠」は高額になりがちなM&Aの負担を支援するもので、支援類型としては「買い手支援型」「売り手支援型」両方に活用できる枠となっています。なお、専門家活用の委託費は補助対象経費とすることはできますが、補助の対象となる経費は「M&A支援機関登録制度」に登録されているファイナンシャルアドバイザー、M&A仲介業者に対して支払われる仲介手数料等に限られるので注意が必要です。
3つ目の「廃業・再チャレンジ枠」は既存の事業を廃業し新たな取り組みに挑戦する予定の中小企業・個人業主含む小規模事業者が対象となっているもので、補助率は2/3、補助上限額150万円、補助対象経費は廃業費(廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リース解約費、移転移設費用)です。こちらは「経営革新事業」「専門家活用事業」との併用が可能ですが、廃業が前提であるため主にM&A型の売り手側での活用が想定されていると思われます。
「事業承継・引継ぎ補助金」の直近の採択率は「経営革新」が約50%、「専門家活動」「M&A費用の補助」に関しては直近87%と高い確立での採択となっています。弊社での「経営革新枠」の事例としてはM&A型買い手側の美容業者が他社の菓子製造部門を譲り受け新事業展開として採択されています。「専門家活用枠」では、売り手側である総合工事業者が事業の一つである食品加工事業を手放す際のM&A手数料に対して補助金を活用しました。
これまで3つの補助金について解説してきましたが、不採択だった事業計画の傾向を立場別にまとめると、事業者は新規事業に注目しがちで既存事業とのバランスや方針が不一致である事が多く、メーカーは設備の性能に依存した計画になってしまい事業展開への具体性に欠ける印象があります。また他社の専門家が申請のために作成した資料は、分析結果の情報量が過多または重要な情報が欠落しており、申請する企業の強みや事業展開の筋道が通らず説得力が不足している印象がありました。不採択の際の審査員コメントも一様に「市場、ターゲットが不明確」である事からも、新たな事業や設備、商品サービスを「どのように活用し実現していくのか」という部分に重点を置き追究する事が採択を得る上での要点となります。
そして採択を得る最大のポイントは、公募要領に記載されている事項を網羅できるように計画を策定する事です。「会社としてどのような行動をしていくか」という指針を示せば計画書としての要点はカバーできますが、第三者である審査員が読みやすい計画書を作成するにはテクニックが要ります。弊社ではコンサルタントと優秀なスタッフがロジカルな経営方針の策定と徹底した環境分析を行い、実現可能性の高い具体的な計画提案ができるため、高い採択率に繋がっています。
補助金は11月に予算案が発表され、12月に当年度の補正予算が成立し次年度の当初予算が発表された時点でどのような補助金が公募されるかが分かります。今年度の当初予算では「事業再構築補助金」は6千億円、ものづくり補助金やIT導入補助のある「中小企業生産性革命推進事業」は2千億円、「事業承継・引継ぎ補助金」は16憶3千万円と少額ではありますが補正予算でこの予算枠が大幅に拡大されることもあるので、経営者様ご自身にも情報収集や事前の事業策定をしていただくことでより迅速な申請が可能になります。また、国全体の課題として認識されている事柄への補助金は翌年も実施される可能性があり、期限を過ぎてしまった場合には次の申請時期を予測し事業計画を立案することでスムーズな申請が可能になります。
5月初旬現在の「事業再構築補助金」は今年度3回の公募が予定され、現在は第6回の公募中(締切は今年6月30日)となっています。「ものづくり補助金」は今年度4回の公募が予定され、現在は第10回の公募中(締切は5月11日)で、「事業承継・引継ぎ補助金」は第1回の公募中で締切は5月31日です。申請の際は早期の準備をお勧めいたします。
※本コラムの情報は、掲載当時のものとなります。
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