これからの中小企業の事業承継のあり方を読み解く連載コラムを、全4回でお届け。第3回は、中小企業における成長戦略としてのM&Aについてお伝えします。
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M&Aは「事業承継や後継者不在の解決ツール」という捉え方が先立ってしまう事がよくありますが、「成長戦略」というキーワードで考えれば、売り手と買い手どちらにも選択肢が増えるのではないかと考えます。
買い手の立場で新事業を起こす場合、コストと時間を短縮する目的でM&Aが選択される事も多くありますが、M&Aを「成長戦略」と位置づける事で、創業当初の構想を振り返り新たな決断をする良いきっかけになります。
後継者不在等を契機にM&Aを検討している売り手、事業提携を希望する方の場合は、買い手と売り手が連携し成長できる「戦略」と考えれば、理想的なM&Aになるかもしれません。
M&Aで既存事業を譲り受ける場合、その会社が抱える背景が見えづらい事で、事業譲渡を面倒だと捉える方もいるかもしれません。しかし両者のニーズと需要をうまく合致できれば計画も立てやすく、人・モノ・技術をスムーズに移譲できます。M&Aをした場合と、自社で新規開拓・開発をした場合とを比較をする事で、より具体的な計画を作りやすくなります。
既にノウハウを持つ事業を引き継いだ方が、計画や目標を達成するまでの時間を短縮できるという利点もあり「成長戦略」にも繋がります。「誰かから引き継ぐ」というストーリーも事業の魅力の一つになるはずです。M&Aの成約は新たなスタートであり、ゴールや目的ではなく足りない部分を補い合う手段として考えることがM&Aでの成功に結びつく要因です。PMI(Post Merger Integration:経営統合、業務統合、意識統合の3段階からなるM&A後の統合プロセス)もアドバイザーと一緒に考える事で、より綿密な構想を立てられるようになります。
アドバイザーは主張のすり合わせや落としどころを決める役割のほか、弁護士と契約書を作成したり、デューデリジェンス(Due Diligence:投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査すること)を公認会計士に依頼したり、土地の価値算定では土地家屋調査士に協力してもらったりと、様々な専門家と連携して取り組むことも多くあります。
そのため一つの支援機関に相談をした場合も、各機関がネットワークを駆使して様々なリソースを組み合わせ支援できるような体制が整えられています。これは地域でも大規模M&A仲介会社でも同様です。
事業によっては専門領域もあり、お客様の目的に合わせて士業と連携するなど、形を変えて取り組むという事もしています。M&Aを取り扱う企業・団体としては、仲介会社のほか銀行、顧問の税理士、各都道府県の事業引継ぎセンター、商工会もあり「従業員や親族間で承継をしたい」という小規模な相談も専門家同士の連携により対応できるようになっています。
我々はコンピュータの「ハブ」のような役割であり、構築されたネットワーク機能をうまく使っていただければ地域の課題解決が進みます。ゆくゆくは地域の雇用や経済の維持にも繋がると期待しています。
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