2019年3月に、栃木県宇都宮市で貨物運送業を営む幸洋運輸株式会社が、同じく宇都宮市内で青果物のパッキング及び各種加工・選別事業を行っていた株式会社大河を引き継ぎました。幸洋運輸は同時期に、同じ運送業である竹中運送店の事業も承継しています。今回、異業種である大河様を引き継いだ経緯を幸洋運輸の平賀社長に伺いました。
運送業を営む幸洋運輸は、青果物等のパック詰めを行う株式会社大河の事業を引き継ぎ、2019年3月に契約締結を行いました。大河は宇都宮市中央卸売市場の仲卸事業者を通じて青果物をスーパーに納品しており、全国各地の生産地から卸売市場に生鮮食品等を運搬している幸洋運輸とは、仲卸事業者を挟んで食品流通の川上と川下という関係性でした。幸洋運輸側としては、サプライチェーン川下に事業領域を拡大した形となり、今後は障がい者雇用や食品加工または製造にも繋げたい考えです。
幸洋運輸株式会社
株式会社大河
-株式会社大河様は、運送業を営む幸洋運輸株式会社様にとっては異業種となりますが、承継以前はどのようなご関係性だったのでしょうか
譲り手である株式会社大河とは、引き継ぎの相談を受けるまで直接的な面識はありませんでしたが、宇都宮中央卸売市場の仲卸業者を挟み、食品流通の川上と川下という関係にありました。
弊社は、全国の生産地や市場から、宇都宮市中央卸売市場の仲卸業者に生鮮食品を運んでおり、譲り手である大河さんは、仲卸業者から青果物のパック詰め作業を請け負い、仲卸業者を通じてスーパーに納品していました。
-大河様の事業の詳細や引き継ぎの経緯を教えていただけますか
大河さんの事業内容としては、仲卸業者側のパックセンターで作業しきれない分のパック詰めを請け負っていました。売上は月150万円程度で、パート従業員13人の給料分と若干の利益がある程度の規模だったようです。前社長にはご子息がいましたが、他社で働いており、会社は継がないという考えだったので引継ぎ先を探していたそうです。たまたま弊社と大河さんの税理士が同じ方だったので、引き継ぎ先として相談を受けました。
-引き継ぎ先として初めて大河様を知った際の第一印象は
大河さんに初めて伺った時の第一印象は「細かい作業をしているな」という風に想いました。
運送業は一箱単位ですが、青果物のパッキングには選別作業もあり、一箱に何個単位で野菜や果物を袋や箱に詰めていく作業は、大変労力のかかる作業をしているように感じました。野菜を傷めないようにと寒い中で作業をしていたので、働く環境を良くしてあげたいとも思いました。
-大河様側の従業員さんについてはどう感じましたか
本当に真面目な方が多いなと思いました。直接的な監督者がいなくても、10分間の休憩時間には電気を消して節電し、作業が終わると片付けや拭き掃除に取り組み、終業時間ぴったりにタイムカードを押して帰るという規則正しい習慣が根づいていました。
-大河様側から引き継ぎについて希望はありましたか
大河さんからは「今いるパートさんを残してくれればありがたいです」という希望だけで特に要望などはありませんでした。
大河さんのお客様である仲卸さんは、もともと弊社の運送先でもあったので、引き継ぎにあたってはパートさんの雇用を守りながら事業を引き継ぎ、仲卸さんとの関係性も維持すると約束しました。
-相談から引き継ぎ、伴走期間はどのくらいでしたか
2019年1月に相談があり、3月には承継したので3カ月ほどです。お客様先である仲卸さんも知った仲だったので、引き継ぎを決定するまでの期間や伴走期間もほとんどない状態で、スムーズに引き継ぐことができました。現在も前社長に助けを求めるような出来事もなく、遠くから見守っていただいています。
-パート従業員の方を引き継ぐにあたって、社内から何か声はありましたか
弊社が引き継ぐことに関して不安を感じているパートさんはおらず、パックの単価や納品について幅広く理解しているベテランの方が数名いたので、引き継ぎ当初はむしろ私の方が助けられました。事業規模も小さかったので、会社が会社を引き継ぐというよりも、仕事を譲り受けるような感じで、反対の声もなくスムーズに承継することができました。
-引き継ぎ後に変えていったことは?
まずパートさんが作業しやすいようにとエアコンを取り付け、埃が立たないよう床を塗装をするなど、働きやすい環境を整備しました。食品を扱っているのであまり暖かくはできないのですが、身体が冷えない程度に使ってもらうようにしています。異業種だからこそ気付くことができた部分であり、パートさんには喜んでもらえました。
―承継後は順調でしたか?
残ってくれたパートさんの意識が高く、環境を整備した甲斐もあってか、現在の売上は300万円超えの1.5倍から2倍ほどとなっています。お客様からの指名もあり、手作業で事業を支えてくれているパートさん一人ひとりが資産であることを実感しています。
先日、株式会社大河に法人化する話をしたところ、パートさんが「会社になったらもっと荷物を出せるようになるね」と規模拡大について前向きに考えてくれたので、嬉しく思いました。
-今後の課題と考えられることは
2024年問題で運送業はさらに厳しい状況になると言われています。食品産業の間で商売をしている弊社と大河としては、業界の今後を予測し、事業の主軸を変えていかねばと思っています。
特に、大河の納品先はスーパーなので、スーパーでの売り方がパック詰め商品からばら売りになったり、パック詰め作業がスーパー側で内製化されることになったりすれば、大河の仕事がなくなってしまいます。選別やパッキングはすき間産業のようなもので、エンドユーザーやスーパー、仲卸さんが必要としているからこそ成り立っており、どれか一つでも欠ければ存続はできません。今後ニーズがなくなることも考えておかねばならないと思っています。
―外部環境の変化を乗り切るため、どのようなビジネスモデルをお考えですか
障がいのある方を雇用できる事業所にしていけば、社会的にも意義ある事業継続がかなうと思っています。障がい者雇用は、ニーズはあるものの取り組んでいる企業が少ない分野であるため、弊社が挑戦することで呼び水のような役割を果たせたらと思います。
また事業領域としては、野菜を扱った食品事業への拡大を検討していますが、カット野菜を販売するのか惣菜づくりをするのかでまた方向性が変わるため、社員とともに探っていきたい考えです。今後も時代の波に乗れるよう情報収集を欠かさず、事業を展開していけたらと思っています。
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