「ものづくり補助金」は中小企業の革新的サービスや試作品開発、生産プロセス等を改善し生産性向上を目的として設置された制度です。第3回は、「ものづくり補助金」の申請を有利に進めるための加点項目や今年度の変更点等も含め解説していきます。
「ものづくり補助金」は中小企業の革新的サービスや試作品開発、生産プロセス等を改善し生産性向上を目的として設置された制度です。第3回は、「ものづくり補助金」の申請を有利に進めるための加点項目や今年度の変更点等も含め解説していきます。
ものづくり補助金は、中小企業が取り組む革新的サービスや試作品開発、生産プロセスなどの改善を行って生産性を向上させるための設備投資を支援する目的で設けられています。補助金の中では最も古く、平成24(2012)年度から公募が始まりました。
類型としては6つあり、補助率1/2の①通常枠は、昨年度までは従業員規模枠はなく一律1千万円でしたが、今年度からは従業員5人以下上限750万円、20人以下1千万円、21人以上1250万円の補助上限額が設けられました。
補助率2/3の②小規模事業者・再生事業者、③回復型賃上げ・雇用拡大枠、④デジタル枠、⑤グリーン枠のうち④デジタル枠は、DX関連の革新的な製品・サービスの開発やデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法を改善する事業者が対象になっています。弊社でもご相談を多数いただくようになりました。
⑤グリーン枠は温室効果ガスの排出削減に役立つ革新的な製品・サービス開発や炭素生産性向上を伴う生産プロセスやサービス提供の改善をする事業者が対象で、従業員5人以下1千万円、20人以下1500万円、21人以上2千万円が補助上限額です。バイオマス発電など装置類の購入も対象になるので事業再構築補助金と比較すると活用しやすい枠です。環境問題への取組みとして国が最も推し進めたい事柄でもあるため、補助上限額も今年度1千万から2千万に増額されました。
補助率1/2の⑥グローバル展開型は、海外に商品を販売したり現地法人と協力体制を結ぶなどの海外展開時に使える補助金で従業員要件無しで3千万円が補助上限額になっています。
2019年度補正での採択率は、1次62%、2次57%と非常に高く、3次38%、4次31%では一時下がり、5次以降は再び採択率は上昇傾向になっています。令和3年度の8次は60%、9次は63%とかなり高いのは予算投入に伴い採択数が拡大されたためと推察されます。また申請件数自体が減少しているのは、事業再構築補助金が開始された事により、ものづくり補助金から申請数が流れたという見方ができます。
ものづくり補助金という施策の性質にあたって申請者はやはり製造業が多く、弊社が支援し採択されたお客様も、畳製造業、宿泊業(キャンプ)、食品製造業(餃子)、金属製品製造業、自動車整備業、食品製造業(漬物)、歯科医院、パルプ・紙・紙加工品製造業、プラスチック製品製造業、電気機械器具製造業、金属製品製造業(鉄骨)、環境分析サービス業となっています。
補助対象経費としては「機械装置・システム構築費」「運搬費」「技術導入費」「知的財産権等関連経費」「外注費」「専門家経費」「クラウドサービス利用費」「原材料費」があります。ものづくり補助金は新製品やサービスの開発を支援するものなので、計画策定時には開発の原動力となる「機械装置・システム構築費」への投資割合を高く確保する事が必須となります。
また、ものづくり補助金の要件で最もポイントとなる部分は「賃上げ要件」です。給与支給総額を年率1.5%以上増加させるほか、事業場内最低賃金にプラス30円を加算することが要件となっています。
また、事業所全体の「付加価値額」を年率平均3%以上増加させる事も要件の一つとなっています。「付加価値額」は営業利益・人件費・減価償却費を足し戻した金額を言い、5年間に渡る計画の場合は付加価値額を15%伸ばしていく事になります。
賃上げ要件で給料を増額し設備を導入することで減価償却費も増額されますが、結局のところ経費を下げ売上を上げなければならないので、やはり新商品展開の計画や売上増大のアイデアも考案していかねば「付加価値額」の年3%以上増加は達成が難しいのが現状です。
申請を有利にするためには、加点項目をクリアする事が重要です。
1つ目の「成長性加点」では、新商品や新製造方法を開発するにあたって都道府県に「経営革新計画」を策定し承認されることが必要です。
2つ目には「政策加点」があり
① 創業・第二創業間もない事業者(5年以内)
② パートナーシップ構築宣言を行っている事業者
③再生事業者
④デジタル技術の活用及びDX推進の取り組み状況(デジタル枠のみ)
が対象となっています。
3つ目は「災害等加点」で、国(経済産業省)に防災・減災の事前対策に関する「事業継続力強化計画」の承認を得ることです。
「経営革新計画」と「事業継続力強化計画」は、以前は申請済みまたは承認待ちの状態であれば加点の対象でしたが、現在は承認済みの書類が手元にある状態でないと受領、加点されないため早い段階での手続きが必要になります。
4つ目は「賃上げ加点等」です。給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ事業場内最低賃金を地域別最低賃金にプラス60円以上の水準にする計画を提出するか、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ事業場内最低賃金を地域別最低賃金にプラス90円以上の水準にする計画を提出するななどの取組みで加点が受けられます。加点項目数別の採択率としては、0個で約30%、1個約50%、2個約64%、3個73%、4個約78%、5個約86%となり、クリアした項目が多いほど採択率は上がっていきます。
※本コラムの情報は、掲載当時のものとなります。
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