温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロを目指すという国の宣言は、大企業のみでなく中小企業にも脱炭素社会の実現に向けた取組みを求めています。厳しい要求として受け止められる一方、これをビジネスチャンスと捉え、攻めに転じる中小企業も増加しています。本コラムでは、グリーン分野に挑戦する中小企業の動向と、それを後押しする国の制度を紹介します。
温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロを目指すという国の宣言は、大企業のみでなく中小企業にも脱炭素社会の実現に向けた取組みを求めています。厳しい要求として受け止められる一方、これをビジネスチャンスと捉え、攻めに転じる中小企業も増加しています。本コラムでは、グリーン分野に挑戦する中小企業の動向と、それを後押しする国の制度を紹介します。
「大手取引先から、自社の二酸化炭素排出量を至急まとめ、一定の削減に取り組んでほしいと依頼があった。どのように排出量を測定し、削減を進めるべきか、対応に苦慮している。」
これは、2022年6月に開催された「第35回 中小企業政策審議会」で紹介された中小企業経営者の声です。国が温室効果ガスの排出を2050 年までに実質ゼロを目指すことを宣言するなど、脱炭素社会の実現に向けた社会的要請が強まる中、先進企業は自社の炭素排出量のみでなく、下請取引先に対して削減⽬標を要求しはじめています。
中小企業の多くはこれまで、脱炭素の機運が自社の経営に何らかの影響があると感じつつも、具体的な方策を検討するまでには至っていないのが実情ではないでしょうか。
しかし、一方の見方からすると、中小企業が脱炭素社会の実現に向けた目標を設定し中長期的に取組むことは、既存取引先からの受注維持だけでなく、新規受注の獲得につながる機会が拡大していると捉えることもできます。
これまでの中小企業の二酸化炭素排出量削減の取組みといえば、光熱費や燃料費の削減という 経営上の「守り」の要素 が主なものでしたが、今後は 売上拡大といった本業上のメリットを得られるという「攻め」の要素 を持ちつつあります。様々な環境激変によってサプライチェーンが流動化する中、これを新たな収益構造へ転換するビジネスチャンスと捉え、挑戦されている中小企業経営者様が増加しています。
こうした中小企業の攻めの取組みを後押しするため、中小企業庁は、グリーン分野での事業再構築や設備投資を通じて高い成長を目指す事業者を重点的に支援する公的支援策を拡充しています。主な内容は下記二点です。
令和 3 年度補正予算において、新たにグリーン分野の課題解決に資する取組みを行う事業者を対象とした「グリーン成長枠」を創設し、6,123 億円を計上しています。「グリーン成長枠」は、研究開発・技術開発または人材育成を行いながら、グリーン成長戦略分野の課題解決のための取組みを行う事業者を支援する枠です。補助上限は中小企業で1億円(補助率1/2)となっており、通常枠と比べて優遇されています。
同じく令和3年度補正予算において、新たに「グリーン枠」が新設されました。「グリーン枠」は「温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発や炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善等を行う事業者」を対象としています。グリーン枠の補助金上限は最大2,000万円(補助率2/3)であり、こちらも通常枠よりも優遇されています。
上記のような資金面の支援を受けられたとしても、中小企業がグリーン分野に進出するための経営資源は必ずしも潤沢とは言えず、困難かつ時間のかかる計画となります。
このため、自社単独ではなく、事業再編をもって挑戦する事例も増加しています。2021年に日本企業が関わったM&A件数は、4,280件と過去最多を記録し、脱炭素経営の加速を目的とした事例が目立っています。脱炭素はいまや企業にとって重要な経営指標であり、その目的を達成する主な手段として、M&Aに意欲的な中小企業が増えています。
このような背景を受け、前述した事業再構築補助金の応募類型に「事業再編類型」が設けられています。これは「経営資源(人材・資金等)が不足する中小企業が、M&A等を行い新しい分野にチャレンジする取組みを手厚く支援する」ものです。
再編によって新たに創出されるシナジー効果に加えて国の補助制度を活用し、グリーン成長を踏まえた中長期戦略の実現可能性を高めてはいかがでしょうか。
なお、事業再構築補助金の「事業再編類型」は様々な要件があり、事前に十分な検証が必要になりますので、お早目の検討をお勧めいたします。
私たちツグナラコンサルタントは、地域の事業承継の課題解決に向けた取組みに加え、補助金の活用など公的支援施策の申請もご支援しています。お困りの際はお気軽にご相談ください。
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