団塊の世代、約800万人が75歳以上となり、国民の4人1人が後期高齢者となり、「超高齢化社会」を迎える2025年。社会構造や体制が大きな分岐点を迎え、雇用、医療、福祉など、さまざまな分野への深刻な影響が予想されることから「2025年問題」という言われ方もしています。
そんな状況下で、さらに1年早く、重大局面を迎えるのが、物流業界です。働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限(違反した場合は罰則あり)されることに関連して、さまざまな問題が起きることが予想されています。これを物流業界においては「2024年問題」と呼んでいます。
団塊の世代、約800万人が75歳以上となり、国民の4人1人が後期高齢者となり、「超高齢化社会」を迎える2025年。社会構造や体制が大きな分岐点を迎え、雇用、医療、福祉など、さまざまな分野への深刻な影響が予想されることから「2025年問題」という言われ方もしています。
そんな状況下で、さらに1年早く、重大局面を迎えるのが、物流業界です。働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限(違反した場合は罰則あり)されることに関連して、さまざまな問題が起きることが予想されています。これを物流業界においては「2024年問題」と呼んでいます。
元々、トラックドライバーという職種は、全産業平均と比べて、労働時間が2割多く、賃金が1、2割安いという状況で、新たな担い手が集まりにくい業界だと言われています。実際、総務省「2020年 労働力調査」を見ていくと、道路貨物輸送業に従事する就業者の年齢構成は、29歳以下が10.3%。全産業平均が16.6%であることを踏まえると、若い人が少ないのは事実です。
労働時間に制限が加わることは、ドライバーの労働環境の改善という意味では、決して悪いことではありません。業界的にも労働環境のホワイト化を一気に推し進められる大きなきっかけととらえることもできます。
一方で、ドライバーの稼働時間がこれまでより減れば、懸念されるのが、運送事業者の売上・利益の減少、さらにはドライバーの収入の減少です。ドライバーがフル稼働で会社を回している事業者も一定数いるので、時間外労働の上限規制で売上・利益が下がるケースは十分にあり得ます。
それなら事業側が、値上げを行い、変わらぬ売上・利益を担保するという方法もありますが、全国で6万社がひしめき、激しい価格競争が起きている物流業界では簡単には決断できません。その結果、稼げなくなったドライバーは、より稼げる仕事を目指して離職し、稼げないと見られた事業者には新規のなり手も一層集まりにくくなり、さらなる人手不足の加速が予想されます。
2024年問題を前にジワジワと物流業界を苦しめる変化もいくつかあります。
その1つが、燃料価格の高騰です。公益社団法人全日本トラック協会によれば、ガソリン価格が1円値上がると、トラック業界(主に道路貨物運送業)に約150億円の負担増になるとのこと。事業者側がガソリン価格の上昇分を料金に反映できるかと言えば、小規模事業者が76%を占めるトラック業界では、取引先に対して価格交渉しにくいのが実情です。多くの場合、負担をそのまま各事業者が受け入れるしかありません。
もう1つが、働き方改革関連法として、令和5年4月から施行される、会社の規模に関わらず、月60時間以上の時間外労働に対して、50%以上の割増賃金で計算した割増賃金を払うというルール。ちなみに現在、大企業は既に50%を義務付けられていますが、中小企業においては25%となっています。業界のホワイト化という面では、プラスに作用しそうな気もしますが、ギリギリのところでやりくりしていた中小の事業者にとっては、存続問題に発展しかねない対策が必要な変化といえます。
そうした変化が続く中で直面する「2024年問題」は、多くの小規模事業者に廃業を決断させるトリガーにもなり得ます。
冒頭でも引用した総務省「2020年 労働力調査」を再び見ていくと、道路貨物輸送業の就業者は、40~50代前半の就業者の割合が44%となっており、全産業平均の34.7%比べるときわめて高く、さらに60代以上の割合16%という数字についても全産業平均よりも高いといえます。
若手のなり手が少なく、就業者の高齢化が進み、さらに人手不足が深刻化する中では、今従事してくれている人たちをいかに続けてもらうかということも取り組まなければいけない課題となります。そうなると、高齢者が働きやすい職場づくりという視点も必要になります。
では「2024年問題」に向けて、事業者はどんな対策をすべきかというと、「ドライバー不足への対応」「売上・収益の減少に対する対応」「ドライバーの高齢化への対応」の3つが主なところです。
実際、2024年問題に向けた備えを進めている事業者の中には付加価値を付けた新サービスを展開することで売上の確保をしたり、DX化を進めてアナログではやりきれなかったダイナミックな効率化は図ったり、M&Aで事業拡大したり、他業種との連携を目指している例も出てきています。また、社員の働きやすさや、やりがい、キャリアパス、健康にしっかり向き合い、若者、女性、高齢者が働きやすい環境づくりにしているケースも増えつつあります。これは大企業に限らず、中小の事業者も含みます。
事業者の規模、現状の財務状況により、できる選択肢と範囲は変わってきますが、乗り越えた先には、物流業界が長年頭を悩ませてきた「長時間労働・低賃金・人手不足」が解消された明るい未来が待っている気がします。さらに日本全体が直面していく「2025年問題」においては、物流業界が先駆けて取り組んだ事例の数々がヒントになりそうです。
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