地域を代表する中小企業の経営者のお話を聞いていると、高確率で地域貢献活動に熱心です。近年ではSDGsやCSRの観点から、地域社会貢献活動に力を入れる企業が増えていますが、業績がいい企業は押し並べて地域貢献に熱心です。その理由を探りました
地域を代表する中小企業の経営者のお話を聞いていると、高確率で地域貢献活動に熱心です。近年ではSDGsやCSRの観点から、地域社会貢献活動に力を入れる企業が増えていますが、業績がいい企業は押し並べて地域貢献に熱心です。その理由を探りました
近年ではSDGs(持続可能な開発目標)やCSR(企業の社会的責任)の観点から、地域社会貢献活動に力を入れる企業が世界的に増えています。その流れは大企業だけに止まらず、中小企業にも波及しています。
こうした企業の社会貢献に対する関心が高まりはじめたのは、20世紀中盤頃にまで遡ります。そうした流れの中で高まったニーズから、2010年に組織の社会的責任に関する国際規格「ISO26000」がリリースされました。この「ISO26000」により「CSR」の重要性が今まで以上に認識され、日本でも「CSR」として、社会貢献に取り組む企業が増えました。さらに2015年に国連が「SDGs」を掲げ、それが浸透していったことで、社会貢献に関心を持つ企業さらにが増えました。それに加えて「ESG投資」(Environment=環境/Social=社会/Governance=企業統治)といった考え方も広まっており、投資家からも企業の社会貢献が求められるようになっています。
ただ、もともと日本には近江商人の「売り手によし、買い手によし、世間によし」という経営哲学「三方よし」があります。「CSR」や「SDGs」「ESG投資」などのキーワードが普及するはるか前から、日本型の経営には「自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを願う」という考えがごく自然に定着していました。そうした日本特有のバックボーンと近年のトレンドが相まって、近年の企業の社会貢献活動が活発化している一面があります。
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ではなぜ企業は社会貢献をするべきなのでしょうか。企業は社会的な存在であり、企業活動は社会に大きな影響を与えるという前提があるからです。大きな影響を与えるからには、影響に見合った社会的な責任が求められます。納税や雇用の創出による地域貢献は当然のこととして、地域コミュニティのサポート、障がい者雇用、地域課題の解決など、より積極的な社会貢献をすることが企業に求められます。この考えは「CSR」や「SDGs」「ESG投資」「三方よし」のいずれにおいても根底で共通しています。
企業活動は1社では成り立たず、顧客、取引先、地域住民、社員とその家族など、あらゆる人の理解や協力、支援があってこそ成り立ちます。企業による社会貢献は、より長い時間軸で事業継続を考えていく場合には、不可欠で積極的に行うべき取り組みです。
地域社会が存立基盤となる中小企業においては、とりわけ地域への貢献は必要不可欠な取り組みと言えます。地域コミュニティをサポートしたり、地域課題を解決するなどして、地域の安定・強化が図ることができれば、結果として経営基盤の強化にも繋がっていきます。さらに財政の制約から行政の支援余力が減る中では、地域社会を支える上で、企業に今まで以上に重要な役割が求められます。
中小企業できる地域貢献の形は大きく3つあります。
1.資金的支援→自社の資金を使った支援
2.物的支援→自社の施設、サービス、製品などを活かした支援
3.人的支援→自社の人財を派遣・紹介するなどの支援
その上で下記のようなジャンルでの地域貢献が考えられます。ただし、決まった形があるわけではなく、地域特性、地域課題、実施企業の得意領域などを踏まえて行うのが一般的です。
・社会福祉…社会福祉施設でのボランティア活動など
・教育…社会見学(工場見学や職場体験)の受け入れなど
・地域社会の活動、史跡・伝統文化保全活動…お祭への各種支援など
・防災、防犯活動…防犯パトロールなど
・雇用創出及び技能開発・就労支援…新規事業の立ち上げ、障がい者雇用など
・文化・芸術・スポーツ振興…スポーツ大会や芸術イベントの主催・協賛など
・国際交流…交流イベントの企画・主催、場所、施設の提供など
・人権・貧困対策…子ども食堂の支援、運営など
・政治寄付…政党や政治家などへの寄付
・学術・研究支援…研究分野への資金的援助や学術機関と連携・協力など
・環境保護活動…リサイクル・リユースの積極的な推進など
・災害被災地支援…大規模自然災害の被災地への各種支援など
・NPOの基盤形成…NPO団体への各種支援など
地域貢献は、企業が打算的に行うものではありませんが、積極的に取り組み続けた結果、思わぬプラスも出てきます。それが下記の5項目です。これは大企業にも当てはまる部分ではありますが、中小企業の方が地域社会と密接な企業活動を行っていることから、とりわけ大きなプラスとなっていきます。
●地域貢献の結果として生まれる好循環
1.地域社会における企業価値が向上する
2.地域社会において顧客やファンを作り出せる
3.地元に住む優秀な人材を採用できる
4.社員が会社や仕事に誇りを持てるようになる
5.顧客の生の声を聞くきっかけになる
これまでツグナラで紹介してきた「ツグナラ企業」の中にも、地域貢献に前向きに取り組んいる企業が数多くあります。下記はほんの一例になりますが、地域貢献に前向きなツグナラ企業の事例です。
事例1:SDGsの視点と実用性を兼ね備えたエアバック由来の上履き袋
会社名:株式会社CRS埼玉
概要:自動車リサイクル事業を行う同社では、これまで活用しきれていなかったエアバック素材を使ってリメイクした上履き袋を作成して、地元・埼玉県川越地域の新一年生用に配布している。丈夫で使いやすいと好評を得ている。
会社名:株式会社ベストランドホールディングス
概要:東日本大震災当日、同社も被災したものの早期の復旧を果たして、被災地の復旧、復興支援のために東北へ向かう人の安らぎの場となった。この時、被災した状況下で限定的なサービス提供しかできないなかでも無休で営業を続けたことで、多くの利用者が常連客になった。
事例3:オープンファクトリーで会社とものづくりへの理解を促進
会社名:株式会社和興計測
概要:近隣住民を自社工場に招いて見学してもらうオープンファクトリーをしたり、社長が講師として近隣の小・中学校、高校でものづくりをテーマにした講演や授業を定期的に行っている。地域から頼られ、愛される会社になっている。
これらの事例で共通しているのは、地域貢献に積極的な企業は「先義後利」のスタンスで、困っている人に手を差し伸べたり、地域の10年、20年先を見据えた取り組みをしている点です。「業績がいい企業はなぜ地域貢献に熱心なのか?」という問いへの答えは、順番が逆で地域貢献に熱心になった結果、業績がよくなっているのだといえます。地域と共に永続的に歩んでいこうとしている企業は、自社の社員やその家族のみならず、地域社会も大切にしています。地域貢献を通じて、さまざまな横のつながりが生まれ、企業に対する理解者やファン、協力者が生まれ、よい地域とよい会社になっていき、その結果として好業績へと繋がっているのだと言えます。
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