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国が求める第三者承継の目標件数と課題
2021.04.04 | 事業承継

国が求める第三者承継の目標件数と課題

事業承継問題は今後日本経済が成長する上で、対策を講じなくてはいけない問題の一つです。現在、日本で行われているM&A(中小企業含む)は一体、何件ぐらい実施されていると思われますか?日本で唯一、M&A件数の統計をとっているレコフによると、2019年は4,088件、2020年は3,730件ということです。

事業承継問題は今後日本経済が成長する上で、対策を講じなくてはいけない問題の一つです。現在、日本で行われているM&A(中小企業含む)は一体、何件ぐらい実施されていると思われますか?日本で唯一、M&A件数の統計をとっているレコフによると、2019年は4,088件、2020年は3,730件ということです。

求められる数から大幅な乖離があるM&A件数

いい会社への経営戦略、事業承継に強いコンサルティング会社サクシードの市川です。

事業承継問題は今後日本経済が成長する上で、対策を講じなくてはいけない問題の一つです。現在、日本で行われているM&A(中小企業含む)は一体、何件ぐらい実施されていると思われますか?日本で唯一、M&A件数の統計をとっているレコフによると、2019年は4,088件、2020年は3,730件ということです。

私の主観では、レコフが把握していない小規模M&Aも多数存在しているので、実際のM&A件数は、6,000~7,000件程度であると思われます。

この件数は多いのでしょうか?それとも少ないのでしょうか?

潜在的に後継者不在の中小企業数は、127万社と言われていますから、全く足りていないと言えるでしょう。以前から、日本政府は株式譲渡にかかる税金を優遇施策を実施したり、納税時期を猶予したりと対策は少なからず打ってきました。しかしながら、成約件数は一向に伸びません。

そして、ついに中小企業庁から「第三者承継総合パッケージ」が令和元年12月に発表されました。この承継総合パッケージに掲げられている、第三者承継(M&A)の目標件数は、10年間で60万者(6万者×10年間)とされています。現在、多くて6,000社ですから、年間目標60,000社というのは、約10倍にする目標だということです。その目標からすると、現在のM&Aアドバイザーの量だと全く足りませんし、行政を含めて革新的なインフラを整えないことには実現不可能であると言えます。

事業承継に伴うM&Aを増加させるための3つの仮説

今後、この6万者という目標件数を実現するにあたって、現状の課題解決策は以下の3つであると言えます。

①譲渡案件のオープン化

事業の売り案件に対して、現在は過度な守秘義務が掛けられています。今後は、誰が見ても後継者不在というのは周知に事実だし、第三者承継を希望するというのが秘密にしなくても普通のことという時代がくると思われます。

②マッチングサイトの有効活用

約10倍の目標件数を達成するには、M&アドバイザーがひとつひとつの案件を管理し、マッチングを達成するという方法では不可能でしょう。マッチングサイトを有効活用してスピーディなM&A実行プロセスが進むことが必要です。

③M&A取引の簡素化

M&A取引は、「金融のるつぼ」と言われるくらい複雑な金融知識を必要とします。しかしながら、会社の担当税理士を含めてなかなか知識不足で実際のサポートができないことがほとんどです。今後は、M&A取引の簡素化が進むと思います。契約書の雛形や、M&Aプロセスにおいてのパッケージ化が進むので、アドバイザー業務へのハードルが下がり、アドバイザーがいなくても直接取引によるM&Aが必要になると思われます。

最後まで、読んでいただきありがとうございました。

水沼 啓幸
Writer 水沼 啓幸
水沼 啓幸
Writer 水沼 啓幸 ()
代表取締役 
中小企業診断士  MBA(経営学修士)  JMAA認定M&Aアドバイザー
2000年3月に高崎経済大学経済学部経営学科を卒業し、同年4月株式会社栃木銀行へ入行。主に、融資、法人営業を経験し、事業承継、中小企業金融に精通している。また、大学院では中小企業において今後問題化すると予想される『後継者の育成方法の研究やその支援の在り方』について深く研究する。2010年4月に財務・金融、事業承継支援を専門とするコンサルティング会社 株式会社 サクシードを設立し代表取締役に就任。2014年より日本で一番の経営人財の養成機関を目指して「とちぎ経営人財塾」を開講、次世代経営者の育成をテーマに活動し、年間80社以上の経営計画策定支援業務を行っている。2020年1月より地域の成長意欲の高い企業を地域資源としての中小企業の引き継ぎ手として登録、PRする地域特化型M&Aプラットフォームサービス「ツグナラ」をローンチ、事業承継をテーマに地域課題の解決を図るべく活動を行っている。
現在、作新学院大学 客員教授、人を大切にする経営学会 事務局次長として全国のいい会社を訪問し次世代の企業経営の在り方について研究活動を行っている。
著書に「地域一番コンサルタントになる方法」出版(同文館出版)、「キャリアを活かす!地域一番コンサルタントの成長戦略」(同文館出版)「後継者の仕事」(PHP研究所)「さらば価格競争」(商業界)共著、「日本のいい会社」地域に生きる会社力(ミネルヴァ書房)共著、「いい経営理念が会社を変える」(ラグーナ出版)「ニッポン子育てしやすい会社~人を大切にする会社は社員の子どもの数が多い~(商業界)共著、「実践ポストコロナを生き抜く術!強い会社の人を大切にする経営」(PHP研究所) 、「事業承継 買い手も売り手もうまくいくリアルノウハウ」(ビジネス社)共著、その他帝国ニュース(帝国データバンク)近代セールス(近代セールス社)等連載執筆多数。

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