国内M&Aの傾向や変化について解説し、地域の中小企業がM&Aの際に利用しやすい4つの窓口のうち「M&A仲介会社」の特徴を説明します。
国内M&Aの傾向や変化について解説し、地域の中小企業がM&Aの際に利用しやすい4つの窓口のうち「M&A仲介会社」の特徴を説明します。
近年、国内におけるM&A実施件数は増加傾向で推移しています。中小企業庁が公開している統計によると、2019年のM&A件数は公表されているものだけでも過去最高の4,000件を記録し、翌年には新型コロナウイルス感染拡大の影響もあってか3,730件に減少しましたが、概ね右肩上がりで推移しています。
これは、中小企業の経営者の高齢化と少子高齢化による後継者不足の課題を、国が補助するようになったことで「事業承継」が促進されるようになり、企業側も「自社事業の拡大」「事業の最適化」等、先を見据えた経営戦略の手段として徐々に活用するようになってきていることによります。
しかし、中小企業がM&Aを必要なものとして受け入れるようになったのはここ最近であり、特に地方ではM&Aに精通する相談先が未だに少ないこと、また身近な事例が少ないためネガティブな印象を拭いきれないこと、年齢層が高くなるほど投資意欲の低下やリスク回避の傾向が高まり(2021年中小企業庁調べ)M&Aに馴染みがないこともあって、売買の意思決定を先送りにしてしまうという課題もあります。
M&Aの相手探しや情報収集をしたいと思った時に、こういった理由でまずどこに相談すればいいのかわからない方、また財務等のセンシティブな内容も絡んでくることから相談を躊躇されている方もいるのではないでしょうか。インターネットや個人の人脈を使って売買の相手先を探すことも可能ですが、より安全で確実なM&Aを目指すのであれば、やはりコンサルタントや専門機関の協力を得て、案件を多く保有する大手アドバイザリー会社、金融機関、士業などから情報を引き出す手段が最も効率のよい方法となります。
今回は、M&A案件を多く保有する「M&A仲介会社」、地域の企業にとって最も身近な「金融機関」、国が設置する公的相談窓口「事業承継・引き継ぎ支援センター」、ネット上でM&Aマッチングができる「M&Aプラットフォーム」のM&A機能等について解説し、地域企業の皆様が安心して相談先を探す一助に繋げたいと思います。
M&A仲介会社は、譲渡企業(売り手)と譲受企業(買い手)の間に立ち、双方の条件を折衝しながら中立の立場で交渉やサポートを行っています。
M&A仲介業者の特長としては、
①相手を探すだけではなく依頼側の企業に適したマッチングも行っていること
②M&A関連の各種機関の中でも最も多くの案件を保有していること
③相談から成約までのトータルサポートを受けられること
の3つが挙げられます。
譲渡企業と譲受企業の双方から仲介手数料を受ける成功報酬型のサービスを行っているところがほとんどですが、業者により提案資料の作成や企業価値評価の段階で費用が発生する場合もあり、見極めが必要です。また、案件数や内容を開示していない会社は実績があまりない可能性もありますので、扱った業種業態を開示しているところを選びましょう。
M&A仲介会社は、M&A専門の会社として豊富な案件数を扱っていますが、その分、希望業種に近い企業を抽出するのに手間と時間がかかります。希望業種の範囲が広すぎる、狭すぎる等の理由で依頼を断られることもあるため「明確な希望業種を伝える」ことが大事です。これはM&Aの相手先が見つかった後も同様です。双方の意見を擦り合わせながら進めるため、成約までに時間がかかるということがネックとなります。廃業を考えている企業は切迫した状況下にあることも多いため、M&A仲介会社を利用できる譲渡企業は時間と資本に余裕のあるところに限られるかもしれません。
次回は、地域の中小企業がM&Aの際に利用しやすい4つの窓口のうち「金融機関」と「事業承継・引継ぎセンター」について解説いたします。
●連載:中小企業向けのM&A相談先はどこ?―4つの窓口を紹介―
第1回 本記事
第2回 金融機関&事業承・継引継ぎ支援センターのM&A機能とは?
第3回 地域の中小企業の可能性を広げる「M&Aプラットフォーム」のすすめ
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