京都市下京
京都市
高い専門性でワインの歴史と未来をつなぐ京都の老舗ワイン専門店
株式会社ワイングロッサリー
社員の幸せと持続的な社会を願う「利他」の精神とホスピタリティ
経営理念
私たちはお客様、商品、私たちの社員とその属する社会を大切にします。
第一 お客様を大切にします
- お客様のために、何よりも良質な商品の提供をします。
- その原料、地理的背景、生産者の情報を正確に伝えます。
- お客様の利益を守るために正当な価格をこころがけ、そのためのコストを抑える努力をして、お客様の満足と安心を約束します。
- お客様の食卓に商品を通しての幸せと充実した時間を届ける努力をします。
- お客様に常に新しく正しい情報を感動とともに届けます。
第二 より良い商品を選び、大切にします。
- 私たちの主要な取扱商品のワインにおいて、原料の葡萄は良質であり、産地の個性があるもの、生産者の良心と絶え間ない努力の成果を実現したもの、のみを扱います。
- その多様性を私たちが正しく理解し、正確に顧客に伝えられるワインのみを、またその他の関連商品においても良質なもの、安全である商品のみを扱います。
- また品質に見合った正当な価格の商品のみを扱います。
第三 社員の幸福と社会を、大切にします。
- 社員の幸福とは、健全な勤労に対してのお客様からの信頼であり、正しくその利益の恩恵にあずかることであり、不正に利益を享受するものから得られない公明なものです。
- そのために、常に生産者とお客様の間に誠意と迅速さを持って懸命に働く社員に、正当な環境と利益を配分する会社を目指します。
- 社員の心身の健康を守る会社を目指します。
- 私たちを育て、私たちの子どもを育てる社会にその利益を還元します。
- そのために企業として社会に貢献できる健康な社員、健全な資産を持つ会社を目指します。
- その社会貢献を通してお客様に更なる幸せを届ける会社を目指します。
代表者メッセージ
私たち、ワイングロッサリーでは、「お客様」「商品」「社員とその属する社会」の3つを大切にすることを経営理念に掲げています。そのために「真摯に見ること」と「真摯に受け止めること」を重視しています。
弊社の主力商品であるワインは、生産地を実際に見て、お客様に自信をもってお勧めできる高品質なもののみを仕入れています。社会や時代の変化を受け止めながら、社員への教育もオーダーメイド型の育成を心がけています。
日本人の感性を大事にしつつも、欧州を中心とするワインの生産地をリスペクトすることで、世界や日本の文化の相互理解にもつながると思っています。
ワインを通じて、食と生活を豊かなものにすることに貢献できることが、私たちの幸せです。今後も日本と世界の架け橋となれるような企業を目指して、人を大切にして、真心を尽くしていきます。
代表取締役 吉田 まさきこ
私たちのこだわり
創業から約150年、戦前に曾祖父が開業した小売業からスタート
弊社は、1877年の明治期に酒類・醤油・塩の小売業として京都で創業しました。京都には歴史のある店舗が多く、弊社も曾祖父の代から家族で経営を続けています。曾祖父は、戦前には中国から鶏卵を輸入して京都中の料亭に配達していました。明治期は、洋食や和洋折衷の卵料理が都市部を中心に広まりつつあり、卵の輸入によっていち早く商機を見出した先代は、手広く商売を行うようになりました。下宿先として身を寄せる書生さんも多かったそうなので、曾祖父の店はとても繁盛していたのだと思います。
しかし、戦時中に土地を失ってしまったため家業を縮小せざるを得ず、曾祖父の息子である祖父も早くに亡くなってしまい、家業は父が継ぐこととなりました。母が2代目である父のもとに嫁入りした時には、細々と商いを続けている状態だったそうです。その後の1970年には、外国産ワインの輸入自由化や大阪万博博覧会の開催によって、欧米の食文化が広まると共に、第一次ワインブームが起こりました。弊社は苦しい状況が続いていましたが、今後さらに欧米化が進んでいくと考えた父は、ワイン市場の拡大の可能性を感じ、1975年には店名を『ワイングロッサリー』へと変更しワイン中心の店へと踏み切りました。
生活や食の欧米化を見越しワイン中心の店へと舵を切った2代目
その後、1982年に法人化しましたが、その頃には2代目であった父が若くして亡くなり、母が経営を引き継ぐことになりました。母は、経営を引き継ぐ前からワインの知識は学んでいましたが、当時はインターネットも普及しておらず、海外から輸入されるワインの数も情報も少なく、とても苦労したそうです。母は苦労を重ねながらも、ワインに関する資格を取得するなどして歴史や文化への学びを深めていきました。さらに洋酒や食料品といった商品をワインに絞り、完全にワイン専門店として転換することに決めました。
第一次ワインブーム時期はあったものの、当時はワイン自体まだ一般的ではなく、国内の商用取引量もわずかでした。小売店においても、今ではコンビニやスーパーなどで手軽に購入できますが、当時はデパートにある専門店に行かないと売っていませんでした。母は父の遺志を継ぎ、一般家庭にワインが普及する未来を夢見て、経営に力を入れていきました。
ワインや「食」の面白さに魅了され入社し、ワインを一筋に勉強
父は、高級なワインを買い求めるお客様が「ワイングロッサリーに行くならおしゃれをして行こう」と思ってもらえるような特別感のある店となることで、他店との差別化を図りたいと考えていたようです。そのため幼少期には、高級感を演出するため、子どもは店に入ってはいけないときつく言われていました。
たまに得意先のフランス料理店に連れて行ってもらえることがあり、いつからか「食」に興味をもつようになりました。
大学生の時には、管理栄養士の勉強をしていましたが、栄養指導よりも「食」の楽しさを広げていきたいと思い、大学を卒業した後の1998年に弊社に入社しました。しかし、私が入社した当時は赤字続きであり、母は自分の代で会社をたたもうと思っていたそうです。そのような状況の中、私が入社したことは母にとって驚きだったに違いありません。後になって「あの時、会社を永続させなくてはいけないと強く思った」と聞かされました。
入社後は、ワイン一筋で勉強を続けてきました。今も昔も、ソムリエとしての仕事で最も楽しいと思っていることは、ブドウ農家やワインの生産者の方の話や思いを聞くことです。ワインは、材料となるブドウを収穫するため土づくりから行います。収穫されたブドウは、選果や圧搾後に醸造され、多くの手と工程を経て私たちの元に届きます。ワインの芸術的側面や付加価値の根幹には、生産に携わった方々の想いがあります。
生産者の声を直接聞くことで、思いの込もったワインの情報をお客様に過不足なく伝えることができるため、真剣に取り組んでいかなければと思うようになりました。そして数あるワインの中でも、産地や醸造元の特徴、生産者のこだわりや思いが味に表れている、本当に良いワインをお客様に紹介したいと思うようになりました。
インターネットの創成期に自社サイトでワイン販売を開始
また、より多くのお客様にワインや弊社を知ってもらいたいと思い、1990年代には自社ホームページを新設し、サイト内のオンラインショップでの販売も開始しました。当時はインターネット創成期で、楽天やアマゾンなどのオンラインモールは存在せず、メールマガジンの配信が広まり始めたような時代でした。既にWEBマーケティングのような動きも起こりつつあり「勉強して最先端のシステムを使えるようになれば店舗経営に活かせるのでは」と感じ、学生時代に起業していた友人の力を借りてホームページを整備し、コミュニティサイトを立ち上げ、お客様同士がワインの感想を書き合えるようにしました。
当時から幾度もオンラインモールへの出店のお誘いもありましたが、手の届くところで地道に商売をしていく方がいいと考え、オンラインでは現在も自社サイトのみでワインの販売を続けています。地道で堅実な商売を続けていくことが、京都人のビジネスの特徴なのかもしれません。
約10年をかけファミリービジネスから組織化を進める
私はマネージャーの仕事を経て、現場に出て経験を積み、ワイン教室も開くようになりました。マネージャーとして私が現場を取り仕切る立場となってからは、自信もつき、「母が経営できているのだから、社長を交代しても私もできるだろう」と過信し、「継いでも嫌だったらやめればいい」と2013年、36歳の頃に家業を継ぎました。しかし、マネージャーとして限られた範囲の中で成果や売り上げを出す仕事と、最高責任者として社員を雇用し先を見据えながら取引をしていく経営は、全く別物でした。
会社の経営をしていく中で、自分の至らなさによって多くの失敗もしました。特に社員との関係は、先代の母との経営方針の違いをなかなか受け入れてもらえず、うまくいかないことがありました。母は、小売業から洋酒中心の店へと踏み切った父の経営を見てきたからか、カリスマ的な力強さや愛情深さもあり、社員からは大変慕われていました。
一方の私は、組織化により、部門を分けて部門別採算性を導入し、ファミリービジネスからの転換を進めようとしましたが、社員から強い反発がありました。会社としての変化は、社員にとって大きな負担になることもあります。私自身の社長経験が浅かったこともあって、社員にはうまく伝わらず、考えや理念が浸透するまでには約10年がかかりました。
フィロソフィー勉強会、褒めゲームで互いの考えを認め合える職場に
弊社の経営理念は、母から代替わりをする時に、母と私で考えました。「私たちはお客様、商品、私たちの社員とその属する社会を大切にします」という言葉には、社員の幸福を願い、お客様を大切することが社会貢献にも直結するという考えや思いを込めています。
社員への理念の浸透は、朝礼と月1回の「フィロソフィー勉強会」で行っています。朝礼では、ワインの勉強のほか、スタッフが持ち回りでフィロソフィーに関する話をして感想を言い合い、その後「褒めゲーム」で担当者がフィロソフィーの考え方に基づいて誰かを褒めることにしています。トップダウンの押しつけではなく、日頃の関係性の中で他者の良い面を見つけてもらえるようにしたところ、社員同士の関係性がとても良くなり、私自身も自分では気づけなかった社員の考えを知ることができて、勉強になっています。互いの考えや行動を大切にできる関係性が、弊社にとって最も大きな財産となってきています。
「フィロソフィー勉強会」では、盛和塾で学んだ稲盛氏の考え方や「利他」のとらえ方、心の勉強のほか、最近は会社の戦略的な話もするようになりました。昨日の売上と今日の売上目標、目標到達率、経常利益といった数字面も隠さず共有し、会社がどのような状態にあるかを知ってもらうことで、経営者に近い目線でサービスや数字をとらえらえるようにしています。
最近では、ベテランが若手に現場のことを教えて、若手がベテランにSNSやITまわりの操作を教えるなど、社員が得意分野で力を発揮しながら教え合う姿が見られるようになりました。これからも互いの長所を認め支え合いながら仕事に取り組んでいってほしいと思います。
また、「利他」の延長として、収益の一部を寄付するという活動も母の代から続けています。母は、若いころから個人的に寄付活動を行い、社長就任後も余裕のない中で寄付を続けていました。母の姿を見てきた私にとってはごく当たり前のことでしたが、経営者となってからは、支援を継続することの難しさを知り、社会を思う素晴らしい行動だということに気づかされました。
今では、未来ある子どもたちを育てる一助になればと、乳児院への寄付を続けています。社員たちにも、仕事を通じて地域や社会に貢献できているというプライドをもってほしいと思っています。
高品質のワインを求めるコンセプトと生産者へのリスペクト
ワインは、醸造技術だけではなく、良い畑の栽培方法や育て方も重要です。弊社では「ビオ」と呼ばれる自然派や有機栽培の農法が注目される以前から、有機農法のワインを取り扱っています。ワイン商として新たな技術を学び、ワインとともにお客様にお伝えすることは、農家の方の生活や未来を大切にすることでもあると思っています。社員には、知識だけではなくワインづくりの現場や生産者の思いも理解してほしいと考え、毎年ワインの生産地を訪れ、勉強する機会を設けています。暑い日も寒い日も、畑に出て作業をしている農家や生産者の方に敬意をもってほしいということが社員教育の最大の目的です。ブドウづくりや醸造の現場に足を運び、生産者からどのような思いで畑づくりをしているかを聞く経験は、今後の成長を後押しする財産になると考えています。体験により知識と心を養う社員教育は、他社との差別化にもなっています。
ワインの個性を伝えるプロとしてソムリエ資格保有率100%を目指す
時代の流れとともに、国内のワインの消費量は右肩上がりとなり、国産ワインづくりも盛んになりつつあります。しかし、日本は雨が多く、日照時間も短い上に蒸し暑いため、ワインの原料となるブドウの栽培やワイン醸造は非常に難しいとされています。今流通している国産ワインは、生産者の方のたゆまぬ努力によって生み出されたものであり、美味しいワインづくりのために挑戦し続ける農家やの生産者の方の姿勢を心から尊敬しています。国産ワインには輸入ワインにはない個性があり、和食や和洋折衷の食事にも合い、生産者の思いを身近に聞くこともできます。弊社では、高品質で本質をとらえた生産者の想いが込められたトップクラスの商品をお客様に届けるというコンセプトに基づき、国産も輸入ワインも分け隔てなく吟味していますが、日々努力されている農家や生産者の方の苦労や努力は見逃さずにいたいと思っています。
ワインの美味しさや生産者の方の思いをいかに伝えるかは、ソムリエの腕前にかかっています。ワインのビジネスは、お客様の「食」のひとときと心を満たし、ワインの付加価値を高めることであり、生産者ご自身も気づいていない新たな側面や付加価値を発見することが、お客様の喜びや社員のやりがい、ステークホルダーの心の豊かさにも繋がっていきます。
ワインの作法や知識を身につけながら、お客様に提案できる幅を広げていくためにも、社員のソムリエ資格保有率100%に向けて挑戦しています。自社の扱う商品を理解し伝えるプロフェッショナルへと成長していってほしいと願っています。
地域の人と文化を後世に残す、持続可能な取り組みを目指す
高品質なワインづくりを行っている海外では、生産者自身がワインづくりに誇りを持ち、次の世代が畑を引き継ぐという文化が定着しています。畑や醸造所は現在の大切な財産であり、地域の文化や営みを色濃く残す先人の遺産でもあります。海外のワインづくりは、譲渡側も承継側も「後世に残していきたい」という強い気持ちを持ち、地域の文化として大切にしてきたからこそ、現在まで絶えることなく続いてきたのだと思います。海外と国内の価値観の違いや、見習うべき考え方は、ワインづくりや農業だけではなく全ての物事に言えます。日本でも、地域や社会全体を考えた持続性のある経営と事業を行っていくべきであり、持続可能な社会への取り組みは、弊社だけではなく業界全体で考えていかなければいけないと考えています。
今後の目標は、社員の給料を上げることです。既存事業の更なる成長に加え、新ジャンルとして日本酒を扱ってみたいと考えています。ワインを学べば学ぶほど、日本酒の奥深さや、現在まで引き継がれ続けている歴史の素晴らしさを感じるようになりました。人の手によりつくられるワインや日本酒の魅力、面白さを、お客様だけではなく社員にも伝えられたらと思っています。
創業から約150年、戦前に曾祖父が開業した小売業からスタート
弊社は、1877年の明治期に酒類・醤油・塩の小売業として京都で創業しました。京都には歴史のある店舗が多く、弊社も曾祖父の代から家族で経営を続けています。曾祖父は、戦前には中国から鶏卵を輸入して京都中の料亭に配達していました。明治期は、洋食や和洋折衷の卵料理が都市部を中心に広まりつつあり、卵の輸入によっていち早く商機を見出した先代は、手広く商売を行うようになりました。下宿先として身を寄せる書生さんも多かったそうなので、曾祖父の店はとても繁盛していたのだと思います。
しかし、戦時中に土地を失ってしまったため家業を縮小せざるを得ず、曾祖父の息子である祖父も早くに亡くなってしまい、家業は父が継ぐこととなりました。母が2代目である父のもとに嫁入りした時には、細々と商いを続けている状態だったそうです。その後の1970年には、外国産ワインの輸入自由化や大阪万博博覧会の開催によって、欧米の食文化が広まると共に、第一次ワインブームが起こりました。弊社は苦しい状況が続いていましたが、今後さらに欧米化が進んでいくと考えた父は、ワイン市場の拡大の可能性を感じ、1975年には店名を『ワイングロッサリー』へと変更しワイン中心の店へと踏み切りました。
生活や食の欧米化を見越しワイン中心の店へと舵を切った2代目
その後、1982年に法人化しましたが、その頃には2代目であった父が若くして亡くなり、母が経営を引き継ぐことになりました。母は、経営を引き継ぐ前からワインの知識は学んでいましたが、当時はインターネットも普及しておらず、海外から輸入されるワインの数も情報も少なく、とても苦労したそうです。母は苦労を重ねながらも、ワインに関する資格を取得するなどして歴史や文化への学びを深めていきました。さらに洋酒や食料品といった商品をワインに絞り、完全にワイン専門店として転換することに決めました。
第一次ワインブーム時期はあったものの、当時はワイン自体まだ一般的ではなく、国内の商用取引量もわずかでした。小売店においても、今ではコンビニやスーパーなどで手軽に購入できますが、当時はデパートにある専門店に行かないと売っていませんでした。母は父の遺志を継ぎ、一般家庭にワインが普及する未来を夢見て、経営に力を入れていきました。
ワインや「食」の面白さに魅了され入社し、ワインを一筋に勉強
父は、高級なワインを買い求めるお客様が「ワイングロッサリーに行くならおしゃれをして行こう」と思ってもらえるような特別感のある店となることで、他店との差別化を図りたいと考えていたようです。そのため幼少期には、高級感を演出するため、子どもは店に入ってはいけないときつく言われていました。
たまに得意先のフランス料理店に連れて行ってもらえることがあり、いつからか「食」に興味をもつようになりました。
大学生の時には、管理栄養士の勉強をしていましたが、栄養指導よりも「食」の楽しさを広げていきたいと思い、大学を卒業した後の1998年に弊社に入社しました。しかし、私が入社した当時は赤字続きであり、母は自分の代で会社をたたもうと思っていたそうです。そのような状況の中、私が入社したことは母にとって驚きだったに違いありません。後になって「あの時、会社を永続させなくてはいけないと強く思った」と聞かされました。
入社後は、ワイン一筋で勉強を続けてきました。今も昔も、ソムリエとしての仕事で最も楽しいと思っていることは、ブドウ農家やワインの生産者の方の話や思いを聞くことです。ワインは、材料となるブドウを収穫するため土づくりから行います。収穫されたブドウは、選果や圧搾後に醸造され、多くの手と工程を経て私たちの元に届きます。ワインの芸術的側面や付加価値の根幹には、生産に携わった方々の想いがあります。
生産者の声を直接聞くことで、思いの込もったワインの情報をお客様に過不足なく伝えることができるため、真剣に取り組んでいかなければと思うようになりました。そして数あるワインの中でも、産地や醸造元の特徴、生産者のこだわりや思いが味に表れている、本当に良いワインをお客様に紹介したいと思うようになりました。
インターネットの創成期に自社サイトでワイン販売を開始
また、より多くのお客様にワインや弊社を知ってもらいたいと思い、1990年代には自社ホームページを新設し、サイト内のオンラインショップでの販売も開始しました。当時はインターネット創成期で、楽天やアマゾンなどのオンラインモールは存在せず、メールマガジンの配信が広まり始めたような時代でした。既にWEBマーケティングのような動きも起こりつつあり「勉強して最先端のシステムを使えるようになれば店舗経営に活かせるのでは」と感じ、学生時代に起業していた友人の力を借りてホームページを整備し、コミュニティサイトを立ち上げ、お客様同士がワインの感想を書き合えるようにしました。
当時から幾度もオンラインモールへの出店のお誘いもありましたが、手の届くところで地道に商売をしていく方がいいと考え、オンラインでは現在も自社サイトのみでワインの販売を続けています。地道で堅実な商売を続けていくことが、京都人のビジネスの特徴なのかもしれません。
約10年をかけファミリービジネスから組織化を進める
私はマネージャーの仕事を経て、現場に出て経験を積み、ワイン教室も開くようになりました。マネージャーとして私が現場を取り仕切る立場となってからは、自信もつき、「母が経営できているのだから、社長を交代しても私もできるだろう」と過信し、「継いでも嫌だったらやめればいい」と2013年、36歳の頃に家業を継ぎました。しかし、マネージャーとして限られた範囲の中で成果や売り上げを出す仕事と、最高責任者として社員を雇用し先を見据えながら取引をしていく経営は、全く別物でした。
会社の経営をしていく中で、自分の至らなさによって多くの失敗もしました。特に社員との関係は、先代の母との経営方針の違いをなかなか受け入れてもらえず、うまくいかないことがありました。母は、小売業から洋酒中心の店へと踏み切った父の経営を見てきたからか、カリスマ的な力強さや愛情深さもあり、社員からは大変慕われていました。
一方の私は、組織化により、部門を分けて部門別採算性を導入し、ファミリービジネスからの転換を進めようとしましたが、社員から強い反発がありました。会社としての変化は、社員にとって大きな負担になることもあります。私自身の社長経験が浅かったこともあって、社員にはうまく伝わらず、考えや理念が浸透するまでには約10年がかかりました。
フィロソフィー勉強会、褒めゲームで互いの考えを認め合える職場に
弊社の経営理念は、母から代替わりをする時に、母と私で考えました。「私たちはお客様、商品、私たちの社員とその属する社会を大切にします」という言葉には、社員の幸福を願い、お客様を大切することが社会貢献にも直結するという考えや思いを込めています。
社員への理念の浸透は、朝礼と月1回の「フィロソフィー勉強会」で行っています。朝礼では、ワインの勉強のほか、スタッフが持ち回りでフィロソフィーに関する話をして感想を言い合い、その後「褒めゲーム」で担当者がフィロソフィーの考え方に基づいて誰かを褒めることにしています。トップダウンの押しつけではなく、日頃の関係性の中で他者の良い面を見つけてもらえるようにしたところ、社員同士の関係性がとても良くなり、私自身も自分では気づけなかった社員の考えを知ることができて、勉強になっています。互いの考えや行動を大切にできる関係性が、弊社にとって最も大きな財産となってきています。
「フィロソフィー勉強会」では、盛和塾で学んだ稲盛氏の考え方や「利他」のとらえ方、心の勉強のほか、最近は会社の戦略的な話もするようになりました。昨日の売上と今日の売上目標、目標到達率、経常利益といった数字面も隠さず共有し、会社がどのような状態にあるかを知ってもらうことで、経営者に近い目線でサービスや数字をとらえらえるようにしています。
最近では、ベテランが若手に現場のことを教えて、若手がベテランにSNSやITまわりの操作を教えるなど、社員が得意分野で力を発揮しながら教え合う姿が見られるようになりました。これからも互いの長所を認め支え合いながら仕事に取り組んでいってほしいと思います。
また、「利他」の延長として、収益の一部を寄付するという活動も母の代から続けています。母は、若いころから個人的に寄付活動を行い、社長就任後も余裕のない中で寄付を続けていました。母の姿を見てきた私にとってはごく当たり前のことでしたが、経営者となってからは、支援を継続することの難しさを知り、社会を思う素晴らしい行動だということに気づかされました。
今では、未来ある子どもたちを育てる一助になればと、乳児院への寄付を続けています。社員たちにも、仕事を通じて地域や社会に貢献できているというプライドをもってほしいと思っています。
高品質のワインを求めるコンセプトと生産者へのリスペクト
ワインは、醸造技術だけではなく、良い畑の栽培方法や育て方も重要です。弊社では「ビオ」と呼ばれる自然派や有機栽培の農法が注目される以前から、有機農法のワインを取り扱っています。ワイン商として新たな技術を学び、ワインとともにお客様にお伝えすることは、農家の方の生活や未来を大切にすることでもあると思っています。社員には、知識だけではなくワインづくりの現場や生産者の思いも理解してほしいと考え、毎年ワインの生産地を訪れ、勉強する機会を設けています。暑い日も寒い日も、畑に出て作業をしている農家や生産者の方に敬意をもってほしいということが社員教育の最大の目的です。ブドウづくりや醸造の現場に足を運び、生産者からどのような思いで畑づくりをしているかを聞く経験は、今後の成長を後押しする財産になると考えています。体験により知識と心を養う社員教育は、他社との差別化にもなっています。
ワインの個性を伝えるプロとしてソムリエ資格保有率100%を目指す
時代の流れとともに、国内のワインの消費量は右肩上がりとなり、国産ワインづくりも盛んになりつつあります。しかし、日本は雨が多く、日照時間も短い上に蒸し暑いため、ワインの原料となるブドウの栽培やワイン醸造は非常に難しいとされています。今流通している国産ワインは、生産者の方のたゆまぬ努力によって生み出されたものであり、美味しいワインづくりのために挑戦し続ける農家やの生産者の方の姿勢を心から尊敬しています。国産ワインには輸入ワインにはない個性があり、和食や和洋折衷の食事にも合い、生産者の思いを身近に聞くこともできます。弊社では、高品質で本質をとらえた生産者の想いが込められたトップクラスの商品をお客様に届けるというコンセプトに基づき、国産も輸入ワインも分け隔てなく吟味していますが、日々努力されている農家や生産者の方の苦労や努力は見逃さずにいたいと思っています。
ワインの美味しさや生産者の方の思いをいかに伝えるかは、ソムリエの腕前にかかっています。ワインのビジネスは、お客様の「食」のひとときと心を満たし、ワインの付加価値を高めることであり、生産者ご自身も気づいていない新たな側面や付加価値を発見することが、お客様の喜びや社員のやりがい、ステークホルダーの心の豊かさにも繋がっていきます。
ワインの作法や知識を身につけながら、お客様に提案できる幅を広げていくためにも、社員のソムリエ資格保有率100%に向けて挑戦しています。自社の扱う商品を理解し伝えるプロフェッショナルへと成長していってほしいと願っています。
地域の人と文化を後世に残す、持続可能な取り組みを目指す
高品質なワインづくりを行っている海外では、生産者自身がワインづくりに誇りを持ち、次の世代が畑を引き継ぐという文化が定着しています。畑や醸造所は現在の大切な財産であり、地域の文化や営みを色濃く残す先人の遺産でもあります。海外のワインづくりは、譲渡側も承継側も「後世に残していきたい」という強い気持ちを持ち、地域の文化として大切にしてきたからこそ、現在まで絶えることなく続いてきたのだと思います。海外と国内の価値観の違いや、見習うべき考え方は、ワインづくりや農業だけではなく全ての物事に言えます。日本でも、地域や社会全体を考えた持続性のある経営と事業を行っていくべきであり、持続可能な社会への取り組みは、弊社だけではなく業界全体で考えていかなければいけないと考えています。
今後の目標は、社員の給料を上げることです。既存事業の更なる成長に加え、新ジャンルとして日本酒を扱ってみたいと考えています。ワインを学べば学ぶほど、日本酒の奥深さや、現在まで引き継がれ続けている歴史の素晴らしさを感じるようになりました。人の手によりつくられるワインや日本酒の魅力、面白さを、お客様だけではなく社員にも伝えられたらと思っています。
会社概要
社名 | 株式会社ワイングロッサリー |
創立年 | 1982年 |
代表者名 | 代表取締役社長 吉田 真紀子 |
資本金 | 2000万円 |
本社住所 |
600-8499 京都府京都市下京区唐津屋町528 |
事業内容 | 酒類および食品販売、酒類輸入販売 |
URL |
https://kyoto.winegrocery.com/
|
会社沿革
1877年 | 酒類・醤油・塩の個人小売業として創業 |
1975年 | 店名を「ワイングロッサリー」に変更し、ワインを中心とした食料品店へと転換 |
1982年 | 法人化により株式会社ワイングロッサリーとなる |
2013年 | 社長交代により4代目に吉田真紀子が就任 |
株式会社ワイングロッサリーの経営資源引継ぎ募集情報
公開日:2023/11/30 (2023/12/04修正)
※本記事の内容および所属名称は2023年12月現在のものです。現在の情報とは異なる場合があります。