弊社・株式会社サクシードが次世代の経営人財の育成と輩出を目的に9年前から栃木県でスタートした「とちぎ経営人財塾」が、新たに埼玉県を舞台に2023年10月より「さいたま経営人財塾」として開講します。先日開催した開講記念の特別講義の一部を「ポストコロナ時代の中小企業に求められるパーパス経営と業績向上」として紹介します。「いい会社とは何か?」というテーマより深めたい方は必読です。
弊社・株式会社サクシードが次世代の経営人財の育成と輩出を目的に9年前から栃木県でスタートした「とちぎ経営人財塾」が、新たに埼玉県を舞台に2023年10月より「さいたま経営人財塾」として開講します。先日開催した開講記念の特別講義の一部を「ポストコロナ時代の中小企業に求められるパーパス経営と業績向上」として紹介します。「いい会社とは何か?」というテーマより深めたい方は必読です。
私が所属する学会「人を大切にする経営学会」にて、業績が良い会社を約500社調べたことがあります。その調査で明らかになったのが、「社員のモチベーションの高い会社に業績が悪い会社はない」ということです。業績が良いだけで、社員のモチベーションが低い会社も存在しますが、会社の業績を良くしたければ社員のモチベーションを上げるというのが、1つのアプローチになります。
実際に社員のモチベーションを上げることは、図1のような形で社員の成長と会社の成長が絡み合いながら進んでいくことで、好循環が生まれてきます。モチベーションの向上が仕事の質を高め、仕事の質を高めたことでお客様からの評価が高まり、それを知った社員が成長を実感して、さらなる努力を重ねていくことによる業績向上です。これはBtoCでもBtoBの企業でも変わりません。
さらにこの好循環が続いていくと、自立的・主体的に仕事を行う社員が増えていきます。会社に言われたからするのではなく、社員自らがお客様のニーズを感じ取り、それに応えられるような仕事をし始めます。その結果、提供できる価値は高まり、新たな顧客を生み、業績もどんどん上向きになります。
中小企業経営者の中には、世の中の環境変化が激しすぎてどうしたらいいのか?と困っている方も多数いらっしゃると思います。まず取り組むべきことは、自社の事業モデルや商品、サービスの再構築です。図2のように長期スパンで段階的に取り組んでいくことが重要です。
同時に経営スタイルを見直すことも忘れてはいけません。より大きく、より早く、より効率的に、より安くといったこれまでのスタイルとは真逆の経営スタイルを目指すことがアフターコロナ時代の中小企業経営においては重要になります。そうしたスタイルに切り替えていくことで、パーパス経営の実現に一歩に近付きます。
例えばパーパス経営を体現する代表的な企業の1つで、半世紀以上に渡り増益増収を続ける伊那食品工業株式会社では、急成長・急拡大経営の対極といえる年輪経営を長年実践しています。年輪経営とは、大樹が年輪を刻んでいくように自然なスピードで着実に成長していこうという考えです。良い時も悪い時もあるので、年輪の幅はまちまちですが、毎年わずかでもいいので着実に成長していくという考え方でもあります。その一歩、一歩を積み上げていく経営スタイルが、半世紀以上に渡る増益増収に繋がっているといえます。
言うは易く行うは難しと思われるかもしれませんが、経営スタイルを転換したことで業績を大きく向上させた企業は確実に存在します。その1つが静岡にある山﨑製作所です。山﨑製作所は、下請け型・依存型経営から脱却し、オリジナルの商品を生み出せる研究開発型経営に移行することで、さまざまな好循環を生み出しました。
元々、精密板金や金属加工を行ういわゆる町工場でした。女性経営者に代替わりしたタイミングで、自社の高い切削技術を活かしたオリジナル商品として、1つ1万円以上する「かんざし」を製作したところ、たった5%の新商品が全体の利益率を3割近くも引き上げるまでに成長しました。さらに近年では海外展開も開始し、好評を博しています。
山﨑製作所のケースは、自社の強みや技術を活かしたサービスや製品を開発する、いわゆるプロダクトアウト型を突き詰めて成功した例で、大きな研究開発費をかけたわけではありません。まず自社の強みと特徴を徹底的に考え抜き、そこで生み出した製品はどの市場なら一番高く評価されるのかを探し抜いて投入したことが成功の要因だと思います。さらに「かんざし」を作り始めたことで、新卒を含めて女性のスタッフが増えたそうです。
研究開発型経営で成功している中小企業では、このパターンが多く、生み出した自社の商品を投入する市場を探す際にはどの企業も例外なく徹底的に行っています。研究開発型経営というと、中小企業には取り組むのが難しいと感じるかもしれませんが、まずは1アイテムでも自社商品を作るというのが、大きなポイントになります。
●コロナ後の企業経営で求められるスタイルとは…
①規模志向経営⇒高付加価値経営
②急成長、急拡大経営⇒年輪経営
③下請型、依存型経営⇒研究開発型経営
④市場対応型経営⇒市場創造型経営
⑤価格競争経営⇒非価格競争経営
⑥製販売分離型経営⇒製販一体型経営
⑦少品種大量生産型経営⇒多品種少量生産型経営
⑧情報受信型経営⇒情報発信型経営
⑨企業型経営⇒大家族的経営
⑩効果、効率追求経営⇒幸せ追求型経営
最後に社会課題解決型のパーパス経営を紹介します。神奈川県小田原市にある「障がい者の社会的自立」をパーパスに掲げる株式会社リンクラインという会社です。代表取締役の神原薫氏は、コムテック株式会社で人事部長をしていた時に障がい者の雇用率を上げなくてはならないと考えて、2010年に特例子会社として株式会社リンクラインを立ち上げます。どのような事業なら上手くいくのかと考えて全国の障がいを持つ方が働く事業所を見て回り、辿り着いたのが贈答用石鹸の製造販売でした。
完全手作りにこだわり、「これが石鹸?」と驚くようなサプライズ感とフォトジェニックなかわいらしさが特徴です。創業当初は、OEMが中心だったため、自ら情報発信することができなかったものの、パーパス経営を進める中で「li’ili’i(リィリィ)」というオリジナルブランドを立ち上げます。企画、製作からラッピングまで働く障がい者の方々が担い、主体的に働ける環境を整えています。また、「li’ili’i(リィリィ)」は同社の主力商品として、利益計上の基礎になっています。
リンクラインが成功した理由は、パーパスの実現という大きな目的に向かって、贈答用石鹸というライバルが少ない市場に参入し、高い技術を強みにした完全手作りというオリジナル要素、さらには配合や材料など徹底的な石鹸の研究を行ってきたからだといえます。パーパスにより、社員も経営者もモチベートされた結果だといえます。
ある有名な経営者にパーパスを含めた理念経営の効用を質問したことがあります。その答えは、パーパス経営をしっかりと行っていけば、パーパスに共感したお客様や社員が集まり、地域社会やさまざまなステークホルダーからもパーパスに沿った評価が得られるようになるということでした。
さらにパーパス経営がより浸透していくことで、「〇〇をしている会社」という形で業界の知名度や評判が高まっていき、事業活動を進めやすくなるなど、さまざまな好循環が生まれます。それこそがパーパス経営の効用とのことでした。今日、明日の業績には直結しないかもしれませんが、2年、3年後に確実に自社にとってプラスの効果がもたらされるのが、パーパス経営なのです。
10月から開講されるさいたま経営人財塾では、今回取り上げたパーパス経営のような「いい会社づくり」を大きなテーマとして、経営のあり方・考え方を著名な講師陣から学んでいく経営塾です。経営者のみならず、経営幹部・後継経営者・次世代リーダーなど、自社をよりよくしたいと思う全ての方を対象にしています。なお、本塾は「人材開発支援助成金」の対象となるため、受講料の4割分が助成対象です。ご参加お待ちしております。
「さいたま経営人財塾とは」
9年前に栃木県でスタートして85社180名の経営人財を輩出してきた「とちぎ経営人財塾」が、2023年10月に「さいたま経営人財塾」として新たに開講します。経営のあり方・考え方を著名な講師陣から学び、自社の経営課題の解決に向けて「いい会社づくり」を大きなテーマとして、プロジェクトを策定、そして実行する『実践型の次世代経営者塾』です。先進企業の視察、異業種の受講生との繋がり、講師やOB・OGとの交流など、志をともにする貴重な仲間との交流の場も設けています。
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