ハードウェア・ソフトウェアのシステム開発に携わる、川崎市の株式会社アルファメディアは2024年5月、AIやVRの研究開発を手がけるベンチャー企業のvizo株式会社(以下vizo社)と資本業務提携を締結しました。
同じ地域の2社が提携に至るまでには、どのような経緯があったのでしょうか。アルファメディアの小湊社長に、資本業務締結までのフローや協業によるシナジー創出への意気込み、今後の展望について伺いました。
アルファメディアがvizo社の株式を一部取得し、技術開発の支援・販売に携わる、資本業務提携です。アルファメディアの小湊社長は、2024年1月にvizo社のホー社長から出資について声をかけられ、5月には資本業務提携として締結されたスピード成約の事例です。当初は出資のみの要請でしたが、小湊社長の経営者としての判断により、vizo社、アルファメディア、地域にメリットがある、資本業務提携の手法が選択されました。
株式会社アルファメディア
vizo株式会社
ーvizo社との資本業務提携の検討に至った経緯について教えてください。
vizo社のホー・フィ・クーン社長とは、2022年頃にセミナーで初めて知り合い、登壇者同士で名刺交換しました。その後はSNSにて間接的に近況を確認する程度の付き合いでしたが、2年近くが経った頃、商工会議所の賀詞交歓会にてホー社長と久々に会う機会があり、翌月にはホー社長が弊社に来社されました。そこで初めてvizo社のAI事業について詳細を教えてもらい、ホー社長から「小湊さん、ぜひ出資しませんか」と誘われました。ホー社長から熱意を感じ取った私は、まずはvizo社の現場を見たいと思い、2024年3月にvizo社を訪問することにしました。
vizo社のAI製品やサービスを実際に見せてもらい、非常に素晴らしい技術力をもっていると感じた一方で、経営より開発にかなりの額を投資している印象を受けました。「IPOを目指している」と話すホー社長からは真剣さが感じられ、「前向きに検討する」と一度持ち帰ることにしました。
ー検討から資本業務提携の実行に踏み切ったきっかけや理由はありましたか
ITに携わる弊社としては、今後の戦略としてAI技術を取り入れていく必要があり、資本業務提携によりvizo社とリソースを共有することで、自社開発にもAI技術を取り入れたいという考えがありました。新分野への挑戦は、社員に大きな負担がかかるため二の足を踏んでいましたが、資本業務提携であれば、互いの会社の得意分野を活かしながら開発の負担を軽減することができます。技術やサービスごとに有償無償の個別契約を交わすことで、双方にメリットのある取引ができるだろうと考えました。
また将来性や夢のある事業に取り組み、付加価値の高いソリューションを提供できるようになれば、お客様だけではなく、社内のモチベーション向上につながるだろうと思っています。
社外的にも、技術者の採用や、お客様からの新規発注などにも好影響があるだろうと考え、資本業務提携に向けて具体的に話を進めようと決意しました。
ー社内ではどのような動きがありましたか
vizo社への訪問から間もなく、社内での役員会があり、vizo社との資本業務提携を検討している旨を役員に伝え、決議をとりました。
出資額は、弊社の経営にダメージのない範囲と決めていましたが、私も役員も資本業務提携の経験がなく、なかなか判断ができませんでした。役員たちからは「この件は小湊社長に一任したい」「ただし、失敗をしても責を問うようなことはしません」との申し入れとともに「ホー社長の人柄を社長自身が見極め、決めてください」と決断を委ねられました。役員としては、ベトナム出身であるホー社長の人柄を知り、会社の代表者としての考えを知ることで、vizo社の社風や社員の気質などを知りたい気持ちがあったのだと思います。
そして4月初旬には、ホー社長に武蔵小杉まで出向いてもらい、酒を飲みながら2、3時間ほど、会社立ち上げからプライベートのことまで互いに話し合いました。事前にvizo社の財務諸表も見せてもらっていたこともあり、ホー社長がどのような経営をされているのかを理解することができました。
多額の投資をしている分、vizo社の技術力は素晴らしく、弊社が製品開発や販売に携わることで、両社の業績にプラスになると感じました。ホー社長には「出資はするが、口も出す。それでもよければ」と伝え、出資だけではなく開発や販売まで協力することにしました。
ー川崎市内で両社が資本業務提携をする社内、社外的メリットは?
川崎市で創業した弊社としては、外国人技術者の多いvizo社のガイド役として、川崎市内の新規開拓やニーズの発掘などに協力できると考えています。また対外的には、弊社がvizo社に技術料という形で対価を払い、ITからAIへの領域拡大と自社製品にAI技術を反映することができれば、付加価値の高い製品やサービスを地域に還元できると考えています。将来性あるvizo社への先行投資が、好循環につながればと思っています。
また、何かあった時にすぐ駆けつけられる距離感であることも、同一地域内の提携のメリットです。Web会議ツールなどの発達により、遠方の方とも話せる時代ではありますが、対面でのコミュニケーションは安心感があり、信頼関係を深めるには大事な要素だと感じています。
ー資本業務提携の契約はいつ頃結ばれましたか
vizo社との出資契約や登記手続きは2024年5月に完了し、現在は両社の技術や取り組みを学ぶための勉強会として、弊社のエンジニアがvizo社の技術を学び始めたところです。vizo社の代理店として製品を販売できるように、勉強会には営業担当者にも参加してもらっています。
弊社側の勉強会をスタートした後の段階としては、各部署からの意見や提案をまとめ、アクションプランに落とし込むフェーズとなります。リソースの配分や自社製品への追加機能の検証など、実現に向けた構想を練り、開発に進みたいと考えています。
ー資本業務提携後の展望はどのようにお考えですか
vizo社のホー社長の母国はベトナムであり、間接的にベトナムとの結びつきができたことから、ゆくゆくは海外展開ができたらと思っています。また最近では、沖縄県名護市に訪問する機会があり、名護市への拠点の新設を考え始めたところです。
川崎市と沖縄県の交流は古くからあり、太平洋戦争後に出稼ぎのため移住した沖縄県出身の方が多かったことから、川崎市と那覇市は友好都市関係を結んでおり、また弊社とも長い付き合いのある(公財)川崎市産業振興財団は、以前から沖縄県名護市との親交があります。名護市は、国内で唯一「情報通信産業特別地区」「経済金融活性化特別地区」の2つの特区となっている自治体であり、IT業界と金融業界から非常に注目されている地域です。
私は、名護市長や幹部職員の皆様が川崎市を訪問した際や、川崎市産業振興財団による2024年2月の沖縄訪問にも同席させていただき、名護市の方との交流を深めることができました。川崎市と沖縄、沖縄から東南アジアは同程度の距離であり、経済とITの集積地である名護市に拠点を置くことができれば、自社成長や海外展開も期待できると考えています。まずはAIベンチャーであるvizo社との資本業務提携により、AIの力も兼ね備えたIT企業へと成長していきたいと思っています。
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