2022年11月の公開以降、わずか2か月弱で月間1億人のアクティブユーザーを獲得した対話型AIサービス「ChatGPT」が話題です。AIというと一部のハイテク企業やITエンジニアしか関係ない技術と思われがちですが、実は中小企業の経営環境にも影響を与えうるさまざまな問題と繋がっています。本記事では今後さらなる普及が予想される「ChatGPT」を例に、中小企業経営への影響と紐づけて解説していきます。
2022年11月の公開以降、わずか2か月弱で月間1億人のアクティブユーザーを獲得した対話型AIサービス「ChatGPT」が話題です。AIというと一部のハイテク企業やITエンジニアしか関係ない技術と思われがちですが、実は中小企業の経営環境にも影響を与えうるさまざまな問題と繋がっています。本記事では今後さらなる普及が予想される「ChatGPT」を例に、中小企業経営への影響と紐づけて解説していきます。
米・OpenAI社が2022年11月にリリースした対話型AIサービス「ChatGPT」が、多方面で話題になっています。登録すれば基本無料のAIチャットボットで、テキストで「栃木県について教えて」などと入力すると、AIがテキストで回答してくれるというようなサービスです。まだAIとの会話を楽しむだけのライトな使い方をしている人ばかりですが、実は「ChatGPT」をはじめとしたAIの普及は、ITビジネスの世界におけるゲームチェンジャーになるのではないかと言われています。本記事では、中小企業経営者の立場に立ち、「ChatGPT」を例にしてAIの普及が進んだ先にある近未来像を解説していきます。
●ChatGPTをはじめる際に読む記事
中小企業経営者に贈る「ChatGPT講座」①/はじめ方編
ChatGPTを安全に使うために知っておきたいリスクと安全対策
「ChatGPT」が「対話型AI」や「チャットボット」だと言われても、具体的にどのようなことに使えるのかイメージしにくい部分があります。今後、具体的かつ新たなChatGPTの活用法は増えてくると思いますが、現段階で分類すると大きく4つに分けられます。
●ChatGPTの活用例
1.リサーチツールとしての活用
2.顧客対応ツールとしての活用
3.文章作成ツールとしての活用
4.提案ツールとしての活用
検索エンジンや辞書の代わりに使うというシンプルな使い方から、「製造業の未来予測をして」のような大きめのテーマの質問を投げて「ChatGPT」に調べてもらうという使い方もできます。検索エンジンで同じように調べた場合には、ユーザー自身が情報の取捨選択をしてまとめなくてはいけませんが、「ChatGPT」を使えばその作業がほんの数秒で完了します。
カスタマーセンターにおいて人力での対応を求められていた業務において人力での対応を求められていた業務を「ChatGPT」に任せられます。基本的には人を介する必要がなくなるため、会社の規模にかかわらず24時間365日の顧客対応が可能になります。既にアメリカのオンライン旅行通販会社・エクスペディア・グループでは、「ChatGPT」の技術によるAIバーチャルエージェントを導入しており、ユーザーから寄せられる旅行中のトラブルに関する問い合わせに対応しています。
企業のプレスリリースのドラフト版や簡単なニュース記事も「ChatGPT」で生成することが可能です。例えば、「ラブレターを書いて」と「ChatGPT」に頼めば、ものの数秒でラブレーターのドラフト版ができあがります。ただ、現時点で生成される文章ははあくまで「ドラフト版」というレベルで、まだまだテンプレート的な表現から脱していませんが、今後AIが情報をさらに蓄積していけば、より高度な文章生成も可能になるでしょう。「請求書のひな形」や「お礼状のひな形」など、定型文でも問題ないようなものであれば、ほぼそのまま使えるひな形が出来上がります。
前述のエクスペディア・グループでは、「ChatGPT」の技術を活用し、ユーザーへ新たな旅の提案も行っています。ホテル、部屋のタイプ、観光先、アクティビティ、予算など、膨大な選択肢からユーザーの希望にマッチしたプランをAIが提案するという形です。人間では把握しきれないような膨大なデータを元に提案するという点では、AIならではの使い方だといえます。
では「ChatGPT」を中小企業が使う場合、具体的にはどのようなことが実現可能になるのでしょうか?まずはメリットから上げていきましょう。
●ChatGPTを中小企業が使うメリット
1.作業時間の短縮
2.人手不足の解消
3.新たなビジネスチャンスが生まれる
「ChatGPT」を使うメリットの1つ目は、情報収集から集約に至る作業の時間短縮が挙げられます。例えば特定のテーマについて調べものを行う場合、「ChatGPT」なら「製造業の未来について教えて」と入力すると、簡潔な文章で製造業の将来予測をまとめてくれます。もし同じことを検索エンジンで調べようとした場合には、検索結果を1ページづつ内容確認し、自分自身で情報の取捨選択をしていく必要があります。また、郵送時に使う送付状やお礼状、請求書のひな形など、ゼロから作ると意外と時間を奪われる書類のひな形を数秒で作り上げてくれます。
さらに中小企業経営者にとっては秘書のように「ChatGPT」を使うことも考えられます。実際、「ChatGPT」にいろいろな質問をぶつけると当意即妙で応えてくれます。「日本で一番売れているアイスは?」などを質問すれば、具体的な商品名を教えてくれ、その答えにかぶせるように「人気の理由は?」などと追加質問すると、その根拠を教えてくれます。
「ChatGPT」を使うメリットの2つ目が、人手不足の解消です。もっとも可能性が高そうな使い方が、カスタマーサポートの現場での「ChatGPT」の利用です。AIチャットボットによるカスタマーサポートは既にいろいろな企業が導入していますが、精度が高く、当意即妙な応対ができる「ChatGPT」を見ていると、今後、一気に普及していきそうな気配を感じます。
現在、人間によるカスタマーサポートを行っている企業なら、問い合わせの前捌きを「ChatGPT」によるAIチャットボットに置き換えることで、少ない人数でもサポートを回せるようになります。
「ChatGPT」を使うメリットの3つ目のメリットが、新たなビジネスチャンスが生まれるという部分です。既にさまざまな企業が「ChatGPT」を活用したサービスの提供を開始しており、チャットのみならず電話応対もできるサービスや、ITシステムの内製化を検討している企業向けプログラミングコードの自動生成支援サービス、医療や法律文書などの要約サービスなど、実に多種多様なサービスがChatGPTとの組み合わせで生まれています。サービスを提供する側としてのビジネスチャンスはもちろんのこと、それらの新サービスを活用して自社で新たなビジネスを展開していく発想も必要となってくるでしょう。
これまで「ChatGPT」のポジティブな面を示してきましたが、当然のことながらデメリットも存在します。それが仕事が減ったり、無くなるといったデメリットです。とりわけ少なからなず影響を受けているといわれているのが、下記の職種になります。
共通するのは、法則性、規則性のある業務やデータを基にした提案といった業務になります。
●ChatGPTの普及で影響を受ける職種
1.ライター
2.SE・プログラマー
3.事務職
4.コールセンターオペレーター
5.データ入力オペレーター
6.通訳・翻訳
7.管理栄養士
8.パーソナルトレーナー
9.学習アドバイザー(メンター)
10.税理士
いきなり職種自体がなくなることはないものの、これまでならお金をもらえていた業務が「ChatGPT」をはじめとしたAIに奪われる格好になります。具体的には、文字起こし、コード生成、翻訳、要約、データ入力、データをもとにした提案などがその業務です。
こうした職種をメインの事業にしている企業においては、今から業界を取り巻く外部環境の変化を見据えた準備をはじめておく必要があるでしょう。
ちなみに影響を受けにくいとされる職種は下記になります。共通するのは、物理的な対人業務が不可欠で、人の「心」に係わる業務や、人間独自の感性やセンスが必要とされるような、いわゆる「ヒューマンスキル」を必要とする職種の数々です。
●ChatGPTの普及後も影響を受けにくい職種
1.教育職
2.保育職
3.医療職
4.福祉職
5.マーケティング&企画職
6.クリエイティブ&アート職(写真家、画家、作家、映像制作職)
AIが進化していくスピード次第ではこうした領域ですら、AIが台頭してくる可能性があります。実際、「ChatGPT」以外にも、AIによる小説作成サービスがあったり、写真やイラスト生成ツールも存在します。教育、保育、医療、福祉業界でもAIを活用したサービスが存在します。そう考えるともはやAIの影響を受けない職種はないといえるくらいの状況です。
ここまでとても優れた対話型AIだと紹介してきましたが、一部では「ChatGPTはうそをつく」という指摘があがっています。
実際に「栃木県について教えてください」と質問を投げかけたところ、概ね事実が書かれていたものの、「県内には日本三大うどんの一つである「ぎょうざうどん」が有名な館林市や」という明かなうそが混じっていました。
そもそも三大うどんは、「讃岐、稲庭、水沢」ですし、「ぎょうざうどん」は三大うどんではありません。さらに栃木として語られている館林市は、群馬県になります。
まさしく「ChatGPT」がうそをついている事例だといえるでしょう。ただ、うそをつかせる原因は質問者にあるというのが真相です。より正確な回答を引き出そうと思ったら、「プロンプトエンジニアリング」という技術が必要になります。質問時に一文を短くしたり、回答モデルや例題を渡したり、AIのふるまいを設定するという段階を踏むことで、回答精度を高めることができます。
こうしたAIの使い方を熟知し、「ChatGPT」を使いこなせるようになると仕事の効率が10倍近くアップしたという話もあります。文章を書かせたり、簡単なプログラムを生成してもらったり、リサーチしたりすることで、業務上欠かせないインフラになっているそうです。
「100年1度の産業革命」などという向きもある「ChatGPT」は、今後、さまざまな業界、サービスに浸透していく可能性を秘めています。すぐにはビジネスにつながらなくても、このタイミングで積極的に「ChatGPT」に触れ、上手に活用できるようになれば、中小企業経営者にとって、未来の大きな武器になっていくことでしょう。
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