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中小企業の時間外労働の割増賃金率が改正。今行うべき対応とは?
2023.04.12 | 中小企業経営

中小企業の時間外労働の割増賃金率が改正。今行うべき対応とは?

2023年4月1日より労働基準法が改正されました。改正のポイントは「中小企業においても月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が上がる」という点です。大企業では既にこの基準が適用されていましたが、中小企業においても月60時間を超える割増賃金率が25%から50%に引き上げられ、大企業並みの対応を求められるようになりました。今回は、この労働基準法改正に伴い、中小企業が行うべき対応を解説していきます。

2023年4月1日より労働基準法が改正されました。改正のポイントは「中小企業においても月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が上がる」という点です。大企業では既にこの基準が適用されていましたが、中小企業においても月60時間を超える割増賃金率が25%から50%に引き上げられ、大企業並みの対応を求められるようになりました。今回は、この労働基準法改正に伴い、中小企業が行うべき対応を解説していきます。

この4月から労働基準法の改正により、中小企業においても月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が従来の25%から50%に引き上げらました。この大きな変化に伴い中小企業が対応すべきことを改めて解説していきます。

なぜ労働基準法は改正されたのか?

今回の労働基準法の改正は、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」と密接に結び付いています。中小企業で働く人たちの長時間労働を抑制し、その健康を確保し、さらには働きやすい職場への改善、生産性の向上など、様々な法改正とからめて中小企業の「働き方改革」を進めていこうという狙いがあります。今回の「中小企業における月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げ」もまさにその一環です。

なお、この法律における中小企業の定義は明確になっており、資本金の額または出資の総額、常時使用する労働者数で決まっています。

業種①資本金の額または出資の総額②常時使用する労働者数
小売業5,000万円以下50人以上
サービス業5,000万円以下100人以上
卸売業1億円以下100人以上
上記以外のその他業種3億円以下300人以上
※中小企業に該当するかは、①または②を満たすかどうかで企業単位で判断される

2023年4月1日の労働基準法改正のポイントは?

今回の労働基準法改正の具体的なポイントになるのが、中小企業においても月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が「50%」に引き上げられるという部分です。

引用:厚生労働省|2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます

●労働基準法改正に伴う変更点
2023年3月31日まで
月60時間超の残業割増賃金率大企業は50%(2010年4月から適用)中小企業は25%

2023年4月1日から
月60時間超の残業割増賃金率大企業、中小企業ともに50%※中小企業の割増賃金率を引き上げ

●時間外労働の割増賃金の計算式
1時間当たりの賃金×時間外労働時間×割増賃金率

実際、どれくらいの変更なのかをイメージするために上記の計算式に当てはめて、変更前と変更後で比較してみました。

時給2,000円の社員と仮定した場合の1時間当たりの割増賃金を算出すると、60時間以上の残業をしても、25%の割増賃金率だった3月31日までは時給2,500円でした。ところが、4月1日からは50%の割増賃金率となるため、時給ベースで3,000円を払う必要が出てきます。

さらに60時間を超え、深夜残業(22:00~5:00)をさせるような場合には、深夜割増率の25%が加算され、合計75%の割増賃金率で計算されるため、1時間当たりの時給は3,400円になります。

当然払うべきものとはいえ、時間外労働が当たり前になってしまっている会社にとってはかなり大きな負担になってきます。これだけ徹底した政策が取られることになった理由は、前述の通り働き方改革を中小企業においても徹底するいう目的があるからです。この機会に働き方改革にしっかりと向き合う以外に解決策はありません。

労働基準法改正で中小企業がすべきこと

法改正に伴い、中小企業が対応すべきことは下記の4つになります。

既に対応済みの企業も多いかと思いますが、未対応であれば迅速な対応が求められます。

●労働基準法改正に伴う中小企業が対応すべきこと
1.就業規則(賃金規程)の修正
2.適性な労働時間の把握
3.代替休暇の付与
4.労働時間の短縮に向けた取り組み

1.就業規則(賃金規程)の修正
まず手続き的な面ですべきことが、就業規則(賃金規程)に「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を50%に引き上げる」と速やかに変更し、遅滞なく所轄労働基準監督署長宛てに届け出る必要があります。

(就業規則の記載例)
(割増賃金)第○条時間外労働に対する割増賃金は、次の割増賃金率に基づき、次項の計算方法により支給する。(1)1か月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次のとおりとする。この場合の1か月は毎月1日を起算日とする。①時間外労働60時間以下・・・・25%②時間外労働60時間超・・・・・50%(以下、略)

※厚生労働省・中小企業庁作成『中小企業の事業主の皆さまへ 2023年4月1日から 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます』より抜粋

2.適性な労働時間の把握
次に実務的な面で取り組んでいくべきなのが、社員の適性な労働時間の把握になります。割増賃金を正確に支払うには、当然ながら社員の労働時間の把握は必須です。その上で、各社員の労働時間が適正かどうかについても把握していく必要があります。

3.代替休暇の付与
3つ目が、代替休暇の付与になります。当然ですが、「残業代さえ払っていればいくらでも働かせていい」というわけではありません。今回の法改正の大きな目的の1つが、中小企業の働き方改革に伴う長時間労働の抑制、それに伴う社員の健康増進、働きやすい職場作り、生産性向上を目指していることもあり、代替休暇の付与は積極的に検討していくべき対応になります。なお、代替休暇の導入をするには、過半数組合(過半数組合がない場合は事業場の過半数代表者)と労使協定を締結する必要があります。

4.労働時間の短縮に向けた取り組み
4つ目が今回の法改正に伴って最も「取り組むべきこと」になります。業務の根本的な部分から見直して、機械化や自動化を進めることで残業時間を減らしていこうという取り組みが求められます。手間も時間も費用もかかる取り組みになりますが、労働時間を減らさないことには自体の打開はないので心して取り組まなければいけません。そこで活用したいのが次の章で紹介する「働き方改革推進支援助成金」です。

働き方改革推進支援助成金を使って働き方改革を促進

「働き方改革推進支援助成金」は、既に2023年度の交付請受付が始まっていて、交付申請期限は2023年11月30日までとなります。申請書類等の提出先は、申請企業の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。

「働き方改革推進支援助成金」の主な活用事例
・新たな設備・機器の導入…生産性向上
・労務管理用の機器やソフトウェアの導入…労働時間の適性管理
・外部の専門家によるコンサルティング…効率的な業務体制などの構築

生産性向上につながる設備や機器の導入、労働時間を見える化するシステム、ソフトウェアの導入、そして外部コンサルタントに依頼して効率的な事業体制の構築などを行う際に必要な資金の一部の助成が受けられる制度です。

なお、「働き方改革推進支援助成金」には2つのコースが用意されていますが、「労働時間適正管理推進コース」なら最大で580万円、「労働時間短縮・年休促進支援コース」なら最大で730万円の助成が受けられます。成果目標の達成状況に応じて取組の実施に要した経費の一部が支給されます。

他にも「業務改善助成金」は、生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定以上引き上げた場合に、その設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度なので、今回のケースでも申請可能です。

働き方改革を実行することが企業の信用につながる

今回の労働基準法改正は、以前からアナウンスされていたことなので、多くの中小企業で対応は進んでいると思います。中には、積極的な働き方改革を進めて、大きな成果を得ている企業もあるでしょう。

一方で、まだ未対応である、あるいは対応が不十分という企業もあることでしょう。法律が施行された以上は違法状態となり、知らなかったでは通りませんし、労働者から損害賠償を請求を受けたり、刑事上の罰則を受ける可能性も孕み、経営上の大きなリスクとなります。

リスクとして放置するのではなく、働きやすい職場環境づくりや生産性向上を図り、この機会を成長するためのチャンスにしてみてはいかがでしょうか。

なお、労働基準監督署都道府県労働局働き方改革推進支援センターよろず支援拠点など専門家が相談に乗ってくれる公的機関もあるのでぜひご活用ください。

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