ツグナラ
M&Aの概念が変わった
2021.07.19 | 事業承継

M&Aの概念が変わった

新型コロナ禍においてM&Aを含め「事業を誰かに引き継ぎたい」と希望する経営者が増えてきました。弊社にも毎週のように事業を譲渡したい、受け継ぎたいという相談が寄せられています。しかし、お互いの会社にとってM&Aによる事業承継は初めてのケースがほとんどです。さらに地域において、このようなケースに相談に乗ってくれる専門家は少数と言えます。したがって、今後ポストコロナに向けて事業を成長させたいと考えている経営者は、知り合いや同業者の経営者から相談されることを想定し自ら学び知見を集めておくことが必須になります。

新型コロナ禍においてM&Aを含め「事業を誰かに引き継ぎたい」と希望する経営者が増えてきました。弊社にも毎週のように事業を譲渡したい、受け継ぎたいという相談が寄せられています。しかし、お互いの会社にとってM&Aによる事業承継は初めてのケースがほとんどです。さらに地域において、このようなケースに相談に乗ってくれる専門家は少数と言えます。したがって、今後ポストコロナに向けて事業を成長させたいと考えている経営者は、知り合いや同業者の経営者から相談されることを想定し自ら学び知見を集めておくことが必須になります。

かつてリーマンショックの際に、中小企業のM&Aによる事業承継件数は数年間大きく落ち込みました。しかし、新型コロナ禍からポストコロナに移行する過程ではむしろ急増することが想定されます。その理由は2つあります。一つ目が地域の人口構造が減少並びにこの10年で中小企業経営者の平均年齢は著しく高齢化している点です。そのため、新型コロナをきっかけに引退を考える経営者が増えています。約半数の企業に後継経営者がいない状況を踏まえれば、社外から誰か探したいというニーズはどの業界においても激増します。

次に新型コロナにより生産性向上の視点から事業成長にはデジタル化が不可欠という概念が一気に加速しました。これらは比較的年齢が若い経営者や幹部社員がいなければ対応が難しいことから、社内に若い経営人財がいる会社がどの業種においても有利になってきます。そして、政府も中小企業施策において中小企業の生産性向上に資する統合や再編において引き継ぐ側である成長意欲の高い企業を後押しする施策を展開しています。

表:栃木県における企業数及び各人口動向推移予測

(単位:千) 

(出店・財務省財務総合政策研究所、国立社会保障・人口問題研究所資料より著者作成)

※各年度の指標はともに2015年を100%として対比

この表は栃木県内における2015年の企業数を100%としてそれぞれの年にどのように企業数と就業人口、生産年齢人口が推移するの予測を表にしたものです。2020年に56,000あった事業所は2040年には40,000に減少することが予想されます。当然未来における予測データのため確定はしていませんが、人口統計をもとにした試算ですのでそう大きくは違わないでしょう。

地域において企業経営者はこのデータを念頭において経営を行っていく必要があるのです。そして、地域全体の課題として人口や企業数は減少したとしても生産性を向上させながら統合、集約化を図り持続可能な地域を創っていくことが地方創生の大きなテーマになってきます。では今後、どのような観点でのM&Aや事業承継が増えていくのでしょうか。ここではポストコロナに向けて、地域において増加するM&Aや事業承継について4つのポイントについて述べてみます。

異業種や周辺事業の連携、統合

異業種又は、自社にとって川上川下の事業、それらの会社の連携や統合を行うことで付加価値を向上させようとの動きが増えてくるでしょう。日本国内においては首都圏を除いてはどの地域も栃木県と同じように人口は減り続けます。したがって生産性を維持、向上させるには統合や集約化で規模を拡大し効率化を図ることが求められます。今回の寄稿において最初にお話しした経営者の事例は川下の会社が異業種の川上の取引先の会社を引継ぐ事例になります。

シェア型、エコモデルの企業間連携体を構築し新たな価値創出

次に、縮小する市場において同じ地域で同じような製品や部品を製造、提供することは価格競争の一因になりつつあります。今後は生産性設備や取引先などを共有するシェア型のビジネスモデルや企業間連携体を構築せざるを得ない状況になってきます。互いの販路や生産設備または、本部機能を共有し、シェアやエコモデルを構築して生産性を高めていく方法です。例えば同じ業界への製品を製造する企業であれば、それぞれの工場を共有して稼働率を上げる、または販路を共有してお互いの商品を提供しあう等が考えられます。

デジタル化による生産性の向上

規模を縮小しながらも生産性を上げるにはデジタル化をそれぞれの企業で図って行くことが求められます。これまでの企業活動をデジタル化していくことコストが下がるだけではなく、顧客に新しい価値を提供して新規事業を創造することが可能になります。規模や地域を超えた企業活動が可能になり、小さくても全国区になる地域企業が数多く現れることでしょう。事業統合を行う際にも生産性の低い事業同士で統合を行っても人口減少が続く地域においていずれ停滞する会社を生み出すことになってしまします。したがって、M&Aや事業統合を行う際には事業をDX化、デザインし直すことが必須になるのです。

経営資源としての社員や取引先、ノウハウ、商品・製品などの引継ぎ

人口下減少する社会で企業成長を図るには外部の経営資源を取り込みながら成長を志向していくことが求められます。これまでの一般的なM&Aの概念である会社を売る、買うというよりもこれからは人を一括で採用する、取引先や商品を引き継ぐなど経営資源を引継ぐ視点からM&Aが増えていくでしょう。例えば長年地域や業界で親しまれてきた商品や製品などを若い後継者のいる企業が引き継いで自社の販路を活用することでより売上高を上げることが可能になってきます。

2021年はポストコロナに向けた取り組みがどの企業でも加速します。その中でM&Aに関わるケースも増えていくでしょう。大きくM&Aの概念が変わりつつある中、今後地域において持続的に成長していくことを望むのであれば「事業や会社を引き継いでくれませんか?」と相談された際に、どうするのかを社内でも協議しておくことが何よりも重要です。

水沼 啓幸
Writer 水沼 啓幸
水沼 啓幸
Writer 水沼 啓幸 ()
代表取締役 
中小企業診断士  MBA(経営学修士)  JMAA認定M&Aアドバイザー
2000年3月に高崎経済大学経済学部経営学科を卒業し、同年4月株式会社栃木銀行へ入行。主に、融資、法人営業を経験し、事業承継、中小企業金融に精通している。また、大学院では中小企業において今後問題化すると予想される『後継者の育成方法の研究やその支援の在り方』について深く研究する。2010年4月に財務・金融、事業承継支援を専門とするコンサルティング会社 株式会社 サクシードを設立し代表取締役に就任。2014年より日本で一番の経営人財の養成機関を目指して「とちぎ経営人財塾」を開講、次世代経営者の育成をテーマに活動し、年間80社以上の経営計画策定支援業務を行っている。2020年1月より地域の成長意欲の高い企業を地域資源としての中小企業の引き継ぎ手として登録、PRする地域特化型M&Aプラットフォームサービス「ツグナラ」をローンチ、事業承継をテーマに地域課題の解決を図るべく活動を行っている。
現在、作新学院大学 客員教授、人を大切にする経営学会 事務局次長として全国のいい会社を訪問し次世代の企業経営の在り方について研究活動を行っている。
著書に「地域一番コンサルタントになる方法」出版(同文館出版)、「キャリアを活かす!地域一番コンサルタントの成長戦略」(同文館出版)「後継者の仕事」(PHP研究所)「さらば価格競争」(商業界)共著、「日本のいい会社」地域に生きる会社力(ミネルヴァ書房)共著、「いい経営理念が会社を変える」(ラグーナ出版)「ニッポン子育てしやすい会社~人を大切にする会社は社員の子どもの数が多い~(商業界)共著、「実践ポストコロナを生き抜く術!強い会社の人を大切にする経営」(PHP研究所) 、「事業承継 買い手も売り手もうまくいくリアルノウハウ」(ビジネス社)共著、その他帝国ニュース(帝国データバンク)近代セールス(近代セールス社)等連載執筆多数。

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