ツグナラ
果物卸売業を異業種の運送業者が黒字化、食品加工製造へ進出
2024.04.19

果物卸売業を異業種の運送業者が黒字化、食品加工製造へ進出

株式会社共盛輸送 ✕ 滋賀青果株式会社

取引先の支店を段階的に引き継ぎ、グループ会社として黒字化に導いた成功事例をご紹介

株式会社共盛輸送は、30年来の取引先であった滋賀青果の京都支店と果物部門を、段階的に引き継ぎました。共盛輸送の深萱社長は、業績悪化に伴い撤退を検討していた滋賀青果京都支店の社員の継続雇用を約束し、分社設立された京滋青果を約2年半で黒字化に導きました。共盛輸送・京滋青果・滋賀青果の3社は、現在も取引先、グループ会社として良好な関係性を維持しています。承継の詳しい経緯について、共盛輸送代表の深萱様にお話を伺いました。

引継ぎ概要

共盛輸送の深萱社長は2020年の夏頃、滋賀青果の京都支店の責任者から業績悪化による京都支店撤退の話を聞き、共盛輸送の土地の貸し出しによる事業継続を提案しました。深萱社長から提案を受けた滋賀青果は、第三者承継による事業継続への意思を固めました。他社からの引き合いもある中で、滋賀青果側は共盛輸送への事業譲渡を決め、共盛輸送は2021年に分社設立された京滋青果をグループ会社として引き継ぐこととなりました。2023年には滋賀青果の果物部門も承継しています。

受け手(買い手)

株式会社共盛輸送

事業内容
一般貨物・冷蔵・冷凍商品等多岐にわたる商品の輸送業務、コンビニ用サンドイッチ・お弁当などの仕分け業務
所在地
京都府京都市

譲り手(売り手)

滋賀青果株式会社

事業内容
青果卸売、加工販売
所在地
滋賀県大津市

京都支店の撤退の知らせを機に承継を決意

ー共盛輸送様は運送業、滋賀青果様は青果物の卸売と、異業種の事業承継ですが、譲り手である滋賀青果様とは、承継以前はどのようなご関係だったのでしょうか?

滋賀青果は滋賀県で70余年続く老舗の卸売業者で、先代の時代から30年以上にわたって取引を続けていました。特に、滋賀青果の京都支店の方々と、弊社の配送スタッフは、積み込みや配送の仕事でほぼ毎日顔を合わせていました。

ー承継のきっかけとなった出来事は何でしたか?

京都支店の撤退の話は以前から知ってはいましたが、2020年8月頃に、撤退に向けて本格的に動き出したという話を京都支店の責任者から聞きました。30年以上お世話になった取引先がなくなってしまうことは、弊社にとって痛手であり、責任者の「京都のこの店で骨をうずめたかったんやけども」という残念そうな言葉から、「何とかしてあげたい」と思うようになりました。

ー取引先である滋賀青果の撤退にあたって、どのような行動をされましたか?

撤退の話を聞いた時点では、事業承継という選択肢はまだ頭にはなく、京都支店の責任者に「共盛輸送側が土地を借りて提供することもできるので、事業を継続しては」と提案しました。提案は京都支店の責任者から社長に伝わり「そこまで考えてくれるんやったら」と、第三者承継に踏み切ることになりました。

ー滋賀青果様から、事業承継にあたっての条件などはありましたか?

承継での最も大きな条件は「従業員を守ってほしい」とのことでした。他社からの引き合いもあったようですが、その中で弊社が「絶対に守ります」と約束したことで認めていただけたようで、承継先として弊社が選ばれました。

社内の対話と新規開拓に努め黒字化へ

ー引き継ぎ当初の状態と、どのように変えていったかを教えてください

経営状態や数字を見る前に引き継ぎを決めましたが、承継前のデューデリジェンスでは、このままでは事業を継続していけない状態であることがわかりました。統合後には、2社合同の話し合いの場を設け、社員には会社の財務状況を伝えつつ、提案があれば随時上げてもらうようお願いしました。全体、少人数、1on1の会議を重ねて目標を定め、目標を達成のための意見交換を徹底しました。私自身も既存のお客様先だけではなく新規開拓に努め、ご縁の生まれたところには担当者を連れて行って顔を繋ぐようにしていきました。

ー承継後の社内の雰囲気はいかがですか?

社内体制が大幅に変わったので、18人のうち4人の離職があったことは残念ではありましたが、残ってくれた社員の家族の生活を守れたことが一番だと思っています。業績が回復するまでの間は、社内の催し事もなかなか開催できない状況でしたが、黒字化することができたので、新年会を開催することができました。
滋賀青果の社長とも良好な関係です。本職の卸として相談に乗っていただきアドバイスをいただいています。私もいい情報があれば共有するようにしています。

食品加工製造部門の新設によりニーズと働き方の両立を目指す

ー今後の課題はありますか?

今期2024年度は売上9億円を目標としていますが、物価高も進んでいるため、舵取りによって結果が変わってくると思います。100年企業を目指す上でも、お客様にも安心価格で提供できるようにしながら、利益を出せるようなシステムを構築していきたいと思っています。

ー実際の施策としてお考えのことはありますか?

2023年には、滋賀青果から果物部門も引き継いだので、今後はお客様からのご要望の多い食品加工製造にも手を広げていきたい考えです。食品加工製造部門を新設し、時間や部門ごとのシフトを組み合わせられるようになれば、社員が働き方を選びやすくなるだろうと考えています。朝は卸や運送の仕事、昼は加工製造と、稼働時間の違いをうまく利用できたらと思っています。
また、経営が安定するまでは手をつけられていなかったHPの整備を進めることで、マーケティング分野も充実させていきたいところです。

ー一緒に働く社員に向けてメッセージをお願いします。

社員には、仕事を通じて人間的に成長してほしいと思っています。一日の仕事の時間は長いので「仕事に行かなければ」というマイナスな気持ちよりも、「今日頑張れば経験値が上がる」と前向きな気持ちで取り組んだ方が楽しく仕事ができるはずです。自分自身が楽しく幸せであれば、お客様にも満足いただくために努力し、お客様の喜びをまた自分の意欲へと繋げることができます。壁があったとしても、乗り越えれば喜びに変わるという気持ちで一緒に仕事をしていっていきたいと思っています。

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