承継した事業の売上が想定以上に伸び、新たな設備投資が必要となった場合、どのようなプロセスで検討されていますか? 本コラムでは意思決定にあたって、中小企業の設備投資を国が後押しする制度「ものづくり補助金」を活用するメリットをお伝えします。
承継した事業の売上が想定以上に伸び、新たな設備投資が必要となった場合、どのようなプロセスで検討されていますか? 本コラムでは意思決定にあたって、中小企業の設備投資を国が後押しする制度「ものづくり補助金」を活用するメリットをお伝えします。
中小企業間のM&A件数が増加し、成功事例も多く紹介されるようになりました。弊社の仲介案件においても、事業統合後の売上が想定以上に伸び、新たな設備投資が必要となる事例もあります。喜ばしい成果である一方、承継に多くの資金を投入した直後であることから、計画外の設備投資は慎重に行う時期でもあります。特に異業種を承継した場合は、知見が不足している場合もあり、正しい判断材料の収集が求められます。
そこでお勧めするのが「ものづくり補助金」の活用です。他の補助金と同様に、事業計画書を作成して国に申請する必要がありますが、採択されれば、資金面の負担が軽減されることはもちろん、申請作業の過程で得られる様々な知見が、そのまま設備投資の判断材料となり、事業の持続可能性を予測できるメリットがあるからです。
以下、ものづくり補助金の主な審査項目である「技術面」「事業化面」「政策面」の内容と、申請過程で得られるメリットをお伝えします。
ものづくり補助金の最大の審査ポイントとも言われているのが、「技術・サービスの革新性」です。単なる老朽設備の入れ替えや設備増設による生産量の増大は革新性に該当しません。既存事業における設備や技術の問題を深堀りし、その課題の解決に資する設備投資であることを明確にすることが求められます。そこに自社ならではのアイデアや工夫を加えることで他社との差別化を図り、実現の根拠を計画書に記載することで採択の可能性が高まります。この検証内容は、現状の弱みの克服と課題解決が可能か?革新的な技術・サービスとなるか?優位性を生み出す投資となるか?を判断する材料となります。
事業化面の審査ポイントは、事業を持続的に成長させていく戦略やストーリーです。設備投資の目的は生産性の向上による利益の増大ですが、そこに至るプロセスを審査員に説明できなければなりません。「どの市場に」「いくらで」「どのように」販売を拡大していくのか?外部環境であるニーズと内部環境である自社の生産能力を分析のうえ、その実現性や将来性を説明する必要があります。この分析結果はそのまま、設備投資後の中期事業計画書となり、投資回収の見通しを含めた数値的根拠となります。
「政策に合致しているか」の検証も必要となります。今回行う設備投資により得られる効果が、地域経済の発展や循環型社会の実現などの国策に沿っているか、という観点での説明も求められているためです。これらの観点で設備を選定することによって、社会課題の解決に寄与する事業であるかをチェックできるのと同時に、例えば省エネ効果の高い設備を候補に加えることで、ランニングコストを比較できるなど「生産性の向上」を、より多面的に検証する機会となります。
最後に、上記3つのメリットを確実に享受し、事業の成長をより強固にする方法をお伝えします。それは、売り手企業の社員さんを事業化チームのメンバーに加えることです。統合直後は信頼関係を築きにくいことから、買い手企業のみで進めてしまいがちです。しかし、売り手企業のメンバーがこれまで培ってきた経験や現場情報は、買い手企業にとって最大の強みであり、それを活用することが異業種M&Aの目的であったはずです。買い手・売り手のメンバーで補助金申請チームを編成し、申請にチャレンジされてみてはいかがでしょうか。
ツグナラコンサルタントは、経営統合プランをご提案する際、シナジーを早期に実現する手段の一つとして、現場社員の皆様の巻き込み方、特に売り手企業の社員皆様の心のケアを重視してご支援しています。お気軽にご相談ください。
最後に参考書籍をご紹介いたします。
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