新型コロナの影響が長引く中、東京には3度目の緊急事態宣言が発令されました。企業活動は再び制限され出口が見えない状況が続いています。そのような中、中小企業の事業再編やビジネスモデルの構築を検討する企業が増加し、中小M&Aは活発化しています。弊社においても今年に入り売り手、買い手双方からの問い合わせが殺到しています。
新型コロナの影響が長引く中、東京には3度目の緊急事態宣言が発令されました。企業活動は再び制限され出口が見えない状況が続いています。そのような中、中小企業の事業再編やビジネスモデルの構築を検討する企業が増加し、中小M&Aは活発化しています。弊社においても今年に入り売り手、買い手双方からの問い合わせが殺到しています。
以下の図は「中小企業M&A仲介大手3社」及び各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターの取り扱い件数推移です。新型コロナ禍にあっても過去最高の件数で推移していることが理解できます。
出典:前述 中小企業庁:中小M&A推進計画より
売り手企業は経営者が高齢であり、出口の見えないコロナ禍においてリタイアを考えて引き継ぎ手を探しています。買い手はポストコロナに向けて新たな事業再編に向けて既存事業と相乗効果のある事業を探しています。皮肉にも新型コロナが中小企業のM&Aへの取り組みを加速させた様相を呈しています。
そのような中、2021年4月28日に中小企業庁から出された「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ~中小M&A推進計画~」に今後の中小企業施策の大きな展望がまとめられています。事業承継領域、M&Aの専門家の私から見てもかなりこれまでの概念を大きく刷新する内容、展開になっています。
この中では、これまでもここで述べてきたようにM&Aが事業承継課題を抱える中小企業のみならずすべての企業の成長に寄与する取り組みと明確に規定されました。
出典:前述 中小企業庁:中小M&A推進計画より
これまではどちらかというと成熟期、衰退期の企業が事業承継の際に活用する手法というイメージが一般的でした。しかし、ここでは成長を志向する買い手企業がもっとM&Aを活用して経営資源の強化、成長を図っていくことを促しています。
出典:前述 中小企業庁:中小M&A推進計画より
さらにこれまでの中小企業支援施策を買い手、売り手双方が利用できるようにパッケージ化を図っています。一見、バラバラに展開しているように見える各支援施策が事業承継課題の解決というテーマで一括して活用できるようになってきます。
これは「これらの制度を活用して地域企業は成長を図ってください」という国の意思表示にも受け取れます。したがって、M&Aで成長できる会社とそうでない会社との差は今後一層広がってくるようになってきます。
ではM&Aに対する取り組みとして何から始めればいいのでしょうか。ここでは多くの企業が抱えるM&Aに対して取り組む際の3つ課題と対応策について述べてみます。
よく、新聞記事のM&Aのニュースを見て同業者の方から「知っていたら自社で引き継いだのに」「どうすれば売り手さんと出会えますか」という相談をいただきます。M&A案件に出会うためには自分から情報発信や案件に触れる行動を行っていくことが重要です。M&Aを行った会社は業界で情報も共有されるため2社、3社と立て続けに行っていくことも珍しくありません。専門性が高く情報の非対称性が大きいことがM&A市場の特徴です。そのため、自分から情報を取りにいく姿勢が必要です。M&Aアドバイザリー会社や金融機関、M&Aプラットフォームと呼ばれる機関と定期的な情報交換を行うことが重要になります。弊社においても地域内でM&Aマッチングを図る「ツグナラ」というメディアを運営しております。ぜひご活用ください。
次に挙げられる課題として案件があっても社内に財務知識や専門家とのやり取りを進める人材がいないというケースが多いです。経理、財務部門があっても既存の事業で手一杯であるために案件の進捗に合わせた社内の合意形成を図る、スキーム資料を作成するなどできないために断念することも多々あります。M&Aは都度発生する事象に迅速に意思決定を行い相手と交渉を行っていくことになります。そのため、M&Aに従事する社員のタスクは増えることになります。
もし、社内にそこまでの経理、財務人材がいないというケースでは次のような対応が良いでしょう。顧問の会計事務所や知り合いの財務コンサルタントとの関係性を日ごろから作っておいていざという場合には疑似社員としてアドバイスや先方との交渉に立ち会ってもらうなどできるようにしておくとよいでしょう。そのためにも自社の経営計画やM&Aに対する指針やポリシーを事前に作成しておくことも重要になります。
最後に、M&Aを行ったあとに経営していく経営人財がいないというケースも多いです。事業譲渡、株式譲渡どちらにおいてもかなりのリソースを新しい事業や会社に投入することになります。そのためには既存事業をある程度余力のある人員でマネジメントできる体制を整えておくことが重要です。
そのため、ある程度の年齢、30代前半からリーダー研修やマネジメント研修を社内、社外問わずに受講させて早い段階で経営人財としての自覚を促すことが重要です。私の長年の研究からは経営者としての能力は後天的に身につくことが証明できています。そのため、若いうちから経営人財として経営、組織づくり、財務、マーケティング、生産管理など経営に必要な知識を習得、社内で実践させておくことが大切です。
これらを踏まえると事業承継課題を前向きにとらえる会社にとっては成長がしやすくなる時代になると言えます。ただ、これまで事業を成長させることとは要素がだいぶ異なっていきますので経営者自身がまずM&Aについて興味を持ち、学ぶことが重要になってきます。読者の皆様はぜひ一歩前に踏み出してM&Aに会社として取り組んでいただければ幸いです。
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