沖縄県で地域コンサルタントとして活動するカナイ経営経営研究所代表の比嘉智明氏のコンサルタントとしての日常を切り取る連載第3回。第3回はツグナラ沖縄で実現したいと考えていること、成し遂げたいことを語ります。
沖縄県で地域コンサルタントとして活動するカナイ経営経営研究所代表の比嘉智明氏のコンサルタントとしての日常を切り取る連載第3回。第3回はツグナラ沖縄で実現したいと考えていること、成し遂げたいことを語ります。
ツグナラは既に栃木県で成果を出しているビジネスモデルでもあります。成功事例だけでなく失敗体験も赤裸々に記事にしていることが素晴らしいと感じています。老舗企業と言われる企業の創業経緯や複雑な親族内承継の話であったり、当事者しか分からないことを引き出しツグナラ企業と寄り添う専門家やコンサルタントを、この沖縄県でもモデル化していきたいと考えています。
事業承継や引継ぎは、企業の永続的な継続、企業の成長がなければ実施できません。地域課題に取り組みながら、ツグナラ沖縄で栃木モデルのような解決を見出していきたいと考えています。
世界を見回しても日本は、超高齢化社会となっておりまだまだ解決モデルを模索している最中かと思います。このツグナラは経営資源の引継ぎや地域未来を担う企業に焦点をあてることで後継者不足に悩む企業や、これから地域で事業を始めようとする企業、県内・県外を問わず魅力ある企業を発信することで一緒に働いてみたいといった読み手の心情に合わせた有益な情報をwebメディアとして発信することで、地域活性化の糸口になるのではと思っています。
高齢化問題に関する後継者不足や労働人口の減少など国策への対応は引き続き注力していきますが、私たち沖縄県特有の地域課題にも目を向けるべきかと思います。その最たるものとして、沖縄県の所得水準の低さがあると考えています。
沖縄県の産業構造は、第3次産業のウエイトが高く(約84%)、東京都(約86%)に次ぐ全国第2位であることが特徴です(出典:日本銀行那覇支店(2018年)統計)。第3次産業は、労働集約的な性質があり、製造業に比べ生産性や付加価値が低くなりがちな傾向があります。かたや人口推移をみると2020年国勢調査分の速報値で、県人口は146万8410人で前回の15年調査に比べ3万4844人(2.4%)増加しています。人口増加率は前回調査の2.9%を0.5ポイント下回ってはおりますが、前回調査時は人口増加率が全国首位、今回は東京都(4.1%)に次いで全国2位となっています。この傾向は2025年まで続くだろうと推測されています。
沖縄は3次産業である観光産業が最も大きな産業となっており、その他の産業を見渡しても、多くの産業領域においてピラミッド型の産業構造における下位に位置する規模の会社が多く、それが所得の状況と企業の改廃業率を高くしている要因と推測することが出来ます。所以、沖縄県の「1人当たり県民所得(付加価値)」が相対的に低くなるのは、回避できないこととなっています。
沖縄県では長年の施策としてIT産業を二番目の柱にしようと、数十年来にわたって政策投資を進めてきました。他県では地域経済の活性化に産業基盤投資をおこない工場誘致をし、街の活性化や雇用創出を狙うという政策を実施したりしますが、沖縄県では同様の施策をIT産業において実施しました。結果として、400社を超えるIT関連企業が立地し、雇用が創出され、IT産業は観光産業に次ぐ2番目の産業にまで成長しました。しかしながら、仕事の多くが下請けや孫請けという状況がIT産業においても構造的に浮かび上がってきています。
その様な多くの産業における下請け・孫請けという産業構造が、沖縄県の大きな問題である格差社会を生み出し、それが事業承継が進まない大きな原因の一つになっていると捉えています。
具体的には、県内の開業率の高さと廃業率の高さから推測することができます。
廃業率は全国平均と比べても0.5pt高く、47都道府県で5番以内に入ってしまう高い水準にあります。一方で、開業率も高くなっており一見バランスが取れているように見えますがそういう訳ではありません。
これは私が沖縄県事業引継ぎ支援センターに在籍し今日に至るまでたくさんの事業会社と接してきた中で感じている肌感覚ですが、県内では、低賃金で会社員として働くよりも、多少仕事を覚えた段階で独立し、少しでも多くの収入を得るという事が開業の目的になっていると感じられます。つまり、自らの生活の維持が開業の目的と捉えることができます。
そうすると、会社を公器として捉え、社会のために事業を大きくしたり、後継者を育て、事業を存続、継承するという意識が希薄になってしまっていると推測できます。
そうすると、県における事業承継対策の根本的な課題は、後継者問題への取り組みよりも、創業者や経営者の意識改革、事業の存続や事業の拡大といった現経営体制への施策支援が望ましいと考えることもできます。
つまり、創業者や経営者自体の「人を育てる」仕組みが構造的な社会課題の解決に繋がると思っています。
そういう意味でも、ツグナラで大切にしている創業経緯や事業への想い、従業員への想いといった掲載内容は、今の沖縄の地域企業にとても必要なことです。独立開業する前に、地域未来を担うツグナラ企業の存続させる、承継する理由などを読んでもらうだけでも意識の変革のきっかけになるかもしれません。この地域課題は、引き続き事象を追求していかなければなりません。
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